つらつら日暮らし

終戦の日に思う「不殺生」

終戦76年、つなぐ平和の祈り きょう全国戦没者追悼式(共同通信)

今日8月15日は、日本にとっての第二次世界大戦・太平洋戦争等の「終戦の日」である。ただし、この段階ではあくまでも、自発的に戦闘状態を放棄したということであって、休戦や降伏のために必要な手続きが済んだわけではない。つまり、昭和20年(1945)8月15日の正午から、当時の昭和天皇の玉音を収録した音声がラジオ放送され、ポツダム宣言の受諾による日本の降伏が国民に示された日である。

ただし、太平洋戦争開戦の昭和16年12月8日から考えても、4年近く戦争を行い、日本の国土や社会はかなりの影響を受けた。日本人だけで約310万人(内、民間人が80万人とも)の死者が出たのである。

このような悲惨なことは、二度と起こしてはならないし、一人の仏教徒としては、やはり今日という日に「不殺生」を考えざるを得ない。

  恩禅人に示す〈受戒に因む〉
 不殺生、殺生すれば則ち慈悲種を断ず。
 不偸盗、偸盗すれば則ち喜捨種を断ず。
 不婬欲、婬欲すれば則ち解脱種を断ず。
 不妄語、妄語すれば則ち真実種を断ず。
 不飲酒、飲酒すれば則ち智慧種を断ず。
 不嗔闘、嗔闘すれば則ち忍辱種を断ず。
 不退菩提心、菩提を退失すれば則ち仏種を断滅す。
 如上の七戒、或いは欠漏破犯すれば、此の七種清浄出世間種子を断ず。
 或いは保護円満なれば、則ち三界を超越し、優曇花現じ、仏の寿命を続ぐ。
    『天目中峯和尚普応国師法語』、原漢文


まず、この法語を著したのは、中国臨済宗の中峰明本禅師(1263~1323)である。当方としては、これが「受戒に因む」と示されていることに、大変な興味関心を懐いている。何故ならば、おそらくは「恩禅人」とは在家信者であったと思う。その立場の人に対して、「七戒」という、従来には見られることのない、戒本を授けている。

ただし、そうはいっても、最初の五戒はいわゆる「在家五戒」と共通している。しかし、後ろの2戒については一般的ではない。当方では、他の事例を確認していない。

それから、この戒に関しては、「種」について論じられている。これは、持戒の功徳の素である。この「種」が、修行によって成長することで、ここでいわれている、慈悲・喜捨などが身に付くのである。それで、ここでいわれているのは、六種類の「種」と、全てを統合する「仏種」である。ただし、この「六種類」は、例えば「六波羅蜜」と対応するわけではない。

よって、これは中峰明本禅師による、在家信者への説法・説戒として頂戴しておきたい。

その上で、不殺生である。不殺生を行うと、慈悲種を断ってしまい、結果として菩薩としての生き方が出来なくなることを意味している。慈悲については、抜苦与楽などとも理解される。いわば、他者の苦悩に共感してその解消に努め、また、その人を思い楽を与えることこそが、慈悲なのである。

不殺生と慈悲とは、お互いを高め合うように機能する。今日のような日には、不殺生への誓いを同時に慈悲心へと繋げていき、慈悲心の發露が同時に不殺生への誓いになるようにしていくべきなのだろう。

改めて、先の戦争で亡くなられた全ての人々に対して、合掌し、哀悼の意を表するものである。

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