私が初めてコンピュータに出会ったのは中学生の頃でした。当時はまだ今のようにコンピュータという言葉はあまり使われておらず、マイクロコンピュータ(マイコン)という物が家電製品に取り入れられた事が話題になる程度でした。日本におけるマイコンのさきがけとして有名なのが日本電気(NEC)のTK-80です。
中学2年生の時に私はどうしてもマイコンを使ってプログラムを組んでみたくなりました。私の父は新しい物が好きで、時代の先端を行く物にはいつも興味を持つ人でした。ある時 私はコンピュータの素晴らしさを父に語りました。そして父に、もし次のテストで学年で1番を取ったらコンピュータを買ってほしいという約束を取り付けました。それから私はコンピュータ欲しさに必死で勉強して、なんと2学期後半のテストでその目的を達成しました(苦手だった現国の成績がよかった事が幸運でした)。そして父は約束通りマイクロコンピュータを買いました。そのコンピュータがこれです。
日本電気(NEC)のCOMPO BS/80 type Aというコンピュータです。このコンピュータにはディスプレイもなく、もちろんハードディスクもありません。家庭用テレビにつなぎ、データ保存はカセットテープを使います。
コンピュータに没頭し過ぎ学校の成績が悪くなるとよくないため、このコンピュータを使うのは日曜日だけと決めて、使う時間も制限しました。勉強したプログラム言語は主にBASICとマシン語でした。マイコン雑誌を教科書代わりにして、プログラムを勉強しました。ちなみに現在どのパソコンのキーボードにも付いているエンターキーは、かつて復改キーと呼ばれていました。
実はこのCOMPO BS/80が発売された頃に、日本電気では既に次の新しいパソコンの誕生が決定していました。そのコンピューターがPC-8001です。結果的にCOMPO BS/80は短命に終わった悲運なマイコンとなってしまいました。それでも私はやりたいと思った時にマイコンを与えてくれた父親に今も心から感謝しています。この経験が大学生になってからもコンピュータを使い続けさせ、医師になってから従事した音声分析の研究でもとても役立ちました。そんな父との思い出が詰まったこのマイコンを、私はこれからも大切にしたいと思います。
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