快読日記

日々の読書記録

「ルポ ゴミ屋敷に棲む人々 孤立死を呼ぶ「セルフ・ネグレクト」の実態」岸 恵美子

2012年09月04日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《9/2読了 幻冬舎新書 2012年刊 【ノンフィクション】 きし・えみこ(1960~)》

最近報道を見ませんよね、ゴミ屋敷。
減っているのか、それとも日常になっているのか。
おそらく後者でしょう。

筆者は、看護師・保健師という立場からゴミ屋敷の問題に関わり、孤立死につながる彼らの行為を「セルフ・ネグレクト」と呼んでいます。
自己を放置・放任するという意味で、積極的に傷つける自己虐待とは異なるそうです。
食事・介護・人とのつながり一切をも拒否するその姿は、緩やかな自殺とも言えます。

平成18年、23区内での孤立死は3395件、毎日10人前後が孤立死している計算になるそうです。
本書では約15人におよぶ実例が紹介されています。
彼らのプライドを傷つけないように、何度拒まれても手をさしのべる、そういう仕事(ボランティアも多い)をしている人たちには頭が下がります。
でも、この実例紹介がもっと詳しかったらよかったかなあ。
生い立ちから知りたい。
この報告書みたいな描かれ方には物足りなさを感じました。

しかし、屋敷主たちの心の奧が知りたい、これまでの人生の道のりが知りたい、分析してほしいという(わたしみたいな)興味は、敢えて言えば“文学的興味”、悪く言えば“野次馬的興味”に過ぎないので、
実際に彼らを助ける活動をしている人たちに「ふざけるな」と怒られそうですね。
すみません。

わたしは、ゴミ屋敷主たちの心の問題は筆者が言う「セルフ・ネグレクト」では説明が付かないと思っています。
一度、テレビで見た屋敷の主が「これはゴミじゃないんだ」と弱々しく言うのを見たとき、
わたしには彼が「自分はゴミじゃないんだ」と訴えているように聞こえたからです。

/「ルポ ゴミ屋敷に棲む人々 孤立死を呼ぶ「セルフ・ネグレクト」の実態」岸恵美子
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