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まだ、朝方でカラッとした天気というわけではなかったので、ちょっと写真も今一つではありますが、その満開の様子はご理解いただけるかと思います。お盆休みの最後に、こういう素晴らしい風景を味わう事が出来ます。しかも、1人数百円で、この蓮の中を船で進むことも出来ます。まさに、お浄土へ向かう船の気分を味わうことが出来るでしょう。拙僧は、時間が無いので乗りませんでしたが・・・
それにしましても、この光景を見ると、まさに浄土へのイメージが豊富にわき出してきそうです。だからなのでしょう。蓮華の様子をもって、浄土の様子を示す例がございます。
その時世尊、眉間の光を放ちたまふ。その光金色なり。あまねく十方無量の世界を照らし、還りて仏の頂に住まりて化して金の台となる。〔その形は〕須弥山のごとし。十方諸仏の浄妙の国土、みななかにおいて現ず。あるいは国土あり、七宝合成せり。また国土あり、もつぱらこれ蓮華なり。
『観無量寿経』「序分」
『観無量寿経』は、息子である阿闍世王のために幽閉されていた韋提希夫人のために世尊が説いた教えが元になっています。そして、この「序分」に見える一文は、世尊が韋提希夫人のために、浄土の様子を神通力でもって見せた様子を描写したものです。世尊の眉間の白毫から放たれた光によって、あらゆる世界が照らされ、その光が世尊の頭に戻ってきて、その中に浄土の様子が見えています。そして、蓮華の国土が見えているのです。あの写真を元にイメージすると、なるほど海の上に葉っぱと華とがあって、それが世界に見えてきます。このイメージは大事でしょう。さらに、その華もただの華ではありません。
一々の樹下にまた三つの蓮華あり。もろもろの蓮華の上におのおの一仏二菩薩の像ましまして、かの国に遍満す。
同上
これもまた、蓮華の様子を伝えるものですが、各々の蓮華の上には、仏・菩薩が鎮座しておられるのです。仏像も、台を見てみると、そこには蓮華が使われていることが多いわけですけれども、蓮華は平たく咲きますから、その上に尊い存在が坐っているというイメージに繋がっていくのでしょう。これもまた、蓮華1つ1つを見てみれば、自ずと得られるものです。
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さて、他に、蓮華と仏教とで繋がるイメージといえば、蓮華が泥沼から咲くということでしょう。いわゆる、濁世といわれ末法といわれた中にも、決然と清浄なる存在として立ち続ける様子がイメージされるのです。これが、ただこの世俗だからといって嫌わず、しかも、世俗だからといってそれに染まらないという菩薩の修行に繋がるのです。或いは煩悩に塗れていても、必ず仏法を得ることが出来るという確信にもなります。このイメージも極めて大切ですね。
〈淤泥華〉とは、『経』(維摩経)にのたまはく、〈高原の陸地には蓮華を生ぜず。卑湿の淤泥にいまし蓮華を生ず〉と。これは凡夫、煩悩の泥のなかにありて、菩薩のために開導せられて、よく仏の正覚の華を生ずるに喩ふ。
曇鸞法師『往生論註(下)』
中国浄土教の曇鸞法師が示された『往生論註』の一節です。これは、後に親鸞聖人も『教行信証』の4巻に引用されていますが、「泥の華」という様子を、『維摩経』を引きながら示されたものです。繰り返しになりますが、蓮華は泥の中から咲きます。これは仏教を襲った様々な苦難に対応するために、説かれるようになったものでしょう。釈尊の教えが、ただ釈尊の教えのままに行われていて、全てが片付いた世界であれば、まだ良かったのかもしれませんが、それはおそらく「歴史的事実」に反します。釈尊の教えは、そのままでは通用しなくなり、色々と変えていく必要もあった。よって、様々な教えが生まれ、その中から大乗仏教も生まれたのでしょう。これは、善し悪しの問題ではなく、仏教の命脈を伝えていくために真摯に行われた運動だったと見るべきであります。
そして、その教えが「蓮華」に托して語られていると考えられるわけです。ただ、その美しさを見て、そこに浄土を見るのも良いでしょう。今の伊豆沼ならそれを味わえます。もう一方で、蓮の生態に目を向け、そこに仏教の苦難の歴史を見るのも良いでしょう。これは、残念ながら蓮華を見ただけでは分かりません。しかし、蓮華しか見えないというのも、問題だとは思います。蓮華が咲いている、その場所をも一緒に見ていく、菩薩の生き方とは、そこから始まるように思うのです。
伊豆沼、自動車で行くのが一番良いとは思いますが、東北新幹線「くりこま高原駅」からもすぐですので、是非、宮城県に足を運ばれる際には、今の季節、伊豆沼にもどうぞ。
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