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『ご恩、お売りします。恩屋のつれづれ商売日誌』あらすじ・ネタバレ感想

朝倉景太郎著『ご恩、お売りします。恩屋のつれづれ商売日誌』(富士見L文庫)あらすじ・ネタバレ感想。


『ご恩、お売りします。恩屋のつれづれ商売日誌』
著者:朝倉景太郎
富士見L文庫
しだれ桜 tataraworks


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『ご恩、お売りします。恩屋のつれづれ商売日誌』のあらすじ

<恩屋>…それは、一生忘れられない恩を売ってくれる商売。
誰もその素性を知らず、見た者もおらず、都市伝説として囁かれているが、恩屋は確かに存在するのだ。
恩屋の伝説を信じて、雑居ビルのとある部屋のドアを4回ノックすると、整った顔立ちの着流し姿の青年が現れる。


恩屋幸太郎は「一生忘れない」ことを条件に無償で恩を売っている。
ただし、忘れた場合は、依頼人にとって最も価値があるもの一つを請求する。
「恩を忘れなければいい」皆、そう思うのだが、恩屋と関わった人は例外なく出会ってからきっちり1週間で彼のことを忘れる。


恩屋の願いはただ一つ。
誰でもいいから自分を覚えていて欲しい。
誰かの記憶に残る為に、恩屋は恩を売り続ける。
桜の画像 tataraworks

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『ご恩、お売りします。恩屋のつれづれ商売日誌』ネタバレ感想 

笑っているのに泣いているような、そんな表情のカバーイラストが、この小説『ご恩、お売りします。 恩屋のつれづれ商売日誌 (富士見L文庫)』の内容と恩屋幸太郎をよく表している。
誰の記憶にも残らず、たった1人で生きていく孤独。
人に忘れられてしまう失望。


恩屋幸太郎は、10代半ばでなぜか他人の記憶に1週間しかいられない不思議な体質になってしまった。
一番最初に彼を忘れたのは母親だった。
幸太郎はそれからずっと独りぼっちで生きているのだ。


自分という者を誰にも認めてもらえないのもガッカリするが、それより忘れられてしまう寂しさの方が勝ると思う。
例えば、誰かと後日同じ話をして相手が前回のことを全く覚えていなかった時、「私の話を全然聞いていなかったんだな」と残念に思う。
自分に1㎜も興味を持っていないんだな、と悲しい気持ちになる。


だから私は、他人と話す時は絶対にスマホをいじったりしないようにしている。
ちゃんと相手の話を聞くことに集中する。
自分が相手に淋しい思いをさせてはいけないと思うからだ。
だって、自分ばかりが覚えているのって、結構空しいんだよ。


幸太郎は、誰かの心に残りたくて<恩屋>の商売を始めた。
私だったら、1週間しか記憶に残らないのなら絶対悪いことをするけどね。
銀行強盗とか銀行強盗とか銀行強盗とか。
犯人も事件そのものも忘れちゃうんだもん、絶対捕まらないもんね( ̄▽+ ̄)


でも、幸太郎は「一生忘れない恩」ならば、誰かは自分のことを覚えていてくれるのではないかと思い、厄介事を解決したり、時にはヤクザを壊滅させるなんて事もする。
根が良い人なんだろうね。
それだけに、そこまでやっても結局、忘れられてしまう瞬間が訪れるのが切ない。
それが、笑っているのに泣いている表情につながるのだ。


お話の後半で依頼人となった成瀬翔子は、恩屋に恋をする。
恩屋の事務所には、今まで代償として得た品物でいっぱいになった部屋があり、それは物の数だけ恩屋が忘れられてしまった証でもあった。
翔子はそんな恩屋のことを絶対に忘れたくないと思う。
そして幸太郎も、連帯保証人の父親に借金を押しつけて逃げた相手が、我が子のアメリカでの手術の為だと知ると返済を諦める翔子を見て、彼女には覚えていて欲しいと思うのだが……。


できれば、翔子の優しさや愛情が勝って幸太郎のことを覚えている唯一の人間になればいいなと思った。
けれど、そんなご都合主義でストーリーが展開するはずもない。
記憶を無くす瞬間に泣いてくれたのは翔子だけだった。
誰かに覚えていてもらうことを諦めて恩屋の商売を辞めようと思っていた幸太郎にとって、翔子の涙は希望になった。
幸太郎は、自分を覚えていてくれる誰かと出会う為、恩屋を続けることにする。


このお話『ご恩、お売りします。 恩屋のつれづれ商売日誌 (富士見L文庫)』を気に入った私は、てっきり続編があると思ったのだが…ない…。
続編どころか、朝倉景太郎の名前で出版されているのはこの1作しかないようだ。
出版されたのは2014年。
デビュー作1作のみの出版となる人は結構な割合でいる。
誰もがどんどん出版できるわけじゃない。
分かっちゃいるが本当にこのお話が気に入ったので、なんで続きがないんだろうとかなり残念に思う。


川添枯美さんの『貸し本喫茶イストワール 書けない作家と臆病な司書』という小説の中で、大賞受賞してデビューする人とそうでない人は待遇に雲泥の差があると書かれていた。
それで朝倉さんのプロフィールを見たら、【第1回ラノベ文芸賞審査員特別賞受賞】とあった。
大賞ではない。
これが、次の作品が出ないことに関係あるのだろうか?
うーん、面白いのになぁ(ーー;)



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ご訪問ありがとうございました(人´∀`*)

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