快読日記

日々の読書記録

「ゲイルズバーグの春を愛す」ジャック・フィニイ

2012年01月06日 | 翻訳小説
《1/3読了 福島正実/訳 ハヤカワ文庫FT 1980年刊(早川書房より1972年に刊行された単行本を文庫化) 【翻訳小説 短編集 アメリカ】 Jack finney(1911~1995)》

収録作品:ゲイルズバーグの春を愛す/悪の魔力/クルーエット夫妻の家/おい、こっちをむけ!/もう一人の大統領候補/独房ファンタジア/時に境界なし/大胆不敵な気球乗り/コイン・コレクション/愛の手紙

ファンタジー、というのが苦手なんです。
架空の王国や魔法使いと、とことん相性が悪い。
協調性がないから、誰かが作った不思議の世界では暮らせない。
でも、この日常が奇妙な世界にちょっとだけ、しかし確実にスライドしていくような話は大好きです。
もちろん、その法螺話の語り手が相当うまい人じゃないといやですが。
そんなわけで、
表紙の内田善美のイラストに釣られて「内田善美コレクション」のつもり、つまり鑑賞用に買ったこの本ですが、読んでみたらおもしろいのなんのって。
現実と非現実、それぞれの色が絶妙なグラデーションでつながっていて、読者はその境界線を見失い、気づいたときにはあちら側、という具合です。
訳者もあとがきで
「フィニイは、たんに戦慄的なSFスリラーが書きたかったわけでも、巧妙で独創的な犯罪小説が書きたかったのでもなく、実は、ほかのものと全くちがうもの、異質なものが書きたかったのではないか。日常性と切り離された話が、この世にありそうもない話が、要するに変わった話が書きたかったのではないか」と言っています。

/「ゲイルズバーグの春を愛す」ジャック・フィニイ
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