Yさんは知的障害を持つ青年。
スラっと細身で背が高く、足も長いので、イライラしたことがあると足が出て、ごみ箱や机を蹴飛ばしたり、コップやいすを投げ飛ばしてします。
言葉は話せないのですが、「あ~」という発声はできます。
背が高いのですが、飛ぶようににぴょんぴょん動き、足が長いこともあって、とても素早く行動します。
Yさんは、他の利用者さんが騒ぎ出すと、とても気持ちが落ち着かなくなり問題行動を起こしてしまいます。
ある日、2階の作業室で活動中、女性利用者のRちゃんが大きな声を出していた後、Yさんはイライラしている様子で、机をけり破損してしまいました。
その場は治まったのですが、午後の活動(ねじ作業)中1階に下りてきて、1階のマジックをばらばらにし、シールをはがすなど気持ちの切り替えが難しそうだったために、3階の廊下に誘導し、心のケアのお話が始まりました。
心のケアのお話の時間は、Yさんに横になってもらい、Yさんが気になりそうなこと、心が落ち着かなくなる原因と思う話を語りかけて行きます。その話の中で、Yさんの心を動かした言葉や話の時、体に緊張が走ったり、手や足を動かせしたり、声を出したりというようにして、体を使って、気持ちの動きを表現されます。
「いらいらしていたね、何か困ったことあった? 最近本当に頑張ってくれているね。お母さん、お父さん、Rちゃんがなおさないのを注意した」などの語りかけには、表情がよく、特に体の緊張は見られませんでした。
「止められた、だめ」
「机が壊れた」
「こんなことしたいんじゃないんだ」
「本当はもっとお兄さんになりたいんだ」
などの語りかけには、表情は笑っていたり、「あ~あ~」などの声が出ているが、体の緊張がみられ、反応を示したので、反応をしたところでしばらく体を使ったお話を進めていきました。辛い気持ちを慰め、楽しそうな表情の時は一緒に喜ぶなど、気持ちの交流を進めて行きます。
すると、力が抜けてきて、とても柔らかい表情になっているので筆談援助をしてみました。
筆談援助というのは、座って一緒に鉛筆をもつYさんの手を握って、Yさんに寄り添いながら2人で一緒に紙に文字を書くことで、自己表現を支援する方法です。
その中で、
「Sさん(職員)が大好き、Sさんを困らせている人がいたら、助けてあげたい」
という内容の話を書いてくれました。
どうもYさんは、Sさん(職員)が困っている時に助けてあげたいと望んでいたのに、その結果机を蹴ってしまったり、物を投げたりしてしまっていたようです。
本当は「助けたい」と思っている。
ですが実際は思ったように体が動かず、思いと違う行動をとってしまう…
それはさぞ困るだろうな、と感じました。
そこで、
「体が勝手に動いてしまうときは、しっかり止めていくね」と約束してお話を終わりました。
お話を終わった後のYさんは、満面の笑みを浮かべて、「あ~」っと嬉しそうな声を出していました。