Entre ciel et terre

意訳して「宙ぶらりん」。最近、暇があるときに過去log整理をはじめています。令和ver. に手直し中。

第319冊『ゾロアスター教』

2023年11月01日 | 世界史あれこれ
(図書案内)
 ・メアリー・ボイス『ゾロアスター教 三五〇〇年の歴史』(山本由美子訳、講談社学術文庫、2010.)



  先日、『ゾロアスター教』という本を読みました。例によって、積読消化なのですが、その途中でいくつか興味深かった部分を。

p.82
 彼(アフラ・マズダー)は、アシャ(火の主、真昼の熱の主)に従う判定者であるとともに、望ましい主人である。(彼は)良い意図をもつ行為・生命の実行者である。王国は、アフラ・マズダーに王国はあり、人々は彼を貧者のための牧者とした。

 「貧者」と訳された「ドゥリグ(drigu)」という言葉は、ペルシア語の「ダルヴィシュ(darvish)」の原型であって、献身的で謙遜な信仰の真の担い手という特別の意味をもっている。...


 ダルヴィシュとは、そういう意味でしたか。。。

 イランでイスラームのシーア派が大事にされてきた理由も、少し理解できた気がします。ひとつに、ゾロアスター教の教義や伝説にイスラームの思想とつながる側面がみえていたり、相互に利用されてきた歴史があったということ。
 そしてもっとも有名なのは、「シャハルバーヌー」の伝説が由来していたということ。

p.284~285
 もう一つの主要な要素は、四代目正統カリフのアリーとムハンマドの娘ファーティマとの結婚による子で、ムハンマドの孫であるフサインが、「シャハルバーヌー」つまり「国の女主人」という名の捕虜となったサーサーン朝の王女と結婚したという伝説であった。この全く創作上の人物は、その名をアルドウィズール・アナーヒードの祭儀用の称号からとったと思われ、フサインとの間に、歴史上四代目のシーア・イマームになる息子をもうけたとされる。
 というのは、シーアつまりアリーの「党派」は、カリフの地位が正しくはアリーとその子孫に属するもので、ウマイヤ朝が不法にもそれを強奪したのだと主張したからである。イラン人改宗者の多くは、シーア派の大義を支持した。そのことは、ウマイヤ朝の厳しい課税と偏狭なアラブ・ナショナリズムに反対したり、王女シャハルバーヌーを通してサーサーン王家の後継者を擁護することを可能にした。こうして愛国心と過去への忠誠を代表するのは、もはやゾロアスター教徒ばかりではなくなったのである。


 節が小分けされてあるので、読みたくなったら手に取ってみるとよいかもです。古代から、時代を追って20世紀ぐらいまでを概観してくれるので、興味深い一冊ではありました。


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。