快読日記

日々の読書記録

「硝子のハンマー」 貴志祐介 角川書店

2006年09月10日 | 日本の小説
みっちり本格。


前作「青の炎」からなんと4年半!!
しかし、読んでみると「なるほど4年半かかるだろうなあ」という濃厚さだ。

子供のころ、地区の図書館に、少年向けにリライトされた「世界の名作推理全集」 (http://homepage1.nifty.com/maiden/jsm/akita.htm)があって、これがもう鼻血が出そうな濃さだった。
ガードナー、ラティマー、クイーン、バン・ダイン、カー、ガストン・ルルー!!
どっしり、みっちり、コクがあって重厚な作品群。
小学校の図書館は3年生以上じゃないと入れなかったので
しかたなく通い始めた地区の小さな図書館だったけど
この全集がわたしの「本を読む人生」を確定したと言える、今思えば。
小説をあまり読まなくなった今でも、推理小説の最初のページに間取り図が出てくるだけで鼻息が荒くなる。
巻頭に出ていると心拍数が上がるモノは人によって違うよね。
時刻表だったり、地図だったり、人物の相関図だったり。
わたしは断然、間取り図派です。
この「硝子のハンマー」、間取り図が出てくるってことは、そう、密室モノです。
とにかく描写が丁寧で、っていうかしつこいので、
あっというまに絡め取られてしまって、読了するまで肌身離さず持ち歩く始末。
特に本作では、犯人の父親に関する描写がずしりと来た。
貴志祐介の、こういう底辺の人間の描き方はとても好きだ。
同情とも軽蔑とも違う「こういう人間は確かにいる」という静かな悲しみだけがストレートに伝わってくる書き方だ。
探偵役の「榎木」は、今後シリーズ化してもいいなあ。ああ、おもしろかった。

「俺がやろうとしていることは、たしかに、誰にも許されないことだろう。
 だが、よく考えてみると、別に、誰かに許してもらう必要はない」(387p)

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