快読日記

日々の読書記録

「世田谷一家殺人事件 侵入者たちの告白」 斉藤 寅(しん) 草思社

2006年07月18日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
 警察組織最大の欠陥。


もう犯人の名前も判ってる、
顔写真まで入手しているのだ。
この本が出たことで、警察も動かないわけには行かないだろう。
犯人逮捕も時間の問題か。そうだったらいいけど。

山ほど遺留品のあるこの事件が、
6年経ってもいっこうに解決しない原因は腹が立つほど単純なこと、
つまりは各都道府県警の“縄張り不可侵体質”が諸悪の根源と言っていい。
まったくがっかりさせられる。
逆に言えば、そうした現状を巧みに利用しているのがこの外国人犯罪者たちなのだ。



縦割りの警察組織の間を、横にすい~っと行き来する筆者のフットワークのよさにもあこがれる。
しかしそれに今まで誰も成功していない(試みていないのか?)のも不思議だ。
これまでいろいろな人が書いた「世田谷一家」もので、
どうしてもつじつまが合わなかったいくつかの箇所(たとえば、被害者の書類などを風呂場にぶちまけた理由、犯行後に長時間ネットをしていた理由等)に「ああ!!」と合点がいった。
一方、たしかに表現が紋切り型なので、気になる人には気になるかも。
でもそれがこの作品を良くも悪くも「劇画調」にしていて、
わたしはけっこう好きなテイストだ。

ところで、漫画家・山本英夫が数年前に書いた「殺し屋1(イチ)」は
すでにこのアジア系犯罪者グループ(クリミナル・グループ)を描いている。
この漫画家は一体どこで、どんな取材をしてこの事実を知ったのだろう。



警察組織の不可思議さ、
外国人の出入りに対してあまりに寛容な日本社会のお人よしさ、
ルポライターという商売の危うさ(本当に身が危険なのでは?という意味で)、
危機管理・防犯を個人ですることの限界など、
いろいろなことを考えさせられる本だけど、
読後、まず思ったのは、
「山本英夫ってすごいな」であった。

この記事についてブログを書く
« 「細木数子の黒い真実」 野... | トップ | 「どてらい男(やつ) 第二... »

ノンフィクション・社会・事件・評伝」カテゴリの最新記事