昨夜、「入らずの森」というホラー小説を読みました。
![]() |
入らずの森 (祥伝社文庫) |
宇佐美 まこと | |
祥伝社 |
帯の、夜、一人で読んではいけない、という宣伝文句に興味を持ち、購入したものです。
愛媛の山中の過疎の村。
足を怪我してオリンピックへの出場を断念して中学教師になり、あえて田舎の学校を希望して赴任した青年の鬱屈。
サラリーマン生活に嫌気がさし、有機農業へ憧れを抱いてIターンでやってきた初老の夫婦の葛藤。
両親の離婚をきっかけに、東京から祖母の家に身を寄せた不良少女。
そしてなぜか、埼玉県の病院で死の床に着く老婆と介護する娘。
愛媛の寒村をめぐる様々な人々の物語が重層的に語られ、最後にはその関係性が判明する、という構成。
横溝正史を思わせるような因習的な田舎に、わが国らしい、湿った感じが雰囲気を盛り上げます。
森に住む邪悪な生き物。
平家の落人伝説。
この数十年、時折起こる残忍な事件。
和製ホラーらしい道具立てが整っていて、きれいにまとまった小説です。
ただし、決定的な欠陥があります。
怖くないのです。
ホラー小説としては完璧と言えるほどの道具立てと、かちっとまとまった物語が、かえって不気味さを損なわせています。
何が原因なのかなと考えて、たぶん、整いすぎているのだろうな、と思いました。
ホラーは、わけが分からなくてはもちろんダメですが、きれいにまとまっていると、余韻が残らなくて、浅く感じられますから。