(千貫森展望台から安達太良山)
2008年に福島県福島市と合併した旧飯野町に千貫森(せんがんもり 462.3)という山がある。綺麗な円錐形をしたその山は遠くから見ると綺麗な三角形をしており、古代のピラミッドであるという説もある。またその特徴的な形からUFOの基地であるとも言われ、旧飯野町もUFOの飛来する山として観光PRを行ってきた。その千貫森の北には旧飯野町の最高峰であった天井山(てんじょうやま、てんじょうさん 532.2)があり、千貫森とともに軽いハイキングの対象として親しまれてきた。以前からこの二つの山の存在は知っていたのだが、詳しいアプローチが不明でなかなか訪れることができないでいた。ところが福島市が発行している「こでらんに博」というパンフレットに二つの山をつなぐハイキングコースが紹介され、バスで容易にアプローチすることができるということがわかった。千貫森にはカタクリの花も咲くということなので、花の咲く時期を見計らって出掛けることにした。
福島市の春の観光地といえば、花見山と福島競馬。福島駅東口のバスターミナルもその二つに向かう路線は長蛇の列を作っていた。それに比べ、ボクが乗る川俣高校行きのバスにはボク以外の乗客は一人もいない。福島県人の山歩きは殆どが自家用車で登山口まで行くというスタイルであり、ボクのようにバスでアプローチする人は少ない。そのため、この山歩きには便利な川俣高校行きも学生や地元の人以外は使う人がいないらしい。バスは福島市の市街地を抜け、かつてお城があったという県庁近くの大仏橋を渡ると、花見山で有名な渡利地区に入る。小説「山椒大夫」の舞台とも言われる弁天山を過ぎると、阿武隈川を眼下に望む細い道を進む。国道114号に合流するといよいよ山の中に入ってきたという雰囲気となる。やがて車窓から千貫森らしき緩やかな三角形をした山が望めるようになる頃、UFOの里バス停に到着する。大きな看板脇の車道を上がるとまだ咲き残る桜の向こうに千貫森の頂上部が望める。
(UFOの里バス停付近)
(千貫森を見上げる)
意外と民家が立ち並ぶ車道を上がっていくと、道が大きくカーヴする所で宇宙人の出迎えを受ける。うむ、グレイタイプだね。前方に桜並木が見えてくると右手に見晴らしの良い駐車場がある。天気が良いので、ザックを下ろして上着を脱ぐ。駐車場からは右手に白い雪を戴く安達太良山、左手には手前に木幡山、その直ぐ左奥には口太山、そして最奥には薄っすらと移ヶ岳が見えている。
(宇宙人とのファーストコンタクト)
(駐車場)
(左から口太山、木幡山、移ヶ岳)
(安達太良山)
(駐車場からのパノラマ)
(中腹には桜が多い)
桜並木を抜けるとUFOふれあい館とUFO物産館が建つUFOの里に着く。ここにも駐車場があるので、下には置かないのだろう。物産館の脇も眺めが良く、安達太良山の全体像がよく見える。手前の立子山地区が箱庭のようである。道路向かいのふれあい館の脇にはカタクリ自生地の道標も立っているが、先ずは千貫森に登るとしよう。UFOふれあい館向かいの石段が登山口で、宇宙人メイラの像が迎えてくれる。石段を登ると整備された登山道が続く。傾斜の急な山なので、どうしても土留めの木段は多くなってしまう。ただステップは低めに付けられているので、ゆっくりと登ればそれほどきつくは感じないだろう。まだ冬枯れの様相を見せる雑木林の道をジグザグに登っていく。時折現れる宇宙人像には山頂までの距離が書かれている。途中展望台への林道らしき立派な道が現れるが、あとで下りのときに寄ることにしよう。
(UFOふれあい館)
(UFO物産館から)
(メイラ この石段からスタート)
(セラ)
(登山道の様子 山全体がほぼ雑木林である)
(デカメダ)
(チーミー 彼?は火星人風だ)
(ゴモラ ウルトラマンでこんな名前の怪獣がいたような…)
(カメレホー)
(デカタン ロボット風 R2-C2か?)
モリタン像を過ぎると簡易舗装された道となる。コンクリート製の展望台が見えてくれば、山頂はすぐそこだ。千貫森山頂ではユータンの可愛い像が出迎えてくれる。展望台と思ったものはコンタクトデッキだという。よし、ボクもコンタクトデッキに上ってチャネリングでもしてみるか。デッキに上がると東西南北に山名板が付けられている。まあ実際は展望台という趣旨なのだろう。但しかなり樹木が伸びてしまって展望が得られるのはごく一部に限られる。これではチャネリングも難しいのでは?東の方角には枝越しに女神山が見える。名前の割には無骨な山だ。背後には小さく霊山も見える。西側は安達太良山と吾妻山が見えるのだが、枝が掛かって、こちらもすっきりとは見えない。遠くからはっきりと分かるほど円錐形の山なので、もう少し山頂の木を整理すれば、もっと展望は良くなるのだろう。
(ユータン 背後はコンタクトデッキ そういえばモリタンを忘れた…)
(三角点 後は宇宙人とのコンタクト用か?)
(女神山)
(吾妻山)
(安達太良山)
下山は先ほど見掛けた展望台へと寄ってみる。林道のような広い道を螺旋を描くように下っていく。少し下った所でコンクリート製の展望台が見えてきた。展望台からは西側に大展望が広がる。雪を被った安達太良山・吾妻山に、遠くは蔵王の山までが見えている。正直山頂よりも良い景色だ。
(中腹の展望台)
(吾妻山)
(展望台からのパノラマ)
展望台分岐から往路の山道を下り、UFOふれあい館へと戻ってきた。今度はふれあい館への裏手に続くカタクリ群生地へと進む。千貫森の西側を緩やかにカーヴする道が心地良い。桜並木の道からは安達太良山・吾妻山の眺めも得られる。この辺りはまだ観光客の姿も多い。桜並木を抜けると八重桜の若木が植えられた林になっている。傍らにはカタクリについての看板も立っている。地形図では道はここまでだが、実際には更に先の尾根に達する辺りまで中腹を貫く道が付いている。八重桜の林からの取り付きはやや分かりにくいものの、少し進めばロープの張られた山道となる。どこにカタクリの群生地があるのだろうと思っていると、登山道脇に点々とカタクリの花が咲いているのに気付く。新潟の山などで見られる密集した群生地とは異なり、疎らに、しかし広い群生地となっていたのだ。先週は山開きだったので、もしかするとその辺りの時期のほうが花が多かったのかもしれない。
(カタクリ群生地を示す道標 UFOが載っているのはデフォルト)
(緩やかなカーヴ 良い道だ)
(安達太良山と吾妻山)
(桜並木)
(八重桜の幼木)
(またも安達太良山)
(群生地のカタクリ)
カタクリの花を楽しみつつ進むと道標が見えてきた。一方はカタクリ群生地、他方はUFO物産館を示している。そして道標に示されていない方角に1本道が付いている。コンパスを持っていないのでよく分からないが、どうやらこの道が天井山方面への尾根道らしい。ディジタル地形図には送電線の記載はないが、紙の地形図には近くに記載があるので、取りあえずそれを目指していく。雑木林に切り開かれた緩やかな尾根道はとても心地良い。奥武蔵の低山ではお目に掛かれない光景である。緩々と登ると正面に送電鉄塔が見えてきた。この道で間違いないようだ。鉄塔下へ上がると安達太良山の眺めが得られる。吾妻山よりも低いのだが、とかく存在感のある山だ。西側からも鉄塔管理道が上がってきていて、この道もよく整備されている。エスケープに使えそうだ。振り返れば千貫森が大きい。地形図によるとここは406のピークに当たるようだ。
(右に見える踏み跡が天井山への縦走路)
(送電鉄塔 これを目印に歩こう)
(鉄塔下から安達太良山)
(千貫森を振り返る)
鉄塔のピークから鞍部を乗り越す車道までは緩やかなアップダウンが続く。この道が実に良い。大半は明るい落葉樹の林で、時折背の高い松林が現れる。杉・檜は見当たらない。今は冬枯れの道だが、これから新緑そして紅葉の頃が一番美しい道となるだろう。尾根の末端は民家の敷地となっているらしく、その手前で車道に下り立つ。登り口には確りと道標が立っていた。向かいは谷になっていて、ここからも木幡山と口太山の眺めが得られる。のんびりするに良い所だが、意外とクルマの交通量が多い。ダンプが通るのだが、この先は何があるのだろう?
(雑木林の尾根道)
(車道出合から 手前右が木幡山 左奥が口太山)
さて天井山への登り口だが、実はどの辺りにあるのか、この時点では全く分かっていなかった。奥武蔵辺りだととりあえず向かいの尾根に取り付きがあるので、ドロノ木と書かれた集落を探ってみる。広い砂利道を進んでいくと民家が見えてきた。山側は相変わらず急斜面で尾根に取り付けそうな所はない。うーん、これは戻るしかなさそうだ。おそらく峠である車道を越えた先に登山口があるのだろう。車道に戻り、峠を越えると車道の右側に桜の植えられた一画がある。峠の上から気になっていた所ではある。
桜の植えられた一画へ着くと天井山登山道入口と書かれた道標が設置されていた。
(ドロノ木集落から千貫森を望む)
(天井山登山口に咲く桜)
登山道は沢地形を利用した比較的緩やかな所を登っていく。登り始めは明るい雑木林となっているが、すぐに暗い杉林へと変わる。千貫森の尾根とは随分と対照的だ。傾斜が少し増した辺りで沢の中を進むようになる。春先なので水量が少ないのが幸いだ。道が左に曲がると更に傾斜が増す。意図的にゆっくりと歩いていると、ふとカタクリの花が咲いているのに気が付いた。薄暗い杉林で、かつ沢沿いの湿った所なので、カタクリの生育には都合が良いのかもしれない。やがてカタクリも無くなると「宇宙人の落しもの(いぼ石)」と書かれた看板を見かける。そういえば「こでらんに博」のパンフレットには色々見所が書かれていたことを思い出した。看板の指す方向へ目をやるとなるほど疣の付いた岩がある。これ以外にも見所があったはずなのだが、他には気付かなかった。
(沢沿いの登山道)
(ここもカタクリが咲く)
(いぼ石)
沢沿いの道を離れ、雑木林となった広い斜面へと出るとようやく尾根へと上がる。490のピークへはかなりの藪道となっているようだ。他方で510のピークへの縦走路はよく整備されている。この辺りの山は雑木林となっている所はあまり人の手が入っていないらしく、大半は藪になっている。510のピークへは雑木林の道を進む。かつてはいくらか見晴らしがあったらしいが、現在は全くと言ってよいほどない。標石のある510のピークを越えれば天井山も近い。松の木が多いせいか、道が薄暗いのが少し残念だ。
(雑木林の尾根に出る 薄暗いのは天気が悪くなってきたせいもある)
(510のピークの標石)
天井山へやや急な道を登ると正面が明るくなってきた。するとここで中高年のご夫婦と擦れ違った。今日山中で人に会うのはこれが初めてだ。おそらく登山口に置かれていたクルマで来たのだろう。樹林が途切れると広い天井山の頂上へと出る。牧草地として使われているのか、広い藪になっている。クルマが通れるほどの広い切り開きを進むと天井山の看板が設置されている。看板には「福島盆地、吾妻、安達太良、蔵王、那須連峰」などの山が望めるという。しかし頂上からは吾妻山・安達太良山と蔵王は望めるが、樹林で福島盆地は到底望めない。「頂上から山裾に広がる草地」とも書かれているので、どこか別に展望地があるのだろう。確かに広々とした草地の頂上ではあるのだが、ベンチなどがないので、あまりのんびりと休憩する気にはならなかった。
(天井山頂上)
(頂上から安達太良山と吾妻山)
(頂上のパノラマ)
下山ルートは山頂から西にある電波塔への道を採ることにした。クルマが通れそうな広い道を下っていくと電波塔のピークが見えてきた。意外と高い所にある。鞍部からは千貫森の尖った山頂部が見える。こちらのほうが標高が高いのだなと改めて実感する。電波塔へと近づくと今度は木幡山や口太山も見えてきた。口太山の左奥に見えるのは日山だろうか。電波塔の建物を回り込む。するとそこには今日一番の大展望が待っていた。広めの駐車スペースの前には草地が広がる斜面となっていて、視界を遮るものは何も無い。左手にはちょこんと頭を覗かせる千貫森、そこから右に見ていけば白雪を戴く安達太良、吾妻、蔵王の峰々が連ねる。それらの手前には山頂の看板にも書かれていたように福島盆地が広がっている。駐車スペースには腰を掛けるのによさそうな車止めが置かれていたので、のんびりとデコポンを食べて休憩することにした。
(電波塔のピークを望む)
(鞍部から 右は千貫森)
(木幡山・口太山など)
(駐車スペースから 安達太良山と吾妻山)
(千貫森)
(安達太良山)
(吾妻山)
(蔵王方面)
(電波塔のピークからのパノラマ)
電波塔のピークから先は舗装された林道が延びている。草地の中を下る道は広々として気持ちが良い。436の図根点が描かれた辺りから仲塚峠と書かれた辺りへと下る山道は林道が開削中であった。林道が複雑に分岐する産業廃棄物処理場を過ぎると峠の作と呼ばれる集落に出る。棚田の向こうには千貫森が山頂部を見せている。民家には小さなお孫さんを連れた御婆さんが日向ぼっこをしている。のどかな風景を楽しみつつ、天井山の登山口へと近づくと、前方からやって来たクルマが停まった。車内から小母さんが駒桜はどこですか?と聞いてくる。駒桜?さっぱりわからない。結局場所がわからずクルマは元の道を戻っていった。後で調べてみたら秋山の駒桜というのが近くにあったらしい。熊谷ナンバーだったので、おそらく埼玉から来ていたのだろう。力になれなくて申し訳ない気持ちで一杯になった。
(草地の林道を下る)
(峠の作 棚田の向こうには千貫森)
(車道出合近くの沼から)
峠を越えたら、再び千貫森へと続く尾根に入る。車道を下るよりも尾根道を歩いたほうが気分が良い。明るい冬枯れを道をゆっくりと歩き、分岐点へと戻ってきた。今度は千貫森の東側を巻いてUFOふれあい館へと戻る。カタクリの咲く道を抜けると茅葺屋根の東屋が見えてくる。東屋の前にはクルマが一台通れる位の林道が延びている。林道脇の敷地はUFOの里が管理しているのか、桜の木が点々植えられ、花が咲き残っている。黄色い連翹の花が咲く辺りには、青木小学校が植樹したオトメザクラの幼木が花を付けている。福島市の市街地ではだいぶ散ってしまった桜も飯野町では咲き残っている所が多い。
(尾根道)
(分岐から東に入ってもカタクリはある)
(東屋前から木幡山などを望む)
(連翹と桜)
(オトメザクラの植樹地)
(林道からの眺め)
(桜が咲き残る)
(物産館の駐車場上から)
林道が舗装へと変わるとUFOふれあい館の駐車場へと下り立つ。お腹が空いたので、物産館で昼飯でも食べよう。物産館にはお土産と食堂のスペースがあるが、それほど広い訳ではない。週末なのでお客さんも多い。飛魚ラーメンという字に惹かれ、お土産のレジで注文する。ちょっと変わったシステムだ。ラーメンを待つ間、物産館の展望スペースに出てみる。安達太良山の眺めが良い。ふとバス停の時刻表が目に入ったので、時間を確かめてみるとあと15分ほどしかない。出来上がったラーメンを急いで啜り込み、バスの到着予定時刻5分前に物産館を出る。車道を駆け下り、バス停へと着くと、程なくしてバスがやって来た。これに遅れたら2時間待ちになるところであった。帰りのバスは意外と混み合っていて、何とか一つ席を確保できた。窓を開け、涼風に当たりながら、阿武隈川の爽快な流れを眺めつつ、帰路に着いた。
(物産館の展望スペースから安達太良山)
DATA:
福島駅東口(JRバス東北)UFOの里9:34~9:53UFOふれあい館~10:10千貫森~10:21千貫森展望台~
10:30UFOふれあい館(西回り)~10:46天井山分岐~11:06車道出合~11:22天井山登山口~11:54天井山~
12:08電波塔ピーク12:19~12:45車道出合~13:10天井山分岐~13:30UFOふれあい館(東回り)
~13:53UFOの里(JRバス東北)福島駅東口
JRバス東北 川俣高校行き 福島駅東口~UFOの里 670円
トイレ UFOの里物産館近く
地形図 月舘
2008年に福島県福島市と合併した旧飯野町に千貫森(せんがんもり 462.3)という山がある。綺麗な円錐形をしたその山は遠くから見ると綺麗な三角形をしており、古代のピラミッドであるという説もある。またその特徴的な形からUFOの基地であるとも言われ、旧飯野町もUFOの飛来する山として観光PRを行ってきた。その千貫森の北には旧飯野町の最高峰であった天井山(てんじょうやま、てんじょうさん 532.2)があり、千貫森とともに軽いハイキングの対象として親しまれてきた。以前からこの二つの山の存在は知っていたのだが、詳しいアプローチが不明でなかなか訪れることができないでいた。ところが福島市が発行している「こでらんに博」というパンフレットに二つの山をつなぐハイキングコースが紹介され、バスで容易にアプローチすることができるということがわかった。千貫森にはカタクリの花も咲くということなので、花の咲く時期を見計らって出掛けることにした。
福島市の春の観光地といえば、花見山と福島競馬。福島駅東口のバスターミナルもその二つに向かう路線は長蛇の列を作っていた。それに比べ、ボクが乗る川俣高校行きのバスにはボク以外の乗客は一人もいない。福島県人の山歩きは殆どが自家用車で登山口まで行くというスタイルであり、ボクのようにバスでアプローチする人は少ない。そのため、この山歩きには便利な川俣高校行きも学生や地元の人以外は使う人がいないらしい。バスは福島市の市街地を抜け、かつてお城があったという県庁近くの大仏橋を渡ると、花見山で有名な渡利地区に入る。小説「山椒大夫」の舞台とも言われる弁天山を過ぎると、阿武隈川を眼下に望む細い道を進む。国道114号に合流するといよいよ山の中に入ってきたという雰囲気となる。やがて車窓から千貫森らしき緩やかな三角形をした山が望めるようになる頃、UFOの里バス停に到着する。大きな看板脇の車道を上がるとまだ咲き残る桜の向こうに千貫森の頂上部が望める。
(UFOの里バス停付近)
(千貫森を見上げる)
意外と民家が立ち並ぶ車道を上がっていくと、道が大きくカーヴする所で宇宙人の出迎えを受ける。うむ、グレイタイプだね。前方に桜並木が見えてくると右手に見晴らしの良い駐車場がある。天気が良いので、ザックを下ろして上着を脱ぐ。駐車場からは右手に白い雪を戴く安達太良山、左手には手前に木幡山、その直ぐ左奥には口太山、そして最奥には薄っすらと移ヶ岳が見えている。
(宇宙人とのファーストコンタクト)
(駐車場)
(左から口太山、木幡山、移ヶ岳)
(安達太良山)
(駐車場からのパノラマ)
(中腹には桜が多い)
桜並木を抜けるとUFOふれあい館とUFO物産館が建つUFOの里に着く。ここにも駐車場があるので、下には置かないのだろう。物産館の脇も眺めが良く、安達太良山の全体像がよく見える。手前の立子山地区が箱庭のようである。道路向かいのふれあい館の脇にはカタクリ自生地の道標も立っているが、先ずは千貫森に登るとしよう。UFOふれあい館向かいの石段が登山口で、宇宙人メイラの像が迎えてくれる。石段を登ると整備された登山道が続く。傾斜の急な山なので、どうしても土留めの木段は多くなってしまう。ただステップは低めに付けられているので、ゆっくりと登ればそれほどきつくは感じないだろう。まだ冬枯れの様相を見せる雑木林の道をジグザグに登っていく。時折現れる宇宙人像には山頂までの距離が書かれている。途中展望台への林道らしき立派な道が現れるが、あとで下りのときに寄ることにしよう。
(UFOふれあい館)
(UFO物産館から)
(メイラ この石段からスタート)
(セラ)
(登山道の様子 山全体がほぼ雑木林である)
(デカメダ)
(チーミー 彼?は火星人風だ)
(ゴモラ ウルトラマンでこんな名前の怪獣がいたような…)
(カメレホー)
(デカタン ロボット風 R2-C2か?)
モリタン像を過ぎると簡易舗装された道となる。コンクリート製の展望台が見えてくれば、山頂はすぐそこだ。千貫森山頂ではユータンの可愛い像が出迎えてくれる。展望台と思ったものはコンタクトデッキだという。よし、ボクもコンタクトデッキに上ってチャネリングでもしてみるか。デッキに上がると東西南北に山名板が付けられている。まあ実際は展望台という趣旨なのだろう。但しかなり樹木が伸びてしまって展望が得られるのはごく一部に限られる。これではチャネリングも難しいのでは?東の方角には枝越しに女神山が見える。名前の割には無骨な山だ。背後には小さく霊山も見える。西側は安達太良山と吾妻山が見えるのだが、枝が掛かって、こちらもすっきりとは見えない。遠くからはっきりと分かるほど円錐形の山なので、もう少し山頂の木を整理すれば、もっと展望は良くなるのだろう。
(ユータン 背後はコンタクトデッキ そういえばモリタンを忘れた…)
(三角点 後は宇宙人とのコンタクト用か?)
(女神山)
(吾妻山)
(安達太良山)
下山は先ほど見掛けた展望台へと寄ってみる。林道のような広い道を螺旋を描くように下っていく。少し下った所でコンクリート製の展望台が見えてきた。展望台からは西側に大展望が広がる。雪を被った安達太良山・吾妻山に、遠くは蔵王の山までが見えている。正直山頂よりも良い景色だ。
(中腹の展望台)
(吾妻山)
(展望台からのパノラマ)
展望台分岐から往路の山道を下り、UFOふれあい館へと戻ってきた。今度はふれあい館への裏手に続くカタクリ群生地へと進む。千貫森の西側を緩やかにカーヴする道が心地良い。桜並木の道からは安達太良山・吾妻山の眺めも得られる。この辺りはまだ観光客の姿も多い。桜並木を抜けると八重桜の若木が植えられた林になっている。傍らにはカタクリについての看板も立っている。地形図では道はここまでだが、実際には更に先の尾根に達する辺りまで中腹を貫く道が付いている。八重桜の林からの取り付きはやや分かりにくいものの、少し進めばロープの張られた山道となる。どこにカタクリの群生地があるのだろうと思っていると、登山道脇に点々とカタクリの花が咲いているのに気付く。新潟の山などで見られる密集した群生地とは異なり、疎らに、しかし広い群生地となっていたのだ。先週は山開きだったので、もしかするとその辺りの時期のほうが花が多かったのかもしれない。
(カタクリ群生地を示す道標 UFOが載っているのはデフォルト)
(緩やかなカーヴ 良い道だ)
(安達太良山と吾妻山)
(桜並木)
(八重桜の幼木)
(またも安達太良山)
(群生地のカタクリ)
カタクリの花を楽しみつつ進むと道標が見えてきた。一方はカタクリ群生地、他方はUFO物産館を示している。そして道標に示されていない方角に1本道が付いている。コンパスを持っていないのでよく分からないが、どうやらこの道が天井山方面への尾根道らしい。ディジタル地形図には送電線の記載はないが、紙の地形図には近くに記載があるので、取りあえずそれを目指していく。雑木林に切り開かれた緩やかな尾根道はとても心地良い。奥武蔵の低山ではお目に掛かれない光景である。緩々と登ると正面に送電鉄塔が見えてきた。この道で間違いないようだ。鉄塔下へ上がると安達太良山の眺めが得られる。吾妻山よりも低いのだが、とかく存在感のある山だ。西側からも鉄塔管理道が上がってきていて、この道もよく整備されている。エスケープに使えそうだ。振り返れば千貫森が大きい。地形図によるとここは406のピークに当たるようだ。
(右に見える踏み跡が天井山への縦走路)
(送電鉄塔 これを目印に歩こう)
(鉄塔下から安達太良山)
(千貫森を振り返る)
鉄塔のピークから鞍部を乗り越す車道までは緩やかなアップダウンが続く。この道が実に良い。大半は明るい落葉樹の林で、時折背の高い松林が現れる。杉・檜は見当たらない。今は冬枯れの道だが、これから新緑そして紅葉の頃が一番美しい道となるだろう。尾根の末端は民家の敷地となっているらしく、その手前で車道に下り立つ。登り口には確りと道標が立っていた。向かいは谷になっていて、ここからも木幡山と口太山の眺めが得られる。のんびりするに良い所だが、意外とクルマの交通量が多い。ダンプが通るのだが、この先は何があるのだろう?
(雑木林の尾根道)
(車道出合から 手前右が木幡山 左奥が口太山)
さて天井山への登り口だが、実はどの辺りにあるのか、この時点では全く分かっていなかった。奥武蔵辺りだととりあえず向かいの尾根に取り付きがあるので、ドロノ木と書かれた集落を探ってみる。広い砂利道を進んでいくと民家が見えてきた。山側は相変わらず急斜面で尾根に取り付けそうな所はない。うーん、これは戻るしかなさそうだ。おそらく峠である車道を越えた先に登山口があるのだろう。車道に戻り、峠を越えると車道の右側に桜の植えられた一画がある。峠の上から気になっていた所ではある。
桜の植えられた一画へ着くと天井山登山道入口と書かれた道標が設置されていた。
(ドロノ木集落から千貫森を望む)
(天井山登山口に咲く桜)
登山道は沢地形を利用した比較的緩やかな所を登っていく。登り始めは明るい雑木林となっているが、すぐに暗い杉林へと変わる。千貫森の尾根とは随分と対照的だ。傾斜が少し増した辺りで沢の中を進むようになる。春先なので水量が少ないのが幸いだ。道が左に曲がると更に傾斜が増す。意図的にゆっくりと歩いていると、ふとカタクリの花が咲いているのに気が付いた。薄暗い杉林で、かつ沢沿いの湿った所なので、カタクリの生育には都合が良いのかもしれない。やがてカタクリも無くなると「宇宙人の落しもの(いぼ石)」と書かれた看板を見かける。そういえば「こでらんに博」のパンフレットには色々見所が書かれていたことを思い出した。看板の指す方向へ目をやるとなるほど疣の付いた岩がある。これ以外にも見所があったはずなのだが、他には気付かなかった。
(沢沿いの登山道)
(ここもカタクリが咲く)
(いぼ石)
沢沿いの道を離れ、雑木林となった広い斜面へと出るとようやく尾根へと上がる。490のピークへはかなりの藪道となっているようだ。他方で510のピークへの縦走路はよく整備されている。この辺りの山は雑木林となっている所はあまり人の手が入っていないらしく、大半は藪になっている。510のピークへは雑木林の道を進む。かつてはいくらか見晴らしがあったらしいが、現在は全くと言ってよいほどない。標石のある510のピークを越えれば天井山も近い。松の木が多いせいか、道が薄暗いのが少し残念だ。
(雑木林の尾根に出る 薄暗いのは天気が悪くなってきたせいもある)
(510のピークの標石)
天井山へやや急な道を登ると正面が明るくなってきた。するとここで中高年のご夫婦と擦れ違った。今日山中で人に会うのはこれが初めてだ。おそらく登山口に置かれていたクルマで来たのだろう。樹林が途切れると広い天井山の頂上へと出る。牧草地として使われているのか、広い藪になっている。クルマが通れるほどの広い切り開きを進むと天井山の看板が設置されている。看板には「福島盆地、吾妻、安達太良、蔵王、那須連峰」などの山が望めるという。しかし頂上からは吾妻山・安達太良山と蔵王は望めるが、樹林で福島盆地は到底望めない。「頂上から山裾に広がる草地」とも書かれているので、どこか別に展望地があるのだろう。確かに広々とした草地の頂上ではあるのだが、ベンチなどがないので、あまりのんびりと休憩する気にはならなかった。
(天井山頂上)
(頂上から安達太良山と吾妻山)
(頂上のパノラマ)
下山ルートは山頂から西にある電波塔への道を採ることにした。クルマが通れそうな広い道を下っていくと電波塔のピークが見えてきた。意外と高い所にある。鞍部からは千貫森の尖った山頂部が見える。こちらのほうが標高が高いのだなと改めて実感する。電波塔へと近づくと今度は木幡山や口太山も見えてきた。口太山の左奥に見えるのは日山だろうか。電波塔の建物を回り込む。するとそこには今日一番の大展望が待っていた。広めの駐車スペースの前には草地が広がる斜面となっていて、視界を遮るものは何も無い。左手にはちょこんと頭を覗かせる千貫森、そこから右に見ていけば白雪を戴く安達太良、吾妻、蔵王の峰々が連ねる。それらの手前には山頂の看板にも書かれていたように福島盆地が広がっている。駐車スペースには腰を掛けるのによさそうな車止めが置かれていたので、のんびりとデコポンを食べて休憩することにした。
(電波塔のピークを望む)
(鞍部から 右は千貫森)
(木幡山・口太山など)
(駐車スペースから 安達太良山と吾妻山)
(千貫森)
(安達太良山)
(吾妻山)
(蔵王方面)
(電波塔のピークからのパノラマ)
電波塔のピークから先は舗装された林道が延びている。草地の中を下る道は広々として気持ちが良い。436の図根点が描かれた辺りから仲塚峠と書かれた辺りへと下る山道は林道が開削中であった。林道が複雑に分岐する産業廃棄物処理場を過ぎると峠の作と呼ばれる集落に出る。棚田の向こうには千貫森が山頂部を見せている。民家には小さなお孫さんを連れた御婆さんが日向ぼっこをしている。のどかな風景を楽しみつつ、天井山の登山口へと近づくと、前方からやって来たクルマが停まった。車内から小母さんが駒桜はどこですか?と聞いてくる。駒桜?さっぱりわからない。結局場所がわからずクルマは元の道を戻っていった。後で調べてみたら秋山の駒桜というのが近くにあったらしい。熊谷ナンバーだったので、おそらく埼玉から来ていたのだろう。力になれなくて申し訳ない気持ちで一杯になった。
(草地の林道を下る)
(峠の作 棚田の向こうには千貫森)
(車道出合近くの沼から)
峠を越えたら、再び千貫森へと続く尾根に入る。車道を下るよりも尾根道を歩いたほうが気分が良い。明るい冬枯れを道をゆっくりと歩き、分岐点へと戻ってきた。今度は千貫森の東側を巻いてUFOふれあい館へと戻る。カタクリの咲く道を抜けると茅葺屋根の東屋が見えてくる。東屋の前にはクルマが一台通れる位の林道が延びている。林道脇の敷地はUFOの里が管理しているのか、桜の木が点々植えられ、花が咲き残っている。黄色い連翹の花が咲く辺りには、青木小学校が植樹したオトメザクラの幼木が花を付けている。福島市の市街地ではだいぶ散ってしまった桜も飯野町では咲き残っている所が多い。
(尾根道)
(分岐から東に入ってもカタクリはある)
(東屋前から木幡山などを望む)
(連翹と桜)
(オトメザクラの植樹地)
(林道からの眺め)
(桜が咲き残る)
(物産館の駐車場上から)
林道が舗装へと変わるとUFOふれあい館の駐車場へと下り立つ。お腹が空いたので、物産館で昼飯でも食べよう。物産館にはお土産と食堂のスペースがあるが、それほど広い訳ではない。週末なのでお客さんも多い。飛魚ラーメンという字に惹かれ、お土産のレジで注文する。ちょっと変わったシステムだ。ラーメンを待つ間、物産館の展望スペースに出てみる。安達太良山の眺めが良い。ふとバス停の時刻表が目に入ったので、時間を確かめてみるとあと15分ほどしかない。出来上がったラーメンを急いで啜り込み、バスの到着予定時刻5分前に物産館を出る。車道を駆け下り、バス停へと着くと、程なくしてバスがやって来た。これに遅れたら2時間待ちになるところであった。帰りのバスは意外と混み合っていて、何とか一つ席を確保できた。窓を開け、涼風に当たりながら、阿武隈川の爽快な流れを眺めつつ、帰路に着いた。
(物産館の展望スペースから安達太良山)
DATA:
福島駅東口(JRバス東北)UFOの里9:34~9:53UFOふれあい館~10:10千貫森~10:21千貫森展望台~
10:30UFOふれあい館(西回り)~10:46天井山分岐~11:06車道出合~11:22天井山登山口~11:54天井山~
12:08電波塔ピーク12:19~12:45車道出合~13:10天井山分岐~13:30UFOふれあい館(東回り)
~13:53UFOの里(JRバス東北)福島駅東口
JRバス東北 川俣高校行き 福島駅東口~UFOの里 670円
トイレ UFOの里物産館近く
地形図 月舘