快読日記

日々の読書記録

「どてらい男(やつ) 第二部 第二巻 闘商編」 花登 筐 徳間書店

2006年07月20日 | 日本の小説
 かっこいい日本人。


自分に関するよくない風評があったら「誰が言ったか」ではなく「何と言ったか」をよく聞け、みたいな警句があるけど、
それを実行するのはとても難しい。
「何と言ったか」の中には、多かれ少なかれ自分の問題点が指摘されているはずなのに。チャンスなのに。
悪評が全くの誤解だとしても、その誤解を受けた理由を考えれば、自分の今後に必ずプラスになるような何かに行き当たるかもしれないのに。
だけど普通はつい「誰が悪口を言ったのか?」の方向にむかってしまうよね。
山下猛造~もーやんが真に「どてらい男」なのは、自分に向けられた非難を冷静に咀嚼して、瞬く間に自分の前進のための燃料にしてしまうところだ。自分を攻撃する人の発言を、「警告」と捉え、それによって大事なことに気づき、方向を転換させる。


「切り換えんといかん。そやなかったら、企業は発展せん」(118p)


ここでもーやんの頭を「切り換え」させたのは、国税局の岩木係長の容赦ない責めだった。もーやんの経営方法がまだ残す甘さを厳しく指摘して、追いつめた。追いつめられながらもーやんは相手の鋭い発言に「なるほどな~」とつぶやくのだ。闘いながら相手の力を吸収し、技を盗んでいる。高い柔軟性と可塑性が強さに直結するということだ。もーやんかっこよすぎ。

後半は、大量に抱え込むことになった鍋の在庫を、援助物資という名目で、水害に見舞われた静岡までトラックで運ぶ話。ここでも盟友尾坂のしぶい判断と、もーやんの機転のすばらしさが爽快。
ここで登場する尾坂の経営する運送屋の社員・清水といううだつのあがらないじいさんがどんどん蘇生していく様子もわくわくする。周囲は、その長い経験に裏付けされた判断に、思い切って任せてみる。すると任されたという喜びが更なる飛躍につながる。ちょっと大げさだけど。高齢者が仕事を持つということについての大きなヒントになると思う。

それで。今の勤務先の図書館にあるのがこの2巻までなので、この先が読めません。うわぁぁん。もーや~ん!!神様、この続きがあるところにわたしを連れて行って。

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