http://www.youtube.com/watch?v=2-tnnbwIYys
http://www.youtube.com/watch?v=IGge928BaS4 Live
今日は当時イエスの問題作とされたアルバム"Tales from Topographic Oceans"(1973 邦題は「海洋地形学の物語」)から
"The Revealing Science of God (Dance of the Dawn)"「神の啓示」を取り上げてみます。
メジャープログレの中でも所謂五大プログレバンドのうち、一番ハマったのはイエスでした。
プログレを本格的に聞くようになったきっかけが"Roundabout"だったというのもありますが、
それ以上に堅苦しくないのが良かったという面もあります。
これがピンクフロイドだと歌詞の世界にどっぷりとハマっていったり、
あるいはキングクリムゾンだったら技術論がどうのこうのという話になっていったり、
信者とも言えるファンからはどうも一見さんお断りな雰囲気が濃厚だったりします。
それに比べるとイエスの場合はバンド自体が何でもありの状況だし、曲もポップで親しみやすい。
まあポップさ具合ならELPやジェネシスもかなりのものかもしれません。
ただELPはやや短命のバンドでしたし、ジェネシスはピーター脱退前後で宗教論争みたいなことになってしまっています。
イエスの場合はヴォーカルが絶対ジョン・アンダーソンじゃなきゃダメって訳でもなく、
おまけに新譜も出るかも、っていう緩さと気長さがバンドだけではなくファンにもあるのが良かったのでしょう。
「海洋地形学の物語」というアルバムは賛否両論ある中で、プログレファンにはどちらかといえば否定的な評価が多いようです。
代表的なところでは冗長だという意見がよく聞かれます。
確かに冗長ですよね。ボクもそう思います。はっきり言ってリック・ウェイクマンは手を抜き過ぎです。
あとドラマーがアラン・ホワイトに変わったのもマイナス要因と捉えられているようです。
ボクは以前"Survival"で書いたようにビル・ブルフォードの脱退は色々な意味でプラスだったんじゃないかと思っています。
イエスのスケールの大きな世界観に合わなかったというだけじゃなく、
ビルのドラミングはキングクリムゾンが志向した即興性のある音楽に合っていたというのが大きな理由です。
イエスは即興性よりもかっちりと構築された音楽が特徴です。
そういえばBS-TBSのSong to Soulという番組で、ヴァンゲリスの「炎のランナー」を紹介したときに、
リック・ウェイクマンがヴァンゲリスにイエスは合わない理由として、
エディ・オフォードのように曲をつなぎ合わせていく編集方法とヴァンゲリスの即興的な音作りとの齟齬を指摘していました。
もしかするとリックもエディ・オフォード流の編集方法が嫌だったのかもしれません。
いずれにせよドラミングが気忙しげなものから通常のロックスタイルに変わり、かつキーボードが手抜きになったおかげで、
ジョン・アンダーソンとスティーヴ・ハウがやりたい放題のやたらスケールの大きな作品となりました。
それがこのアルバムの大きな魅力となっているのではないかと思います。
たいていの懐古趣味なプログレファンというのは70年代はバンドがやりたいことがやれて幸せな時代だった、
というようなことを言う訳ですが、じゃあ「海洋地形学の物語」のようにやりたい放題の作品はどうなのか。
自由な創造性云々言っていても、実際はある程度の自分の好みの範囲に入った音楽しか評価しないというのが実態じゃないのか。
「海洋地形学の物語」に対する否定的な意見というのはプログレファンの保守性をよく表しているのではないでしょうか。
ボクはプログレファンであるかも怪しいだけでなく、そもそもロックファンであるかどうかも怪しいので、
ビル・ブルフォードが脱退しようが、冗長だろうが、このアルバムが好きなのです。
完成度が高いか?と言われれば確かにちょっと頭をかしげます。
でも自己変革はロックが常に是としてきたもののはず。
「危機」から発展してやりたい放題やったらこうなっちゃったんだもの。後は好きか嫌いかっていう話なんじゃないの?
難しい顔して、正座して聞くなんて、本当にバカらしい。
こういうのは面白がって聞いたもん勝ちなんじゃないかと思うんですけれどね。