(金比羅神社前から巾着田を見下す)
西武池袋線高麗駅のホームに降り立つと北側に神社の鳥居を戴く山が見える。あれが今日歩こうという日和田山だ。奥武蔵の山で駅から歩き出せるというのはそれほど珍しいものではない。しかし駅のホームからその山容を眺められるというのはあまりない。ほかは芦ヶ久保駅の日向山や横瀬駅の武甲山くらいのものだろう。だが武甲山は横瀬駅から登山口まで二時間の舗装路歩きを強いられるし、日向山はそれほど目立つ山ではない。それに比べて日和田山は背後の高指山とともに壁のように聳え立ち、しかも1時間弱で山頂を踏むことが出来る。それでいて天覧山のような公園化した山と異なり、岩場の登りや多数のヴァリエイションルートを持つ本格的な山歩きも楽しめる。手軽さと奥深さ。それがこの山の魅力なのだろう。
高麗駅へ出ると平日にもかかわらず人が多い。多くは定年退職者らしき中高年の人達なのだが、中には本格的な山装備で調えた若者もいる。僕のように平日休みの勤め人なのか、それとも学生さんなのだろうか。そういう僕も今日はザックこそ普段使いのデイバッグだが、上下足回りとも登山装備である。山装備の若者は駅舎左手の道路を進んでいく。僕は右手の歩道を通って踏切を渡る。右手の道のほうがどこか田舎の雰囲気があって好きなのだ。踏切を渡ると一本の桜の木が満開である。ここは日当たりが良いのだろう。その先は「台」の交差点。この辺りは綺麗に整備されたことは昨年も書いたが、驚いたことに交差点の脇にコンビニができている。高麗駅から横瀬駅の間は駅周辺にコンビニが無いことがある種の自慢でもあったのだが、この高麗駅周辺にも都市化の波が押し寄せているということなのだろう。
(踏切近くの桜)
国道を横切り、舗装路を鹿台橋(ろくだいばし)へ向かって下っていく。いつも通り豆腐屋さん脇の小道に入り、水天の碑の前で左折すると正面に日和田山が見えてくる。日高市の市街地から国道へと接続する車道を横切って「高麗本郷」の交差点へ。この辺りはいつも交通量が多い。交差点を左折する。すると途端に静かな道となる。桜の大木を横目に坂を登っていくと登山口へと誘う横道が延びている。ギャラリーのある民家の脇を通っていくと綺麗に整備された登山口に出る。山道へと踏み込むのだが、この辺りはかなり公園化した雰囲気が強い。少し上がると高麗峠のある丘陵と前回登った多峯主山が見渡せる。だがこの山にはもっと素晴しい展望が待っているのだ。
(桜の大木)
(丘陵と多峯主山が見える)
水洗の綺麗なトイレの脇を通って木材チップを敷き詰めた遊歩道を緩やかに上がっていく。もっと直接的に上がっていく道もあるのだが、何そんなに急ぐ旅でもない。水道施設の脇に出ると施設内に植えられた各種の桜の若木が咲き誇っている。桜の花に別れを告げると道は暗い檜の植林の中を登っていく。主尾根に上がり、傾斜も緩くなると金比羅神社の鳥居が見えてくる。駅から見えたあの鳥居はこの金比羅神社のものだ。鳥居を潜ると道は二手に分かれる。右の尾根を行くのが女坂。途中急な階段状の道になっている。左は男坂へと続く道で、岩場を直登してあの駅から見えた鳥居に直接出る。女坂は労多い割にあまり面白味がないので、男坂を登ることにする。沢状の地形へ向かってトラバース気味に下りていくと更に道が二手に分かれる。水質は保証できない水場の脇を登っていくのが男坂だ。左手にトラバースしていく道は日向集落へとつながるようだが、まだ歩いたことは無い。
(水道施設の桜)
(金比羅神社の鳥居 この先が女坂分岐となっている)
男坂に取り付くと最初は岩場の間を抜ける石段を登っていく。石段が途切れると岩場の登りとなる。だがこのルート、実際は岩を登らなくても巻き道が鳥居の所まで続いているのだ。とはいえ巻き道を使ってしまっては面白さは半減してしまう。出来る限り岩を踏んで鳥居を目指す。上部が明るくなってきたら鳥居は目の前だ。鳥居の手前で傾斜の緩やかな一枚岩がある。その上に上がると巾着田が見渡せる。桜は大分色付いているようだ。一枚岩から一息で駅から見えた鳥居のある岩場に出る。ここからの眺めは良く、大山や富士山のほか、都心方面を見ればスカイツリーも見えるようだ。また正月初日の出を見に多くの人が訪れることでも有名で、僕も3年前に初日の出を拝むことができた。但し今日は花曇りで、遠望が殆ど利かないのが残念だ。はっきりと見えるのは武蔵台の向こうに聳える多峯主山と横手台(277.5の三角点ピーク)から尾根続きに見てポコンと突き出した天覚山くらいのもので、あの良く目立つ大岳山は微かにシルエットとなって見える程度だ。
(最初は石段)
(この岩場を直登する)
(駅からも見える鳥居)
(方向がペンキ書きされている)
(中央の高い所が多峯主山)
(右端のポコンが天覚山)
(鳥居からのパノラマ)
賑やかな鳥居の岩場を後にして岩尾根を進むと金比羅神社の社がある。社の脇を通ると広い岩場となる。ここを越えると山頂はもう目の前だ。山頂へはもう一登りする必要があるのだが、その前に尾根の西側に展望の得られる所がある。ここは富士山が良く見える所なのだが、流石に今日は春霞が広がっているだけだ。東から巻き付く様に登ると日和田山頂上(305.0)だ。宝篋印塔の建つ山頂は思ったよりも広い。東側が切り開かれ、空気が澄んでいれば筑波山を見ることができる。もちろん今日は望むべくもなくだが。
(金比羅神社の社)
(富士山方面の展望)
(山頂の様子)
(筑波山方面の展望)
賑やかで落ち着けない山頂を後にし、下山に取り掛かる。普段であれば往路を戻り、女坂を下るのだが、今日は新分県ガイドを参考にクライミング場を回って日向へ下りることにする。北西のザレた岩場を下り、巻き道に合流したところで更に鞍部まで下る。すると「石庭・富士見の丘・日向方面へ」と書かれた道標が立っている。分県ガイドに書かれた道はここのことであろう。まだ冬枯れの雑木林の尾根を進むと少し大きめの岩が見えてきた。これが分県ガイドの言うところの「富士見岩」であろうか。岩を巻くように下ると再び緩やかな尾根が続く。道の脇には咲き始めのミツバツツジの薄紫色が輝いている。来週にはおそらく満開となっているであろう。よく整備された道は日光が降り注ぎ、気分が良い。ただ今日は余りにも暑過ぎやしないだろうか。山の中にいるにもかかわらず、全く涼しいという感じがしない。
(クライミング場への分岐)
(富士見岩?)
(ミツバツツジ 咲き始め)
(整備された道が続く)
やがて「チャートの小径」と書かれた道標が現れる。ここで尾根道と分かれてトラバースの急な下りを進む。杉林の中を下っていくと大きな人の声がする。声のする方を見ると誰かが大きな岩に取り付いているのが見える。日和田山のクライミング場とはここのことだろう。沢状の地形を下っていくと岩場の基部に着く。十数人の男女が登攀器具などを使って岩に取り付いている。天覧山の岩場と比べるとかなり大きなものに見える。手前の大きな岩が男岩で奥の少し小さな岩が女岩らしい。クライミング場から日向集落へは更に沢状の地形を下っていく。しばらく下ると山頂への道標がある。一昨年の秋に歩いたのはおそらくこの道なのではないかと思う。山頂への分岐を見送ると見覚えのある藪っぽい道となる。勢いに任せて下ると民家が見えてきた。日向集落だ。民家の裏手を左に進むと日向地区自治会館の横に出る。1時間余りで下界まで下りてきてしまった。
(クライミング場が見える)
(男岩)
(女岩)
(日向地区自治会館)
さて巾着田へと向かうことにしよう。高麗川の流れに沿って高麗本郷の交差点に出る。交通量の多い道を横切り、小径に入ると巾着田が見えてくる。堤の上の桜は…六分咲きくらいだろうか。まあでも木によっては満開を迎えているものもある。それよりも気になったのは巾着田内の菜の花のほうだ。畑内に下りるとかなり生育が悪いように見える。随分と背が低いのだ。一昨年家族と訪れた時は腰の辺りまで隠れるほどの高さだっただけにちょっと残念だ。桜をバックに菜の花を撮ってみるが、あまり良い画にはならない。却って堤の車道から高麗川のほうへ下ったほうが良い画になるようだ。
(巾着田入口)
(桜と菜の花 何だか菜の花が薄い)
(日和田山をバックに 地面が透けてしまっている)
(菜の花 咲いていることは咲いているのだが…)
(これならましな画だろうか)
(今年は桜のほうが見事かもしれない)
(駐車場から桜と日和田山を撮ってみる)
(満開の桜)
桜も粗方撮りつくしたので、最後の目的地である宮沢湖へと向かう。昨年通れなかったドレミファ橋も今日なら通れるだろう。ヒガンバナの群生地を抜けていくとトイレのある辺りの桜が満開だ。その先の菜の花はいくらか生育が良いようだ。トイレの脇の道を川に向かって進むとドレミファ橋に出る。なるほど普段は木の橋桁が掛けられているのだな。橋を渡り、その先の急な石段・木段を喘ぎながら登る。登りきって左手の道を上がると民家の裏手に出る。ドレミファ橋が再開する前はあいあい橋を渡って小学校を回り込み、車道を延々と歩かなければならなかった。それに比べればかなりの短縮となる。しばらく舗装路を進み、分岐を右に進むと少し山道っぽくなる。車両通行禁止の看板が現れるといよいよ高麗峠への道だ。林道のような広い道はうねりながら高度を上げていく。道の側に所々フェンスが現れるのはゴルフ場の敷地に接しているからだ。以前歩いたときは暗い植林だったような気がしていたが、実際は明るい雑木林が続く。その分暑い。緩やかなながらも長い登りに飽きてきた頃、宮沢湖への分岐に着く。その直ぐ先が高麗峠(176.5)だ。ベンチが置かれただけの峠は、鞍部ではなくジャンクションピークとなっている。
(トイレ脇の桜)
(ここの菜の花は生育が良い)
(桜をアップで)
(ドレミファ橋)
(雑木林が続く)
(高麗峠)
往路を戻り、宮沢湖へと足を進める。この先は宮沢湖まで緩いアップダウンが続く。道は市境となっていて、南は飯能市で武蔵丘ゴルフ場、北は日高市で新武蔵丘ゴルフ場となっている。いずれにせよゴルフ場に挟まれているため、所々トンネル状のフェンスを抜けていくことになる。まるで動物園の動物のようだな。途中聖天院・高麗神社への分岐がある。分県ガイドにも記述があるが、地形図だとこの辺りだろう。丘陵歩きにも飽きてきた頃遊水池が見えてくる。宮沢湖へは右に入っていくようだ。フェンスのトンネルを抜けると最後の登りにやってくる。ここに来ての登りは少々うざったい。尾根を乗り越すといよいよ宮沢湖が見えてきた。体力が残っていれば湖一周もと考えていたが、明日も仕事だし、バスに乗ってもう帰ろう。道標に売店と書かれたほうへ進むとダム湖の堤防に出る。山間のダム湖と比べるとやや殺風景な印象だ。ダム湖の東にある丘の上には宮沢湖温泉がある。露天からの見晴らしが良い温泉で、何度か入ったこともあるが、駐車場から丸見えなのね…。湖岸道路から温泉への駐車場へ向かうとまたも登りに。登りきると広い駐車場が広がる。脇にはカート場があり、爆音を上げてカートが走っている。うむ、ここは観光地なのだね。寒い風が吹きつける中、飯能駅行きのバスを待つのであった。
(トンネル状のフェンス)
(宮沢湖 桜が見える)
(堤防から 船は釣り客用)
全ルート初心者向きです。ただ日和田山は天覧山と比べると山っぽいので、靴は山靴でも良いと思います。宮沢湖温泉と飯能駅をつなぐイーグルバスはスイカ・パスモが使えません。現金のみです。
DATA:
高麗駅10:40~10:55日和田山登山口~11:03女坂分岐~11:15金比羅神社鳥居前~11:26日和田山~11:37日向分岐~
11:47クライミング場~11:57日向登山口~12:06巾着田入口~12:28ドレミファ橋~12:42高麗峠~13:06宮沢湖~
13:19宮沢湖温泉バス停(イーグルバス15分)飯能駅北口
イーグルバス 宮沢湖温泉~飯能駅 170円
トイレ 日和田山登山口 巾着田 宮沢湖
地形図 飯能
新分県ガイド 埼玉県の山 初版(山と渓谷社) なお現在発行されているものは中身が少し異なっているようです。
西武池袋線高麗駅のホームに降り立つと北側に神社の鳥居を戴く山が見える。あれが今日歩こうという日和田山だ。奥武蔵の山で駅から歩き出せるというのはそれほど珍しいものではない。しかし駅のホームからその山容を眺められるというのはあまりない。ほかは芦ヶ久保駅の日向山や横瀬駅の武甲山くらいのものだろう。だが武甲山は横瀬駅から登山口まで二時間の舗装路歩きを強いられるし、日向山はそれほど目立つ山ではない。それに比べて日和田山は背後の高指山とともに壁のように聳え立ち、しかも1時間弱で山頂を踏むことが出来る。それでいて天覧山のような公園化した山と異なり、岩場の登りや多数のヴァリエイションルートを持つ本格的な山歩きも楽しめる。手軽さと奥深さ。それがこの山の魅力なのだろう。
高麗駅へ出ると平日にもかかわらず人が多い。多くは定年退職者らしき中高年の人達なのだが、中には本格的な山装備で調えた若者もいる。僕のように平日休みの勤め人なのか、それとも学生さんなのだろうか。そういう僕も今日はザックこそ普段使いのデイバッグだが、上下足回りとも登山装備である。山装備の若者は駅舎左手の道路を進んでいく。僕は右手の歩道を通って踏切を渡る。右手の道のほうがどこか田舎の雰囲気があって好きなのだ。踏切を渡ると一本の桜の木が満開である。ここは日当たりが良いのだろう。その先は「台」の交差点。この辺りは綺麗に整備されたことは昨年も書いたが、驚いたことに交差点の脇にコンビニができている。高麗駅から横瀬駅の間は駅周辺にコンビニが無いことがある種の自慢でもあったのだが、この高麗駅周辺にも都市化の波が押し寄せているということなのだろう。
(踏切近くの桜)
国道を横切り、舗装路を鹿台橋(ろくだいばし)へ向かって下っていく。いつも通り豆腐屋さん脇の小道に入り、水天の碑の前で左折すると正面に日和田山が見えてくる。日高市の市街地から国道へと接続する車道を横切って「高麗本郷」の交差点へ。この辺りはいつも交通量が多い。交差点を左折する。すると途端に静かな道となる。桜の大木を横目に坂を登っていくと登山口へと誘う横道が延びている。ギャラリーのある民家の脇を通っていくと綺麗に整備された登山口に出る。山道へと踏み込むのだが、この辺りはかなり公園化した雰囲気が強い。少し上がると高麗峠のある丘陵と前回登った多峯主山が見渡せる。だがこの山にはもっと素晴しい展望が待っているのだ。
(桜の大木)
(丘陵と多峯主山が見える)
水洗の綺麗なトイレの脇を通って木材チップを敷き詰めた遊歩道を緩やかに上がっていく。もっと直接的に上がっていく道もあるのだが、何そんなに急ぐ旅でもない。水道施設の脇に出ると施設内に植えられた各種の桜の若木が咲き誇っている。桜の花に別れを告げると道は暗い檜の植林の中を登っていく。主尾根に上がり、傾斜も緩くなると金比羅神社の鳥居が見えてくる。駅から見えたあの鳥居はこの金比羅神社のものだ。鳥居を潜ると道は二手に分かれる。右の尾根を行くのが女坂。途中急な階段状の道になっている。左は男坂へと続く道で、岩場を直登してあの駅から見えた鳥居に直接出る。女坂は労多い割にあまり面白味がないので、男坂を登ることにする。沢状の地形へ向かってトラバース気味に下りていくと更に道が二手に分かれる。水質は保証できない水場の脇を登っていくのが男坂だ。左手にトラバースしていく道は日向集落へとつながるようだが、まだ歩いたことは無い。
(水道施設の桜)
(金比羅神社の鳥居 この先が女坂分岐となっている)
男坂に取り付くと最初は岩場の間を抜ける石段を登っていく。石段が途切れると岩場の登りとなる。だがこのルート、実際は岩を登らなくても巻き道が鳥居の所まで続いているのだ。とはいえ巻き道を使ってしまっては面白さは半減してしまう。出来る限り岩を踏んで鳥居を目指す。上部が明るくなってきたら鳥居は目の前だ。鳥居の手前で傾斜の緩やかな一枚岩がある。その上に上がると巾着田が見渡せる。桜は大分色付いているようだ。一枚岩から一息で駅から見えた鳥居のある岩場に出る。ここからの眺めは良く、大山や富士山のほか、都心方面を見ればスカイツリーも見えるようだ。また正月初日の出を見に多くの人が訪れることでも有名で、僕も3年前に初日の出を拝むことができた。但し今日は花曇りで、遠望が殆ど利かないのが残念だ。はっきりと見えるのは武蔵台の向こうに聳える多峯主山と横手台(277.5の三角点ピーク)から尾根続きに見てポコンと突き出した天覚山くらいのもので、あの良く目立つ大岳山は微かにシルエットとなって見える程度だ。
(最初は石段)
(この岩場を直登する)
(駅からも見える鳥居)
(方向がペンキ書きされている)
(中央の高い所が多峯主山)
(右端のポコンが天覚山)
(鳥居からのパノラマ)
賑やかな鳥居の岩場を後にして岩尾根を進むと金比羅神社の社がある。社の脇を通ると広い岩場となる。ここを越えると山頂はもう目の前だ。山頂へはもう一登りする必要があるのだが、その前に尾根の西側に展望の得られる所がある。ここは富士山が良く見える所なのだが、流石に今日は春霞が広がっているだけだ。東から巻き付く様に登ると日和田山頂上(305.0)だ。宝篋印塔の建つ山頂は思ったよりも広い。東側が切り開かれ、空気が澄んでいれば筑波山を見ることができる。もちろん今日は望むべくもなくだが。
(金比羅神社の社)
(富士山方面の展望)
(山頂の様子)
(筑波山方面の展望)
賑やかで落ち着けない山頂を後にし、下山に取り掛かる。普段であれば往路を戻り、女坂を下るのだが、今日は新分県ガイドを参考にクライミング場を回って日向へ下りることにする。北西のザレた岩場を下り、巻き道に合流したところで更に鞍部まで下る。すると「石庭・富士見の丘・日向方面へ」と書かれた道標が立っている。分県ガイドに書かれた道はここのことであろう。まだ冬枯れの雑木林の尾根を進むと少し大きめの岩が見えてきた。これが分県ガイドの言うところの「富士見岩」であろうか。岩を巻くように下ると再び緩やかな尾根が続く。道の脇には咲き始めのミツバツツジの薄紫色が輝いている。来週にはおそらく満開となっているであろう。よく整備された道は日光が降り注ぎ、気分が良い。ただ今日は余りにも暑過ぎやしないだろうか。山の中にいるにもかかわらず、全く涼しいという感じがしない。
(クライミング場への分岐)
(富士見岩?)
(ミツバツツジ 咲き始め)
(整備された道が続く)
やがて「チャートの小径」と書かれた道標が現れる。ここで尾根道と分かれてトラバースの急な下りを進む。杉林の中を下っていくと大きな人の声がする。声のする方を見ると誰かが大きな岩に取り付いているのが見える。日和田山のクライミング場とはここのことだろう。沢状の地形を下っていくと岩場の基部に着く。十数人の男女が登攀器具などを使って岩に取り付いている。天覧山の岩場と比べるとかなり大きなものに見える。手前の大きな岩が男岩で奥の少し小さな岩が女岩らしい。クライミング場から日向集落へは更に沢状の地形を下っていく。しばらく下ると山頂への道標がある。一昨年の秋に歩いたのはおそらくこの道なのではないかと思う。山頂への分岐を見送ると見覚えのある藪っぽい道となる。勢いに任せて下ると民家が見えてきた。日向集落だ。民家の裏手を左に進むと日向地区自治会館の横に出る。1時間余りで下界まで下りてきてしまった。
(クライミング場が見える)
(男岩)
(女岩)
(日向地区自治会館)
さて巾着田へと向かうことにしよう。高麗川の流れに沿って高麗本郷の交差点に出る。交通量の多い道を横切り、小径に入ると巾着田が見えてくる。堤の上の桜は…六分咲きくらいだろうか。まあでも木によっては満開を迎えているものもある。それよりも気になったのは巾着田内の菜の花のほうだ。畑内に下りるとかなり生育が悪いように見える。随分と背が低いのだ。一昨年家族と訪れた時は腰の辺りまで隠れるほどの高さだっただけにちょっと残念だ。桜をバックに菜の花を撮ってみるが、あまり良い画にはならない。却って堤の車道から高麗川のほうへ下ったほうが良い画になるようだ。
(巾着田入口)
(桜と菜の花 何だか菜の花が薄い)
(日和田山をバックに 地面が透けてしまっている)
(菜の花 咲いていることは咲いているのだが…)
(これならましな画だろうか)
(今年は桜のほうが見事かもしれない)
(駐車場から桜と日和田山を撮ってみる)
(満開の桜)
桜も粗方撮りつくしたので、最後の目的地である宮沢湖へと向かう。昨年通れなかったドレミファ橋も今日なら通れるだろう。ヒガンバナの群生地を抜けていくとトイレのある辺りの桜が満開だ。その先の菜の花はいくらか生育が良いようだ。トイレの脇の道を川に向かって進むとドレミファ橋に出る。なるほど普段は木の橋桁が掛けられているのだな。橋を渡り、その先の急な石段・木段を喘ぎながら登る。登りきって左手の道を上がると民家の裏手に出る。ドレミファ橋が再開する前はあいあい橋を渡って小学校を回り込み、車道を延々と歩かなければならなかった。それに比べればかなりの短縮となる。しばらく舗装路を進み、分岐を右に進むと少し山道っぽくなる。車両通行禁止の看板が現れるといよいよ高麗峠への道だ。林道のような広い道はうねりながら高度を上げていく。道の側に所々フェンスが現れるのはゴルフ場の敷地に接しているからだ。以前歩いたときは暗い植林だったような気がしていたが、実際は明るい雑木林が続く。その分暑い。緩やかなながらも長い登りに飽きてきた頃、宮沢湖への分岐に着く。その直ぐ先が高麗峠(176.5)だ。ベンチが置かれただけの峠は、鞍部ではなくジャンクションピークとなっている。
(トイレ脇の桜)
(ここの菜の花は生育が良い)
(桜をアップで)
(ドレミファ橋)
(雑木林が続く)
(高麗峠)
往路を戻り、宮沢湖へと足を進める。この先は宮沢湖まで緩いアップダウンが続く。道は市境となっていて、南は飯能市で武蔵丘ゴルフ場、北は日高市で新武蔵丘ゴルフ場となっている。いずれにせよゴルフ場に挟まれているため、所々トンネル状のフェンスを抜けていくことになる。まるで動物園の動物のようだな。途中聖天院・高麗神社への分岐がある。分県ガイドにも記述があるが、地形図だとこの辺りだろう。丘陵歩きにも飽きてきた頃遊水池が見えてくる。宮沢湖へは右に入っていくようだ。フェンスのトンネルを抜けると最後の登りにやってくる。ここに来ての登りは少々うざったい。尾根を乗り越すといよいよ宮沢湖が見えてきた。体力が残っていれば湖一周もと考えていたが、明日も仕事だし、バスに乗ってもう帰ろう。道標に売店と書かれたほうへ進むとダム湖の堤防に出る。山間のダム湖と比べるとやや殺風景な印象だ。ダム湖の東にある丘の上には宮沢湖温泉がある。露天からの見晴らしが良い温泉で、何度か入ったこともあるが、駐車場から丸見えなのね…。湖岸道路から温泉への駐車場へ向かうとまたも登りに。登りきると広い駐車場が広がる。脇にはカート場があり、爆音を上げてカートが走っている。うむ、ここは観光地なのだね。寒い風が吹きつける中、飯能駅行きのバスを待つのであった。
(トンネル状のフェンス)
(宮沢湖 桜が見える)
(堤防から 船は釣り客用)
全ルート初心者向きです。ただ日和田山は天覧山と比べると山っぽいので、靴は山靴でも良いと思います。宮沢湖温泉と飯能駅をつなぐイーグルバスはスイカ・パスモが使えません。現金のみです。
DATA:
高麗駅10:40~10:55日和田山登山口~11:03女坂分岐~11:15金比羅神社鳥居前~11:26日和田山~11:37日向分岐~
11:47クライミング場~11:57日向登山口~12:06巾着田入口~12:28ドレミファ橋~12:42高麗峠~13:06宮沢湖~
13:19宮沢湖温泉バス停(イーグルバス15分)飯能駅北口
イーグルバス 宮沢湖温泉~飯能駅 170円
トイレ 日和田山登山口 巾着田 宮沢湖
地形図 飯能
新分県ガイド 埼玉県の山 初版(山と渓谷社) なお現在発行されているものは中身が少し異なっているようです。