「燃え上がる闘志」
白蘭に向かいながら、冬灼は「若君、1つ心配なことが」と言う。「何だ、申せ」と何侠が言い、冬灼は「娉婷さんを助けたことは、皇女様にどう説明を?若君は皇女様を本当に愛しているのでは?」と聞く。「ばかを申すな、身の破滅につながる。皇女のことに口を挟むな」と声を荒げる何侠。冬灼は「では娉婷さんは?」と言う。何侠は「娉婷は私のそばにいるのが最もよい。そのために力を尽くした。お前が案ずることではない」と言って、話をそれ以上させない。
馬車に乗っていた娉婷の気分が悪くなる。心配する酔菊が「これからどうなるの」と言うと、多くの衛兵が自分のせいで死んだことに心を痛めている娉婷が「私のせいよ、すべて私が悪い」とつらそうに話す。そして、玄参、貝母、冬麦、百合、地黄に黄臾を加えれば私は“楽になる”と言う娉婷。酔菊は「だめよ。娉婷さん、よく考えて。お腹には北捷様の子が。昨夜の話を覚えてる?男児だったら学問を学ばせると」と懸命に説得しようとする。その途中で「北捷様。北捷様は…。今日は北捷様の生まれた日。今日戻る約束だった。蒸し菓子を作ったわ。祝いの蒸し菓子だったのに、戻ってこない。何侠の話が誠なら、もし北捷様が本当に亡くなっていたら、1人で生きていたくない」と泣きながら娉婷は言う。
酔菊が「止めて」と大声で言う。馬車が止められ、酔菊と娉婷が降りる。駆けてきた冬灼に「少し歩かせてあげて」と言う酔菊。何侠が「半時、休む」と言い、娉婷の後を追いかける。酔菊も行こうとするが、冬灼に止められる。
北捷のことを思いながら歩いてきた娉婷は“誓い合ったわね。もし、どちらかが死んだら、もう一方も死を共にすると。北捷、あなたが死んだのなら、私も死ぬわ”と思う。そんな娉婷を見ながら“なぜだ。ここまでした私に目もくれず、耳も貸さぬ”と思う何侠。
娉婷は近づいてくる何侠に「1人にしてください、何の用です」と言う。何侠は「何も食べておらぬな。先はまだ長い、体が持たぬぞ」と話す。「生と死は紙一重。死別の悲しみで眠れない。夫を亡くすと、燕では妻が3日食事を断つ。故郷のしきたりをお忘れですか」と言う娉婷。
娉婷が崖ぎりぎりまで歩いていき「娉婷。数歩下がれ、危ないぞ」と何侠が声をかける。振り返った娉婷は「うちの衛兵を皆殺しにして、私1人、死ぬのが何です」と言い返す。「殺したくなかった。目的はそなただけだった」と言う何侠。娉婷は「若君、あんなに人を殺して、まるで別人のようです」と言う。何侠は「私は変わらぬ。あの者らは皆、楚北捷の手下。死んで同然だ」と言いながら娉婷に近づく。娉婷も後ろへ下がり、何侠は娉婷をつかまえる。
「放して」と言う娉婷。何侠は娉婷の両肩をつかみながら「放さぬ、聞け。そなただけは私を分からねばならぬ。これは敵討ちだ、敬安王家、数十人のな。こうするしかない」と言う。娉婷は首を横に振り「いえ、違います。すべて若君が選んだこと。私が楚北捷を選んだのと同じ。若君は皇女を大事になさって」と話す。過去には戻れません、これが運命です、と。
「運命は信じぬ。信じるのは己のみ。こうしよう、しばらくの間、ゆっくり考えろ。自分によくしてくれるのは誰なのか。そなたの心は、必ず私に戻る」と言う何侠。娉婷は「私を連れて帰ることを、皇女は知っていますか」と尋ねる。何侠が「それは私の問題だ、案ずるな」と言い「知らぬのですね」と言う娉婷。何侠は「皇女は私の妻、私には逆らわぬ」と言う。娉婷は「ええ、同じく私は北捷の妻。夫を裏切りません。愛するのはあの人だけ」と言い返す。「そうか、だがもう死んだ。知ることもない」と何侠は言う。
「人を愛したことは?愛する人にご飯を炊く幸せや、愛する人の喜びが自分の喜びだと感じたことは?若君は自分1人の世界に生きている。誰も愛せません。権力など手に入れても、明日、死ねばなくなる」と言う娉婷。何侠は「自分のことだけか。愛する者と通わせる温かい情や、安らかな幸せを望まぬ者はおらぬ。なれど家も家族も奪われた私に、その温かい愛情を望むことなど許されぬ。決してならぬのだ。絶えず自分に言い聞かせる“目的は敵討ち”。それだけだ。毎晩眠れず、眠ったとて死んだ王家の者が夢に出る。その気持ちが分かるか」と話す。
娉婷は「敵を討てば眠れるようになりますか。若君が殺した者にも家族がいます。その者らは、また若君に敵討ちを?きりがありません」と言う。「きりがない?私は知らぬ。目的は果たした。これから過去に戻る」と涙を流しながら言う何侠。しかし娉婷は「戻れません、もう二度と。欲望が若君を変えた」と言うと行ってしまう。
馬車に戻ってきた娉婷を心配する酔菊。酔菊が何か考えがあるか聞き「北捷様がいないのに何もないわ。なんとか生きているだけ」と娉婷は答える。酔菊が「でも、子が…」と言いかけると、しっと止め「この子のために、精いっぱい生きる」と話す娉婷。
何侠たちが川辺で休んでいると、1人の男が馬に乗って駆けてくる。その男が何侠に向かい剣を投げ、よける何侠。何侠は自分の馬に乗ると、男を追いかける。
別の道から先回りし、何侠は男を馬から落とす。そして何侠に剣を向けられた男・飛照行(ひしょうこう/燕の皇后一族の手先)は「面識がないゆえ、かような方法で参上しました。敬安王子」と言う。
何侠に「命を受け、ある件を知らせに参りました」と言う飛照行。「なぜ、ここを通ると?」と何侠が聞くと、飛照行は「ここを通らぬなら、私の知らせは無用のもの。通るなら有用ゆえ、潜んでおりました」と答える。その知らせとは?と何侠が言う。飛照行は「白殿を奪うため、燕王の兵がこの先で待ち伏せを」と話す。「お前は皇后の一派か」と言う何侠。飛照行は「はい。王子に知らせよとの命を受け、参りました」と言う。
皇后が過去を水に流し、自分と手を組みたいと願っていることを飛照行から聞いた何侠は、鼻で笑いながらも「よかろう。こたびの恩を返さねばな。なれど伝えよ、敬安王家の恨みは残ったままだ」と言う。そして行きそうになる飛照行に「使えそうな男だ、また会おう」と言う何侠。
北捷たちは、もうすぐ白蘭という所まで来ていた。国境を越えたら何侠たちを追うことはできない。そんな中、北捷たちに向かって矢が飛んでくる。それは待ち伏せをしていた燕の兵だった。北捷たちと戦いはじめた燕の兵は、何侠たちではないと分かりすぐに戦いをやめる。
「何者だ、なぜ待ち伏せを?」と聞く漠然。相手は「われらは燕の者。何侠を襲う命を受けました」と答える。北捷は燕の兵に立ち去るよう告げる。
何侠たちがこの道に来ていないと分かり、追いつけないと思った北捷は、都に戻り改めて出兵することにする。
回り道をしたため、馬車が大きく揺れるほどの悪路になってしまう。そんな中、急に馬車が止まり、何侠が扉を開ける。「娉婷、少し食べろ。さもなくば体がもたぬ」と器を差し出す何侠。娉婷は酔菊に受け取らせ、何侠が扉を閉める。「北捷様の子のためにも、まだ死ねないわ」と言い、娉婷は器に口をつける。
燕の永徳殿。宴の最中も皇后の楽彦(がくげん)を無視し、笑顔すら見せない慕容粛。「どうかなさいました?」と楽彦が聞くと、慕容粛は「よき曲なれど、何かが物足りぬゆえ、酔いしれることができぬ」と話す。その“何か”があらば完璧であるのに、と。「おっしゃるとおりです。私も何か変だと思っておりましたが、聴いても分からず、今のお言葉で腑に落ちました。さすが陛下は造詣が深くていらっしゃる」と言う楽狄(がくてき)
部屋に戻った楽彦は「陛下は私など眼中にない。何を考えているやら」と言う。「陛下のご機嫌が悪い訳は?」と聞く楽狄。楽彦が「知りませぬ」と言うと、楽狄は「陛下は何侠を邪魔し、白娉婷を奪う気だった」と話す。驚いて「まさか、後宮に入れるつもりですか」と動揺する楽彦。楽狄は「落ち着くのだ。手は打っておいた。先に何侠に知らせ、陛下の兵は楚北捷を何侠と間違えて襲った。陛下の兵は900人。相手は3000人。ひどくやられた。陛下は納得がいかぬゆえ、不機嫌だったのだ」と言う。
父に礼を言った楽彦は「白娉婷が来たら、どうなります?あの陛下のこと、私は皇后の座を追われるやも」と話す。「皇后は国母だ。わが楽家は苦楽を共にする。私と震が全力で、お前の地位を守る。皇宮の中でのことは手出しできぬが、外でのことは何であろうとわれらに任せておけ」と言う楽狄。
「鎮北王は無断で30万の兵を率い進軍中です。残った兵は3万もおらず、国防が危ぶまれます。あまりに身勝手で見過ごせませぬ。陛下、どうかこの国と民の安寧を守るため、鎮北王を呼び戻してください」「鎮北王は1人の女子のためだけに出兵しております。あまりに見境のないこと。白蘭と和解したばかりというのに、友好関係が再び悪化を」と大臣たちに言われる司馬弘。司馬弘は「友好関係だと?数日前、駙馬が30万の兵を率い、国境に迫ったぞ。晋軍と戦う準備はできているようだ」と言い返す。
それでも大臣の1人が「その30万の大軍は国境近くで演習をしただけです。晋に入っておりませぬ。なれど鎮北王の暴挙は、晋と白蘭の対立を生み、大事となります。国情が落ち着いた今、かような問題は避けねば。晋の行く末と民のために、お願いです。鎮北王を呼び戻してください」と言う。しかし「出兵中は勅命を出せぬし、虎符は鎮北王が持っておる。それより皆は桑の騒ぎの解決策を考えたか。己のことは棚に上げ、他人の批判ばかり。鎮北王の件は私に考えがある」と皆を下がらせる司馬弘。
司馬弘が“猛虎 下山図”を見ていると「皇后様が“この絵の虎は強い邪気を発している”と仰せで、私にしまうよう命じられました」と馮総管が話す。「確かに凶暴な虎だ」と言った司馬弘は、絵に何かを書き「この絵を鎮北王に急ぎ届けよ」と命じる。
雲安。娉婷を冬灼にまかせ、何侠は着替えのため屋敷に戻ることに。その屋敷の門前で、皇女が何侠の帰りを待っていた。驚いた何侠が「着替えてから参ろうかと」と話すと、皇女は「疲れた駙馬を出迎えるのは当然」と言う。
皇女が「少なからず収穫があったかと」と尋ねる。何侠は「珍しきものを持ち帰りました。お見せいたします」と言う。
歩きながら、何侠は「心を落ち着ける香水を持ち帰りました。お試しを」と話す。そして部屋に入ると「この香水です」と皇女を抱き寄せる何侠。皇女は何侠から少し離れ「こたびの出征で晋との関係が変わったわ。案じていないの?」と聞く。何侠は「貴丞相がまた何か進言を?楚北捷は死にました。晋は襲ってきませぬ。貴丞相は一体何を?」と言う。「知らないのね。楚北捷は死んでおらず、今、30万の兵を率いて白蘭に進軍している」と言う皇女。何侠は「死んでおらぬ?ありえぬ。死罪でした」と言う。
皇女は「貴丞相が言わずとも、私が追及するわ。駙馬、うかつだったわね。軍を率い、晋との国境に迫ることを丞相は反対した。でも私は駙馬を信じ、後押ししたわ。ところが駙馬はなぜか状況も確かめず戻ってきた。楚北捷は生きており、進軍してきている。駙馬は責められる種を自らまいた。味方したくても、大臣らの忠言を無視できない」と話す。「張貴妃の皇子が襲われた件は無意味だったと?」と何侠が聞く。皇女は「皇子は疫病で死に、もう埋葬されたとか。張貴妃も謀反の罪で幽閉された。楚北捷は復職し、何の痛手もない」と答える。
司馬弘の策略だったと分かった何侠は「私に殺させようと…」とつぶやくように言う。「誰を?」と言う皇女。ハッとした何侠は「楚北捷が来たら、全力で戦います。白蘭は強くなりました。陰謀では殺せなかった楚北捷を、戦場で殺すのも気持ちいいでしょう」と話す。皇女は「そのとおりね。晋との戦いを終わらせねば。なれど楚北捷は強い。総帥の駙馬には、早く戦略を考えてほしい。大きな戦よ。駙馬は何よりも戦のことを考えて。他のことに気を取られないで」と言う。他のことは私がうまくやっておくわ、と。
青紫堂に連れてこられた娉婷は、酔菊を先に屋敷へ入れた後、冬灼に「若君に伝えて。こんなに見張りは要らない」と話す。「ここは町外れゆえ、若君は心配なのです。何かあった時、すぐ来られませぬ。そのため衛兵を多めに配しました。こうも言っていました“町外れだが、静かな所ゆえ気に入るだろう”。当面、ここにいてください」と言う冬灼。しばらくしたら別の所に移りますと。「若君に感謝するわ」と言った娉婷は、急に気分が悪くなる。急いで駆けてきた酔菊が「私に任せてちょうだい」と言って、娉婷を屋敷の中へ連れて行く。
ーつづくー
「若君が殺した者にも家族がいます。その者らは、また若君に敵討ちを?きりがありません」と何侠に言った娉婷。
本当にのとおりだと思う。
とうとう娉婷が白蘭に…。
いくら静かでいい所だとしても、北捷はいないし、自分の家じゃない屋敷を娉婷が気に入るわけないじゃない!!
早く北捷が生きていると娉婷が知ってほしい。
娉婷を何侠が連れてきていることを皇女は知らないのかな…。
北捷が生きていることや張貴妃が幽閉されたことは知っているのに?(@_@;)
司馬弘が北捷に渡すように言った“猛虎 下山図”も気になる…。
↓ポチッと押していただけると嬉しいな。
よろしくお願いします
にほんブログ村
いつもポチッをありがとうございます(*´ー`*)
何侠は、どうしたいの?どうなりたいの?
このままだと、本当に、破滅に向かってますよね。
だって、皇女さまは、へいていを隠してるって、勘づいてますよ!
一国の皇女さまでも、何侠に本気な一人の女子です!
国と国の駆引きの中、最後に勝つのは、『ほくしょうさま』の一途な想いであって欲しいです!
誰か早く、『ほくしょうさま』が生きている事を、そして、お腹の中には、我が子がいる事を知った事を、『へいてい』に教えてあげて欲しい!
蛇足ですが…お腹の子は、男の子!?
酔菊が「男の子なら…」っと、『へいてい』に強く生きよと諭してる。
となると、晋の跡継ぎですよね。
司馬弘は、何侠を使い、『へいてい』をなきものにしようとしたり、燕の皇帝は、‘何か’が足らないと、『へいてい』を欲していたりと、この先がますます気になりますね!
燕はどこかキナ臭い感じですよね。。。
王妃&王妃パパなんだか一筋縄ではいかない感じです。
北捷が生きていること娉婷に教えてあげたいですし、
何侠がどうすれば娉婷を諦められるのか
何かできることはないかと思わず思ってしまいました(汗)