引越し

今から３０年近く前の話です。
友人は、岡林信康の「山谷ブルース」にあこがれて山谷地区にアパートを借りてました。
その彼から電話があり、引越しをするので手伝って欲しいとのこと。
依頼通り、運転免許のなかった友人に代わり、レンタトラックで友人宅に行きました。
朝８時集合は結構厳しかったのですが、旧友の依頼をムゲにはできません。
時刻通りに着きはしましたが、なかなか引越しが始まる気配がありません。
しびれを切らし、友人宅に乗り込みました。すると・・・

友人は、布団で寝ていました。いつも通りの部屋のままです。

とほ「あれっ？引越し今日じゃなかったっけ？」
友人「おお、ありがとう。まぁあがれ。コーヒー飲むか？」
とほ「なんだ？引越しやめたのか？」
友人「いや、今日引っ越す。レンタカー借りてきてくれた？」
とほ「あぁ、おもてにとめとるけど・・・。なんもしてないやん」
友人「おお。これからダンボールもらいいく」
とほ「はあ？ほんなら、だれかにとってきてもらえ」
友人「いや、おれらふたりだけ」
とほ「・・・・・・・」

というわけで、近所の野菜屋さんやスーパーをまわって、ダンボールを
かき集めました。
持ち物の９割は書籍なんで、これがやたら重い。ダンボールにつめる
作業から始め、それでも夕方には引越しを完了し、引越し先で祝杯をあげました。

今では立派な国語の先生になりましたが、
引越しを手伝いに行ったらあるじが寝ていたのは、後にも先にも
この１回だけです。

「山谷地区」の呼び名は使われなくなったと聞きました。
どのあたりだったのか、σ(・・）も記憶が定かでありません。

本件は、いいなり亭主さんからいただいたコメントで思い出しました。