つらつら日暮らし

「猪八戒」という不思議な存在

『西遊記』に登場する「猪八戒」という不思議な存在が気になっている。もちろん、ブタ(イノシシ)の妖怪キャラ、ということがではなくて、名前の「八戒」についてである。

なお、この「猪八戒」の名前については、日本で江戸時代以降に多数作られた『西遊記』の絵入り本やその類本にも、理由が書かれるところである。

其往昔は天上に在て、天逢元帥の職を任ぜられしが、王母瑶池の会の時、我酔に任せ、常娥を捕へ戯れし科により下界へ逐下され、錯つて猪の胎に入り、遂に此山に止り、名を猪剛鬣といふ者なり。
    『絵本西遊記全伝』、漢字を現在通用のものに改める


この元々天人だったのが、猪八戒である。ただし、天上界で罪を犯して追放され、人間界に降りてきたが、その際に、猪に生まれ変わってしまったという。それで、その後、孫悟空と遭遇し、問答をするのだが、孫悟空に対し、以下のように述べた。

我、向に観音菩薩の勧めにより受戒持斎し、経を取人に従ひ西天に往て仏を拝せんと、此所に待こと已に久し。願くは吾を引て三蔵法師に見へしめよ。
    同上


それで、先に挙げた『絵本西遊記』には見えないのだが、詳細なる『西遊記』の本文では、この観音菩薩に誓ったとされる「持斎」の内容が記載されているとのことである。ただし、上記の一節よりもかなり前に、観音菩薩によって教化されて受戒し、法名を「猪悟能」と名付けられている。更に、持斎の内容として、「五葷・三厭」を食べないように諭されたという。

つまり、この一節が分かっているからこそ、以下の一節も意味が理解出来る。

 行者遂に妖精を伴ひ、三蔵の前に礼拝し、師父、我、罪を免し玉ひ、憐みを垂て徒弟となし、西天へ召連玉へとて、先に菩薩の教誨し玉ひし事を委細に物語ば、
 三蔵大きに悦び玉ひ、遂に師弟の約をなし、且、其名を問玉ふに、
 妖精答へて、菩薩、我に法名を賜はり、猪悟能と申し候。
 三蔵曰く、此名、你が法兄孫悟空と同派なり。我、又、你に別名を与ふべし、とて、八戒と号し玉ふ。
    同上


まず、「行者」とは玄奘三蔵に仕え、行者となっていた孫悟空(孫行者)のことである。また、妖精とはここでいう猪悟能のことである。つまり、孫悟空は猪悟能を連れて、玄奘の前に行って礼拝し、悟能が語った観音菩薩の教誨(持斎のこと)などを語ったという。

それを聞いた玄奘は喜んで、悟能と師弟となり、名前を聞いたという。そこで、悟能が自分の名前を答えると、玄奘は、「それは法系・孫悟空と同派(悟の字が重なること)となるため、新たな法名を与えよう」というと、「八戒」と名付けたという。それで、上記の一節だけでは分からないのだが、先に挙げた、観音菩薩の教誨を踏まえると、この時の「八戒」とは、「五葷・三厭を食べない」という意味のようである。

つまり、通常の仏教で用いられる、「八斎戒」ではない様子だが、『西遊記』全部を読むと、この辺、詳しいことが分かるのだろうか?これは、課題としておきたい。それから、玄奘三蔵の大事業が成就した後で、釈尊から授記されるのだが、その際、猪八戒は「浄壇使者」になるといわれたという。つまり、仏陀のために設けられた祭壇(仏壇)を綺麗にする役目だという。何だろう?この辺も不思議だな?と思うが、機会を見て『西遊記』全編を読んで、また記事を書く機会を得たい。

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