◎四月 和名を卯月と云、卯の花さかりにひらくるゆへに、卯の花月といふを略せりと、奥義抄に見へたり。
三田村鳶魚先生『江戸年中行事』中公文庫・40頁
もう、『奥義抄』を典拠にするのは、確定なんだな。なお、同書については【「長月」一考】をご覧いただければと思う。さて、「卯月」の語源は「卯の花」らしい。そういえば、「卯の花」って何だ?多分、見たことはあると思うが、拙僧の乏しい知識では、「これが卯の花」という理解は出来ていないように思う。調べたところ、或る会社のホームページが詳しかったので、紹介しておきたい。
・卯月の語源となった「ウツギ(ウノハナ)」(養命酒)
生薬の説明として、「ウノハナ」の紹介があり、「ウツギ(卯木・空木、等)」という樹木の名称も紹介されている。それで、この頃(実際には来月ではあるが)に降る長雨を「卯の花くだし」などというらしい。そういった季節を代表する花だが、近年ではどこか、桜とかに負けてしまっている印象。
さておき、4月と言えば、仏教的には「釈尊降誕会(灌仏会・花祭り)」があるが、これに関連して、以下の記述を見出した。
○灌仏会、諸宗、前日、卯の花、新茶を売る。
三田村先生前掲同著・同頁
ここからすれば、「釈尊降誕会」に因んで、宗派を問わずに「卯の花」を売っていたらしい。え?何に使うの?拙僧、全然知らなかった・・・でも、そうか。旧暦に因むから、今だと翌月くらいになってしまうからか。それで、この「卯の花」だが、以下の使い方だったらしい。
是日新茶を煮て仏に供し、卯の花をささぐ也。又江都にては、卯の花を節分の柊のごとく門戸にさす也、上がたには、竿の先にむすびて高く上る事也。
前掲同著・同頁
まず、勘違いしないで欲しいのは、「新茶」の件だが、これは普通に茶碗に注いで供養するものであり、誕生仏の頭からかけるものではない。当時、誕生仏にかけていたのは香木を煮出して作った「香湯」であった。この辺、詳細は【「甘茶」考(再掲)】という記事をご覧いただければ良いと思う。
それから、本題の「卯の花」だが、門戸にさして供養していたらしい。そうなると、街中の道は、左右の門戸に卯の花が掲げられ、白い花の中を歩くような雰囲気になっていたと思われる。これ、当時の絵などで残っていないのかな?一ヶ月程早いけど、もし「卯の花」が手に入るなら、それを釈尊降誕会の花としてお祀りしたいものである。
ということで、「卯月」に関する雑考を記事にしてみた。
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