△盂蘭盆
精霊祭とは略して盆ともいふ。十三日から十五日に至る三日間祖先の魂を祭る仏式である。
盂蘭盆は梵語から出た言葉で堕落者を扱ふといふ意味である。
〈由来などは中略〉
今日行はれてゐる盂蘭盆会は、地方により或は宗派によつて多少の差異はあるけれども、普通は魂棚を家の内に作り、祖先の位牌を据え、草花や野菜類を供へ、三日の間は毎日膳部を供へ、灯火を点じて祭るのである。
十六日の朝になると、供物一切を菰に包んで川に流すか、或は山家などでは地中に埋めるのである。
十三日盂蘭盆に入る日に門口で麦藁(おがら)などをたくのを迎火といひ、十六日の朝、或は十五日の夜などに焚くのを送火といつてゐる。
新盆といふのは、其の家に新仏のあつた場合をいふのであつて、普通の家よりも特に立派にこの式を営む地方もある。
迎火とか送火とかいふのは、仏を迎送する意味であることは言ふ迄もない。
小林鶯里『新しき年中行事』文芸社・大正13年、71~72頁
これを見ると、だいたい今の我々が行っていることと同じであると言える。一点、棚経の話が無いことが気になるけれども、それ以外は大きな問題は無い。
とはいえ、盂蘭盆の意味について、「堕落者を扱ふといふ意味」とあるが、この辺はどこから持ってきたものか?よく、インドの「倒懸」を意味する言葉を漢字で充てたなどといわれるが、最近ではもっと別の説も出ていて、イランの辺りで行われている儀礼に近いともいわれるなど、色々と難しい。
なお、迎火・送火の日付の件を含めて、だいたいスタンダードな記述であるとは思われるため、上記内容はよく参照されると良いと思う。
ところで、本書同項の末尾に、気になる一節があった。
尚ほこゝに一つ附記すべきことは、盆踊りに就てゞある。尤も都会には余り見ない様であるが、田舎などに行くと、青年男女が、俗謡を歌ひながら踊り舞ふ習慣がある。然し今日ではその踊りなり歌詞なりが余りに卑猥にわたる所から取締りを厳重にしてゐるやうである。
前掲同著・72~73頁
まぁ、盆踊りについては、古来から男女の出会いの場だったという話を聞いたことがあるので、卑猥というのはその通りなのだろう。近代の日本社会で、徐々にそのような猥雑さなどが消されゆく状況の中、盆踊りも取り締まりの対象となり、結果として現在行われているような、健全な踊りの場となったということなのだろうか・・・
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