家は小さな村で唯一の雑貨屋さんだったから
時には沢山採れた魚も届けた
それこそ食品から文房具まで
なーんでも売ってた
だから買い物しなくても
夕暮れになると
みんなが集まってきた
そんな中に…
小橋のばあちゃんはいた
大きな体なのにやさしくて
いつも大声で笑って
ちいさなオレを見付けると
必ず
男は度胸
女は愛嬌だよ!!
ガハハハハ
って笑った
小学生になるとじいちゃんと
二人暮らしの
小橋の
ばちゃんの家に
つくしやわらび
いたどりや
時には沢山採れた魚も届けた
いつもありがとね
いいかい、どんな時も
男は度胸
女は愛嬌だよ!
って
また笑った
ある日小橋のばあちゃんが
誕生日には何が欲しい?
って聞くから
テレビでみた
大きな誕生日ケーキ食べてみたい
って言ったら
おじいちゃんに頼んで
町まで行って
二人で
誕生日ケーキ買って
持って来てくれた
田舎に住んでる年寄り夫婦には
町まで行ってケーキ屋さんを探して
買って来るなんて事が
どれだけ大変だったか…
それでも
大切に
大切に
バスを乗り継いで
買って来てくれた
父ちゃんに叱られて
田んぼの隅で泣いていた時も
おばあちゃんは
悪い事をした時は
ちゃんと謝るのが男だよ
だから泣かないで
男は度胸だろ?
って
家に送ってくれた
じいちゃんが先に亡くなってからも
本当は寂しいくせに…
いつも大きな声で笑ってた
中学生になって
修学旅行から帰ってきたその日
小橋のばあちゃんに
お土産を持って行こうとした時
母ちゃんが
小橋のばあちゃんは
居ないよ
って教えてくれた
何で?
どっかに行ったん?
と聞くと
昨夜心臓が悪くなって
病院に行ったけど間に合わなくて
死んだんだよ
と…
悔しくて悔しくて
ばあちゃんの家に行ったら
大人達が沢山集まってて
お葬式の準備をしてた
そんな中
ある人達が話して居るのを聞いた
ばあちゃんはその夜
心臓が苦しくなって
本当はすぐ近所の家に行けば
助かったかも知れないのに
そこの家に嫁いできた嫌味な嫁と
いつもケンカしてたから
何キロも離れた家まで
発作を我慢しながら歩いて行って
助けを求めたと…
ばあちゃんのお葬式には
今までずっと離れて暮らしていた
息子も来てると聞いた
盆も正月も
一度だって顔を見せた事のない
息子…
何でじいちゃんとばあちゃんを
ほっといた!!
腹が立って
父ちゃんに
いまから行ってぶん殴ってやる!
と家を出ようとしたら
子供がが口を出す事じゃない!
黙っとれ!
と叱られた
せっかく買ってきたお土産を
お供えしてくれと
父ちゃんに渡した
小橋のばあちゃんが亡くなってから
何年も経って
だんだんばあちゃんとじいちゃんの
小さな家が
木が繁り
草が生え
山に包まれて行った
いつも実家に帰って
墓参りを済ませると
小橋のばあちゃん家の
側に行って
ばあちゃん帰ってきたよ
と一礼する
何かね、
頑張って生きてるかい?
男は度胸!
女は愛嬌だよ!
ガハハハハって
聞こえてくる様な気がする