先月、新潟で道迷いによる死亡事故が報道されていました。この事故に関してはちょっとブログで取り上げるのは憚られるなと思っていたのですが、「地形図の話 ~尾根と谷~」の記事のアクセスが伸びていたので補足説明が必要だと感じました。特に何故道迷いの際には沢を下ってはいけないのかという理由とtokoroなりの対処法について記しておきたいと思います。
まず「地形図の話 ~尾根と谷~」で次のように記しています。
「つまり尾根は登りだと一本道となり、沢は下りだと一本道になります。尾根は登りのほうが簡単で、沢は下りのほうが簡単だと言われるのはこのためです。」
この文にある「簡単」というのは方向を見定めるのが容易だという意味です。新潟の事故でも沢で発見されたとの報道でしたが、道がわからないときに沢を下るというのはある意味合理的です。でも道迷いの対処法としては間違いです。ある意味合理的である、という理由は沢を下っていけば必ずやがて大きな川へと合流します。日本は河川の下流域に集落を形成していることが多いので、街に出たいのなら単純に川を下れば良いということになります。
しかし、道迷いの対処法として沢を下ることは絶対にやってはいけません。非常に危険です。理由の一つとして、日本の沢地形は一般に急峻になっているということが挙げられます。山岳地帯であればどこでもよいので地形図を見ていただくとわかるのですが、たいてい沢地形は等高線が詰まったV字谷を形成しています。これは単純に沢の真ん中の傾斜が急であるというだけでなく、両岸が急な崖になっているということを示しています。沢によっては地形図に道形が描かれていることもありますが、これは道として整備されているから歩けるのであって、整備のされていない沢を下るのはとても難しいと考えてもらって結構でしょう。
もう一つ理由として挙げるとすれば人間は登りよりも下りのほうが苦手であるということです。四足歩行の動物であれば頭を下に下げて方向を見定めながら下ることもできます。しかし人間は頭を下にして下ることは考えられず、特に崖地は壁に張り付いた状態なので、下の様子を確認しながら下ることができません。結果足の踏み場を見落としたり、バランスを崩したりして転落する事故が発生しています。実は私も武甲山からの下りでスゲ沢を利用し、橋立川を下る最中に崖から転落するという事故を起こしたことがあります。現在、浦山口からの登山道は橋立川を遡って、杉林の九十九折の所で川から離れるのですが、その先も沢沿いに踏み跡は続いています。しかし途中で踏み跡が大きく崩壊しているため、通行止めの措置が取られています。私は上流から下ってきたので、踏み跡が大きく崩壊していることを知らず、その場で立ち往生してしまいました。ここで沢をこれ以上下ろうとせず、スゲ沢分岐(この記事で分岐についての言及があります)まで戻るべきでしたが、崖下の沢へ下るという選択をしました。その結果へばり付いていた崖から転落し、左手の捻挫と膝の打撲を負いました。頭から落ちたのにもかかわらず、奇跡的に左手が地面に着いたのとザックを背負っていた背中から落ちたのが幸いし、大怪我は負いませんでした。しかしこの事故後はどんなに面倒臭く感じようとも踏み跡の無い沢は下りないようにしています。
ところで沢は崖地が形成されやすいから下ってはいけないのだとしたら尾根だって崖地に差し掛かる危険があるのではないかと思う方もいるでしょう。あくまで私見ではありますが、その指摘は正しいと考えます。もちろん、水流によって絶えず削られ続ける沢に比べれば尾根のほうが緩やかな地形になりやすい面はありますが、崖地が形成されていれば下るのが難しいのは尾根も同じです。したがって一つはっきりと言えるのは道迷いを起こしたら山を下ってはいけないということです。これは山のベテランの人たちが皆指摘していることで、道迷いを起こしたときに思い出す必要のある一番大事な知識です。その上で道迷いを起こしたら何をすべきか私なりの対処法を述べておきます。
まず道迷いを起こしたと気付いたときに最初に行うべきは水を飲むか食事を取ることです。何を言っているんだとお思いかもしれませんが、ピンチに陥ったときは冷静さを取り戻すことが一番必要です。冷静さを取り戻すには水を飲むか(裏妙義を歩いた時に実践しています)あるいはもっとピンチに陥っているのであれば思い切って食事を取るくらいの気分転換が必要です。特に道迷いを起こすと体力を失っていることも多いので、食事を取るというのは意外なほどに大事になってきます。
次に道がわかるようであれば来た道を戻ります。戻ってみると単純なミスで迷っていたことに気付かされることも多々あります(私は吾妻山で道迷いをやらかしていますが、このときも道を戻っています)。但し戻るべき道も分からなくなっている場合も少なくありません。その場合はその場から動かずに素直に救助を呼んで待つべきです。多額の救助費用を請求されても、周囲から非難を浴びようとも、とにかく生きて山を下りることを優先しましょう。道迷いは山においては完全な人為的ミスであり、全ての責任は道迷いを起こした登山者が負わなければならないのです。そして連絡を取るためなどの場合にどうしてもその場から動かなければならないときは山を登りましょう。何度でも同じことを記しておきますが、道迷いを起こしたら山を下ってはいけないのです。
まず「地形図の話 ~尾根と谷~」で次のように記しています。
「つまり尾根は登りだと一本道となり、沢は下りだと一本道になります。尾根は登りのほうが簡単で、沢は下りのほうが簡単だと言われるのはこのためです。」
この文にある「簡単」というのは方向を見定めるのが容易だという意味です。新潟の事故でも沢で発見されたとの報道でしたが、道がわからないときに沢を下るというのはある意味合理的です。でも道迷いの対処法としては間違いです。ある意味合理的である、という理由は沢を下っていけば必ずやがて大きな川へと合流します。日本は河川の下流域に集落を形成していることが多いので、街に出たいのなら単純に川を下れば良いということになります。
しかし、道迷いの対処法として沢を下ることは絶対にやってはいけません。非常に危険です。理由の一つとして、日本の沢地形は一般に急峻になっているということが挙げられます。山岳地帯であればどこでもよいので地形図を見ていただくとわかるのですが、たいてい沢地形は等高線が詰まったV字谷を形成しています。これは単純に沢の真ん中の傾斜が急であるというだけでなく、両岸が急な崖になっているということを示しています。沢によっては地形図に道形が描かれていることもありますが、これは道として整備されているから歩けるのであって、整備のされていない沢を下るのはとても難しいと考えてもらって結構でしょう。
もう一つ理由として挙げるとすれば人間は登りよりも下りのほうが苦手であるということです。四足歩行の動物であれば頭を下に下げて方向を見定めながら下ることもできます。しかし人間は頭を下にして下ることは考えられず、特に崖地は壁に張り付いた状態なので、下の様子を確認しながら下ることができません。結果足の踏み場を見落としたり、バランスを崩したりして転落する事故が発生しています。実は私も武甲山からの下りでスゲ沢を利用し、橋立川を下る最中に崖から転落するという事故を起こしたことがあります。現在、浦山口からの登山道は橋立川を遡って、杉林の九十九折の所で川から離れるのですが、その先も沢沿いに踏み跡は続いています。しかし途中で踏み跡が大きく崩壊しているため、通行止めの措置が取られています。私は上流から下ってきたので、踏み跡が大きく崩壊していることを知らず、その場で立ち往生してしまいました。ここで沢をこれ以上下ろうとせず、スゲ沢分岐(この記事で分岐についての言及があります)まで戻るべきでしたが、崖下の沢へ下るという選択をしました。その結果へばり付いていた崖から転落し、左手の捻挫と膝の打撲を負いました。頭から落ちたのにもかかわらず、奇跡的に左手が地面に着いたのとザックを背負っていた背中から落ちたのが幸いし、大怪我は負いませんでした。しかしこの事故後はどんなに面倒臭く感じようとも踏み跡の無い沢は下りないようにしています。
ところで沢は崖地が形成されやすいから下ってはいけないのだとしたら尾根だって崖地に差し掛かる危険があるのではないかと思う方もいるでしょう。あくまで私見ではありますが、その指摘は正しいと考えます。もちろん、水流によって絶えず削られ続ける沢に比べれば尾根のほうが緩やかな地形になりやすい面はありますが、崖地が形成されていれば下るのが難しいのは尾根も同じです。したがって一つはっきりと言えるのは道迷いを起こしたら山を下ってはいけないということです。これは山のベテランの人たちが皆指摘していることで、道迷いを起こしたときに思い出す必要のある一番大事な知識です。その上で道迷いを起こしたら何をすべきか私なりの対処法を述べておきます。
まず道迷いを起こしたと気付いたときに最初に行うべきは水を飲むか食事を取ることです。何を言っているんだとお思いかもしれませんが、ピンチに陥ったときは冷静さを取り戻すことが一番必要です。冷静さを取り戻すには水を飲むか(裏妙義を歩いた時に実践しています)あるいはもっとピンチに陥っているのであれば思い切って食事を取るくらいの気分転換が必要です。特に道迷いを起こすと体力を失っていることも多いので、食事を取るというのは意外なほどに大事になってきます。
次に道がわかるようであれば来た道を戻ります。戻ってみると単純なミスで迷っていたことに気付かされることも多々あります(私は吾妻山で道迷いをやらかしていますが、このときも道を戻っています)。但し戻るべき道も分からなくなっている場合も少なくありません。その場合はその場から動かずに素直に救助を呼んで待つべきです。多額の救助費用を請求されても、周囲から非難を浴びようとも、とにかく生きて山を下りることを優先しましょう。道迷いは山においては完全な人為的ミスであり、全ての責任は道迷いを起こした登山者が負わなければならないのです。そして連絡を取るためなどの場合にどうしてもその場から動かなければならないときは山を登りましょう。何度でも同じことを記しておきますが、道迷いを起こしたら山を下ってはいけないのです。