PV
Album ver.
夏はラブソングがよく似合う。それは誰もが夏の長い休みに出逢いを期待し、あるいはその別れを経験するから。ボクのようなオッサンになっても夏は小難しい歌を聞くよりラブソングのほうが良いなぁとやっぱり思うわけです。そこで今回はPet Shop Boysのアルバム"Introspective"(1988)から"Domino Dancing"を取り上げてみました。ラテンミュージックだから夏というのはちょっと安易かなとは思いましたが、まあ歌詞もPVも夏っぽいということで。特に
"I hear the thunder crashing, the sky is dark
and now a storm is breaking within my heart"
という一節がベタだけど好きですねぇ。ちなみに歌詞の内容は浮気性な彼女に愛想を尽かす男性の心情を描いたものと言われています。でも愛想尽かすというとSteely Danの"Black Cow"みたいに男性側が主導権を握ってるような感じがしますが、この曲の場合はむしろ女性に弄ばれている情けない男のイメージが強いんですよね。まあ"Domino Dancing"というサビとPVの影響も多分にあるんでしょうけど。
アルバム"Introspective"(1988)は全曲リミックスという特殊な作りで、ハードなダンスミュージック志向のイギリスでは受け入れられたわけですが、日本だと前二作("Please"、"Actually")とのギャップに正直驚かされた感はありました。何せ50分近い長さのアルバムなのに6曲しか入っていない(しかもその内2曲は他人のカヴァー)のは80年代の日本のポップミュージックから見ればかなり異質でした。CDが出回り始めて収録時間が増えた頃でしたから、通常なら10曲を越えるのが普通でしょう。ボクなんかまだ小学生でしたから難しいアルバムだなという印象を受けました。実際古参のファンの間では評価の分かれるところで、ダンス一辺倒のアルバムであまり面白くないという人もいるようです。ボクは逆にアイドルデュオ的な扱いを受けていたPSBが独自性を発揮していくことになったアルバムなんじゃないかと思っています。全曲リミックス集を成し遂げた自信に加え、アルバムにはパッツィ・ケンジット(リアム・ギャラガーとも結婚したお騒がせな人。リーサルウェポン2ではメル・ギブソンの彼女役なんかもやっていました)が在籍していたEighth Wonderに提供した"I'm Not Scared"のセルフカヴァーも入っており、メロディメイカーとしての自信も窺わせます。実際"I'm Not Scared"はEighth Wonderにとってイギリスで最も売れた曲となりましたし、またDusty Springfieldのアルバム"Reputation"のプロデュースへとつながってもいくわけです。このアルバムの成功がなければ次作"Behaviour"のようなある意味前衛的なアルバムは作れなかったかもしれません。
Eight Wonder "I´m not scared" 日本だと"Stay With Me"や"Cross My Heart"のほうが有名だったかもしれません