凡そ僧尼に犯有り、格律に准ずるに、徒年以上なるべくは、還俗せよ。告牒を以て徒一年に当つること許せ。若し余の罪有らば、自ら律に依りて科断せよ。
如し百杖以下を犯せば、杖十毎に苦使十日せしめよ。
若し罪の還俗に至らざらん、及び還俗すべしと雖も判じ訖らずは、並に散禁。
如し苦使の条制の外に、復罪を犯して還俗に至らずは、三綱をして仏法に依りて事を量りて科罰せしめよ。其れ還俗し、并せて罰せらるる人は、本寺の三綱及び衆事告すること得ざれ。
若し謀大逆、謀反、及び妖言し衆を惑はせらば、此の例に在らず。
『令義解』12丁表~13丁表を参照、原漢文、当方にて段落を付す
さて、『令義解』を参照すると、この1条に関する註釈が、他の条文に比べても相当多い。それだけ、この1条への理解が難しいということなのだろう。例えば、最初の段落で「格律」という用語が出ているが、それについては以下のように註釈されている。
謂わく、格とは臨時の詔勅をいうなり。律に云うは、事に時宜有り、故に人主権断して詔勅し、情を量て処分すというなり。其の格律は、元、俗人の為に法を設けたり。僧尼の為に制を律せず、是を以て准と称するなり。
『令義解』12丁表
つまり、格律とは、天皇によって臨時に発出された詔勅であり、それを元に処分することをいう。また、この格律は本来、俗人のために発出されたものだが、僧尼もそれに准じて処分されるのである。それから、「徒年」とあるのは、死罪にはならない程度の重罪のことで、流罪などを意味するようである。また、「告牒」については、罪の年数を減らすことである。
「三綱をして仏法に依りて事を量りて科罰せしめよ」については、還俗しない程度の罪の場合は、要するに律蔵に於ける罰だけで収めることになるのだろう。
また、最後の一節で「謀大逆」というのは、天皇などへの反逆であり、謀反はただの反逆、そして、妖言とは、「謂わく、妖言を以て三人以上を惑わすことを謂うを、即ち妖言すと雖も、而も衆を惑わさざるは告言すべからざるなり」(『令義解』)とあって、三人以上を惑わすことをいう。『僧尼令』では、寺院の外に道場を建てて衆生を教化することも禁止されている。妖言とは、そのようなことも入っているということだろうか。
【参考資料】
・井上・関・土田・青木各氏校注『日本思想大系3 律令』岩波書店・1976年
・『令義解』巻2・塙保己一校(全10巻)寛政12年(1800)本
・釈雲照補注『僧尼令』森江佐七・1882年
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