野老の里

奥武蔵をメインに日帰りの山歩きを中心としたブログです

奥武蔵へようこそ 平成23年11月26日 前編 高山不動の滝巡りと八徳・風影の山上集落を訪ねて

2011年11月28日 | 奥武蔵へようこそ
(八徳の集落から大高山・子ノ権現方面を望む)

前坂からスルギ尾根を経て子ノ権現へと入ると駐車場手前から北側に広い展望が得られます。そこから関八州見晴台から日和田山にかけての長大な尾根を眺めると山上に三つの集落があることがわかります。その三つの集落は西から高山・八徳(やっとく)・風影(ふかげ)といい、奥武蔵を歩く人であれば高山と風影の集落は歩いたことのある人が多いと思います。しかし八徳は登山道がなく、車道のみが通り抜ける集落で歩いたことのある人は少ないのではないでしょうか。そこで今回はこちらも山歩きでは訪れる人の多くない高山周辺の三つの滝を巡り、八徳・風影の山上集落を訪ねた後、越上山からスカリ山・深沢山と縦走することにしました。なお、記事を書く関係上、高山周辺の滝巡りから顔振峠までを前編とし、以降は後編として分けることとします。

スタートは西吾野駅から。朝6時半ということもあり、駅を降りたハイカーは私しかいません。駅前の車道を下り、北川に沿って車道を北上します。周囲は殆どが杉や檜の植林ですが、所々に点在する紅葉が目を惹きます。車道が右に分かれる所がエアリアでいうところのパノラマコースの入口。パノラマコースからは本陣山と子ノ権現の眺めが得られ、なかなか良いコース。でも今日はここを見送ります。そのまま車道を進むと間野の住宅地が広がり、クルマ一台が通れるほどの橋が架かっています。ここが萩ノ平茶屋跡を経由する道の登山口で、高山不動へ行くには一番歩きやすい道だと思います。でもここも上がりません。民家が立ち並ぶ中を更に進むと車道が分かれ、大滝を示す道標が立っています。道標に従い大滝方面へ足を進めます。傍を流れる沢は高畑川(高畑入)と呼ばれています。民家も無くなり、変化の乏しい舗装路を進むと目の前に巨大な橋のようなものが見えてきました。武甲鉱業のベルトコンベヤーで、武甲山の石灰岩を日高市にある太平洋セメントの工場まで運んでいます。

(武甲鉱業のベルトコンベヤー)

ベルトコンベヤーを過ぎると道の両側が鬱蒼とした杉の植林となります。2つの砂防ダムを見送り、車道がヘアピンカーヴとなる辺りで登山道へ入ります。ベンチがあるのでここで準備を整えると良いでしょう。よく整備された道を進み、対岸へ渡るとやや傾斜が急になります。しっとりと汗をかき始める頃、大滝方面の分岐に出ます。地形図だと高山不動への尾根道だけが描かれていますが、その南側にある白滝沢へ下りるのが大滝への道です。大滝へ向かって下っていくと水流の音がしてきましたが、滝の姿はなかなか見えません。大きな岩の転がる沢を渡渉すると大滝です。白滝の下段にある滝でなかなか迫力があります。

(大滝)

往路を戻ると途中に山側に道が延びています。ここは近道でそのまま急斜面を這うように上がると庭のような所に出ます。道標があり、先ほどの分岐からの道に合流します。庭のような所を上っていくとまさしく民家の敷地内に出ました。少々落ち着きませんが、ここにも道標があったので道は間違っていないようです。車道に出て道なりに進むと不動の滝を示す道標があります。登山道へ入るとすぐに民家の敷地跡があります。そのまま道標にしたがって敷地跡を進めばよいのですが、その脇の道を進んでも不動の滝との分岐に出ます。ここからは緩やかに登りながら高山不動から離れていきます。ここに寄るのが一番面倒でしょうかね。水流の音がしないのでいつ着くのかと苛々していると「山道」と書かれた道標があります。ここを無視して進むと大きな岩壁が見えてきました。近寄るとポタポタと水が滴り落ちています。不動滝(580)です。落差が大きく全体像がなかなかつかめません。頼りなさげな橋を渡り、急斜面に生えた二本の杉の間を抜けると滝の直下に出られます。

案内板には
「この滝は高山不動尊の修行場であり、昔よりこの滝にて行者さんが修行をする行場であります。古来よりこの滝を子育の滝、大滝様、水が少ないのでミタレの滝と呼ばれてきましたが、お不動様の修行場でありますので不動滝と名づけました。この滝の高さは落口より約二十米位あります。」
と不動滝の由来が書いてあります。

(庭のような芝の広場)


(民家の敷地にお邪魔します ちょっと通過には気が引けますね)


(不動滝)


(下部から縦アングルで)

往路に戻り、先ほどの山道と書かれたほうへ登ってみます。薄い踏み跡を進むと不動滝の上部に出ます。祠と作業小屋があり、大きなモミジが赤く色付いていました。道は更に沢を横切って西へ延びています。ここで地図読みを間違えた私はそのまま西へ行ってしまい15分ほどロスしてしまいました。間違いに気付いて往路を戻り、白滝沢へ下っていくと広い道が延びてきて、沢の向こうに高山不動への道が延びています。沢沿いに広い道を登っていくと急斜面の登山道となります。この辺りはアップダウンが激しくて少々疲れます。
細い沢沿いの道が途切れると白滝(543)です。二段の滝でここも奥武蔵では結構大きいほうだと思います。

(不動滝上部の紅葉)


(白滝)

分岐に戻り高山不動を目指します。驚いたことに登り出しは舗装路です。すぐに低い土留めの木段混じりの登りとなりますが、段差が小さい上九十九折となっていてかなり歩きやすいです。それでも急斜面に付けた道なので結構登らされます。上部に尾根が見えてくると間野・パノラマコースに合流です。道標は高山不動・白滝方面のみが示されていますが、方向が示されていない尾根を上がれば、墓地を経て不動茶屋に出ます。今日は当ブログではまだ高山不動を紹介していないので、お不動様に寄ることにしましょう。

(正面の道が関八州見晴台への近道 右に高山不動 左は白滝)

今まで稼いだ標高が勿体無いくらいに下っていくと大きなイチョウの木が立つ高山不動の境内に出ます。大きなイチョウの木は乳イチョウあるいは子育てイチョウと呼ばれ、気根と呼ばれる枝から垂れ下がった根っこのようなものが乳房のように見えることから名づけられています。本堂へは長い石段があり、しっかりお不動様に試されます(苦笑)。息を切らしつつ石段を登りきれば、巨大な本堂に到着です。傍には東屋とお手洗いが設置されています。高山不動は高貴山常楽院というのが正式な名称で、成田不動・高幡不動とともに関東三大不動と呼ばれています。まあ、高山不動以外にも関東三大不動を名乗るお寺はいくつかありますがね…。

(乳イチョウ)


(気根)


(長い石段 写真だと分かりにくいですね)


(広場の紅葉)


(大きな本堂)

お不動様へお参りを済ませたら、高山不動の奥の院でもある関八州見晴台へと向かいます。東屋裏の登山道を上がると先ほどの墓地経由の近道に合流して休業中の不動茶屋に出ます。ここは落書きが酷いなぁ…。車道を横切り、登山道を上がると丸山と呼ばれる小ピークに出ます。この辺は紅葉が綺麗。一旦車道に出て緩やかに登ると疎林に囲まれた関八州見晴台の山頂が見えてきました。登山道の周辺にはツツジの木が真っ赤に紅葉しています。広い山頂(771)には高山不動の奥の院であることを示すお堂があり、東屋やベンチも置かれています。関八州とは安房・上総(千葉県房総辺り)・上野(群馬県)・下野(栃木県)・武蔵(埼玉県・東京都など)・下総(千葉県北部など)・常陸(茨城県)・相模(神奈川県)を指し、その名の通り北側からは日光男体山などが見え、南側は富士山に奥多摩・丹沢などの山並が見えます。ただ筑波山や房総の山を見ることはできませんでした。



(丸山の紅葉)


(関八州見晴台 奥の院のお堂)


(日光方面)


(富士山)


(武甲山 ちなみに所沢からもこれに近い形で見える)


(中央の二つの山が古御岳と伊豆ヶ岳)




(山頂の紅葉)


(越生方面 この方向に筑波山が見えるはず)


(中央の紅葉した木の上に大高山 左にいって突き出ているのが天覚山 右端はおそらく大岳山)




(関八州見晴台のパノラマ 南側)

人の増えてきた山頂を後にし、東に延びる尾根を進みます。車道に出た辺りが花立松ノ峠。683のピークを巻いて再び車道に出た所に黒山展望台と書かれた道標があります。車道の向こうに登山道が延びているのですが、今日はこのまま車道を下ります。ヘアピンカーヴを描く所が黒山展望台で駐車スペースの上にテラスとベンチがあります。テラスからは赤城山のシルエットが見えます。もう少し空気が澄んでいれば谷川岳も見えるそうです。

(黒山展望台を示す道標)


(黒山展望台のテラス)


(黒山展望台からの眺め 左に赤城山)

展望台を後にしたらそのまま車道を下っていきます。登山道が横切る所が傘杉峠。更に車道を下ると右手に八徳への道が分かれます。しばらくは暗い植林の道ですが、民家が近づくと南側が開けてきます。ここが山上の集落八徳です。明るい南斜面には数軒の民家が建ち、広い畑が広がります。遮るものの無い畑の向こうには大高山から子ノ権現にかけての尾根が連なり、その背後には奥多摩の山々が姿を覗かせます。山はどうしてもピークを目指すものという考えがありますが、私はむしろこういった景色に出会うことを好んでいます。山と里との近さが奥武蔵の魅力なんですよね。





(八徳の景色)

傘杉峠から30分ほど下ると風影方面への分岐に出ます。ここからはまた登山道に戻ります。一部を除けばバイクが通るくらい(え?)フラットな道が続き体力的には歩きやすいほうだと思います。ただ終始暗い植林の中ですし、結構草被っている所もありました。587のピークから派生する尾根を乗り越す辺りで顔振峠への分岐(道標有り)に出ます。直接顔振峠を目指すルートはおそらく風影集落の上部を通るのではないかと思いますが、今日は予定通り風影方面を目指すことにします。歩く人が少ないのかだいぶ荒れた道(今にも落ちそうな橋もある)を進むと明るい民家の敷地に出ます。風影の集落です。道は車道へと変わり、緩やかにアップダウンを繰り返しながら民家の間をすり抜けていきます。八徳が上下に長い集落であったのに対し、風影は横に広がった集落で賑やかな雰囲気です。

(風影への道)


(顔振峠との分岐)






(風影集落)

吾野駅からの登山道と合流し、顔振峠へと向かいます。観光地ということもあってか登山道を行き交う人も多い。暗い樹林帯を抜けていくと左手が大きく開けてきます。風影の集落を一望できるビュースポットです。弁慶と義経が顔振峠を越えたという伝説があり、あまりに景色の美しさに何度も振り返ったことから顔振峠と名づけられたとの話もあります。確かに良い景色です。峠から見る景色よりも美しいかもしれません。峠の手前の開けた所に摩利支天のお堂があるので、そこで休憩を取ることにします。観光客で騒がしい峠よりもここのほうがずっと落ち着けます。

(摩利支天手前からの眺め)


(摩利支天)


(摩利支天からの眺め)

摩利支天から少し登れば顔振峠に到着。ここは先々週来たばかりだから特に感想は無し。ただ久しぶりに富士山が見えました。とりあえず前編はここまで。

(富士山)


(中央は西武建材の鉱山)


(顔振峠の紅葉)


(顔振峠からのパノラマ)


DATA:
西吾野駅6:39~7:33大滝~8:02不動滝~8:24白滝~9:02高山不動~9:35関八州見晴台9:52~10:10花立松ノ峠~
10:25黒山展望台~10:37傘杉峠~11:08八徳(風影分岐)~11:31顔振峠分岐~11:37風影~11:57摩利支天~12:00顔振峠
(以後後編へ)

トイレ:高山不動 顔振峠

地形図 正丸峠
山と高原地図 奥武蔵・秩父 2010年度版 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 今日の一曲 Jack the lad by... | トップ | 奥武蔵へようこそ 平成23年1... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

奥武蔵へようこそ」カテゴリの最新記事