快読日記

読書とともにある日々のはなし

「名もなき毒」宮部みゆき

2008年04月03日 | 日本の小説
《本の感想にはなってませんが、「とにかく夢中で読める小説」をお求めの向きはぜひ》





1年半ほど前のことです。
仕事で、高校弓道の練習試合に立ち会っていました。
寒い雨の日で、道場は屋根があるだけの外と変わらなくて、わたしは体を縮めてパイプ椅子に座っていました。
ふと斜め前のおじさんを見ると、熱心に本を読んでいる。
ほんの数メートル先で高校生たちが真剣勝負をしているというのにです。
どんだけおもしろいんだよその本!
そして何読んでるんだよ~!!
気になってしょうがない。
背筋を伸ばして覗いてもなんだかわかりません。
あきらめかけたそのとき、祈りが通じたのか、おじさんはおもむろに立上がり、たぶんトイレに向かいました。

チャンス!!

わたしは立上がり、椅子の上に置かれたそれを持ち上げました。
黒い表紙の「名もなき毒」のスピンはラスト30ページくらいのところに挟まっていました。
むぅ。終盤だ。


宮部みゆき、短編集しか読んだことがなくて、長編は食わず嫌いだったんです。
そんなにいいのか!!
試合中も手放せないほどに!!


そんなわけで、わたくしこれで宮部みゆき長編デビューしてしまいました。
あの状況でも、あの寒さでも、読むのをやめられなかったおじさんの気持ちが痛いほど分かりました。
■昨年夏ごろ読了