つらつら日暮らし

今日は曹洞宗の両祖(道元禅師・瑩山禅師)忌(令和6年度版)

両祖忌とは、曹洞宗における両祖が亡くなられた日となる。

・高祖永平道元大和尚 建長5年(1253)8月28日遷化
・太祖瑩山紹瑾大和尚 正中2年(1325)8月15日遷化


以上の日付は、当時の暦にしたがったものであり、これを明治期に現在の太陽暦に換算したところ、同じ9月29日だったというので、今日を両祖忌として御供養を奉る日となった。なお、拙ブログでは8月15日は終戦の日、8月28日は道元禅師忌、よって本日の9月29日に瑩山禅師忌の記事を書いている。

そこで、瑩山禅師が御自身の死後、残された者達へどのようなに後事を託されたのかを見ておきたい。いわゆる教団組織者としての側面が見られる。

能州酒井保洞谷山(=永光寺のこと)は酒匂八郎頼近の嫡女、平氏の女、法名祖忍、清浄寄進の浄処なり。ゆえに、紹瑾、一生偃息の安楽地となし、来際、瑩山遺身安置の塔頭所となす。ここをもって、自身の嗣書・先師の嗣書・師翁の血経・曽祖の霊骨・高祖の語録を当山の奥頭に安置し、この峰を名づけて五老峰と称す。しかれば、当山の住持は五老の塔主なり。
    『洞谷記』


これは、瑩山禅師が自らの宗教的中心地を、能登の洞谷山永光寺に定めたことを示す一文になる。実際問題、大乗寺で19年接化された瑩山禅師は正和2年(1313)8月に、当地に庵を結んでから、遷化されるまでの10年以上を、同寺の興隆に努められた。

そして、瑩山禅師は自らが遷化されたならば、この地に塔を建てて祀って欲しいことを願い、更には五老(如浄禅師・道元禅師・懐弉禅師・義介禅師・瑩山禅師)に関わる遺品を収める場所を作って「五老峰」と名づけた。五老峰とは、元々中国の名山であり、詩人の李白がそばに住んでいたことでも知られ、中国の禅僧による問答などにも登場する山である。瑩山禅師はこの名前に五人の老僧をかけて、名付けている。

瑩山門徒中、嗣法の次第を守って住持興行すべし。そのゆえは、山僧の遺跡・諸山のうち崇重すべき遺跡なり。嗣法の人、住持興行すべし。たとえ嗣法の人、断絶すといえども、門徒小師のうち、評定和平して、すべからく住持興行すべきものなり。なんとなれば、他門は必ずしも五老を崇敬すべからざるがゆえなり。これによって、尽未来際、瑩山嗣法の小師・剃頭の小師・参学の門人・受具受戒・出家在家・諸門弟等、一味同心にして、当山をもって一大事となし、ひとえに五老峰を崇敬し奉り、もっぱら門風を興行すべし。これすなわち、瑩山、尽未来際の本望なり。
    同上


ここには、いわゆる五老峰とそれを護持する住持自体が曹洞宗におけるカリスマ性を保障するものだったことが理解出来る。だからこそ、そのカリスマ的地位を狙って混乱が起きることを避けたかったと思われるが、そのカリスマ的地位がなければ、後半部分に見える「他門は・・・」という箇所からは、瑩山禅師とその門下が、社会に埋もれてしまうかもしれないとも考えられていたのだろう。この点からは、どのようにして自らの門風を護持していくべきかというシステムを構築しようとする教団組織者としての瑩山禅師の姿が見えてくる。

仏のたまわく、篤信の檀越、これを得る時は仏法断絶せず、云々。また、のたまわく、檀那を敬うこと仏のごとくすべし。戒定慧解、みな檀那の力によって成就す、云々。しかる間、瑩山、今生の仏法修行はこの檀越の信心によって成就す。ゆえに、尽未来際、この本願主の子々孫々をもって、当山の大檀越・大恩所となすべし。このゆえに、師檀和合して親しく水魚の眤しみとなし、来際一如にして骨肉の思いを到すべし。用心、かくのごとくなれば、実にこれ当山の師檀たるべし。たとえ、難値難遇のことであるとも、必ず和合和睦の思いを生ずべし。
    同上


これは、永光寺を守るため、檀家さんを大切にしなければならないというお示しになる。瑩山禅師は自らの修行が成就したのは「檀越の信心によって」であると示されている。したがって、その本願主(主たる檀家)の子々孫々こそが、この永光寺を守ってくれる、最大の功労者であり、住持たる者も、そのことを忘れてはならないとされた。

以上、両祖忌にあたって、檀信徒の皆さまと一体になって曹洞宗の門流と、寺院を守るべく決意を新たにしながら、今日は坐禅をもって両祖さまを御供養申し上げたい。南無仏陀耶、南無祖師菩薩、合掌。

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