(妻坂峠から秩父へ向かって下る)
体調不良等があって、長いこと山歩きは休んでいたのだが、大分涼しくなってきたので、久しぶりにロングルートを歩くことにした。紅葉にはちょっと早い時期だけれども、名栗辺りの山はそろそろ見頃かもしれない。そこで妻坂峠を越えて武甲山に登り、小持山・大持山やウノタワを経る周回コースを計画してみた。この辺りの一般ルートは歩き尽しているので、エスケープには困らない。体調に合わせて適当に下りるつもりだったが、結局武甲山を越えただけで終わってしまった。
飯能駅で乗り慣れた湯の沢行きの一番バスを待つ。あまりにも見慣れた景色だったので意識したことは無かったのだが、このバスに乗るのは10ヶ月ぶりだ。景色に変化はないものの、停留所の雰囲気はかなり賑やかになった。こちらにまだ山歩きを始めた頃の記憶が残っているせいか、バスを待つ長い行列が未だに馴染めない。紅葉には早いし、天気も悪い中これだけの人が並ぶことに毎度のことながら驚かされる。満員のバスもさわらびの湯辺りで半分以上の乗客を降ろし、名郷で降りたのは15人くらいだっただろうか。そのうち10人ほどが蕨山へと進み、妻坂峠・鳥首峠や武川岳へ向かう人は多くない。やはり棒の折山や蕨山が人気なのだろう。
静かな名郷集落を抜け、左手に入間川と大鳩園キャンプ場を眺めつつ、車道を進む。今年初めの大雪や台風のせいなのか、入間川の水量はかなり多い。昨年の6月は蕨山辺りの沢が涸れ沢に成りかけていただけに、余計水量が多く感じられるのかもしれない。大場戸橋で右の道に入る。左の鳥首峠方面へ入る人は今日は多くないようだ。数人の登山者と前後しつつ車道を進む。それにしても荷の重さのせいか、歩みが捗らない。いくら足に負担の掛かる舗装路とはいえ、ここまでしんどいのはなぁ…。やっぱり4か月のブランクは大きかったか。ただ今日は曇天で暑くないのだけは幸いだった。ヘアピンカーブが続く手前で数本のパイプが突き刺さった水場がある。軽四で来たオジサンがちょうど水を汲んでいるところであった。水質検査をしているのかは不明だが、飲んでみると癖のない水だ。
(入間川)
(横倉林道分岐近くの水場)
横倉林道の分岐は地形図だと山道になっているが、実際はもう少し先まで舗装路になっている。砂防ダムが見えてくるとようやく妻坂峠の登山口に着く。地形図だとちょうど沢が二又になっている辺りだろうか。左の沢沿いに道は付けられていて、傾斜は比較的緩い。そして左岸に付けられた道の周辺はやや広くなっている所が多い。峠道としては歩きやすい部類に入るが、やや大きな石がゴロゴロとしているので、荷が重いとちょっと辛い。大きめの沢が分かれる所で道は再び左に入る。雑木林の詰めが終わると杉の植えられた九十九折となる。ここも傾斜は緩やかなので、初心者を連れて歩くには良い道だ。良い道なのだが、今日はえらく消耗している。この状態で武甲山まで行けるのだろうか?
(沢の詰め この先は九十九折が続く)
頭上が明るくなると妻坂峠の頂上に出る。依然として台風で倒れた大木が放置されており、美しかった峠の面影はない。峠の頂上は風が収束する所なので、かなり冷たく感じる。途中の舗装路で追い抜かれたオジサンが休んでいて、声を掛けられる。普段アルプスなどを歩いている人らしく、ボクと比べてかなり健脚な人だ。妻坂峠を越えて武甲山へ行くとのことで基本的に同じ行程を歩くことになりそうだ。休憩もそこそこに峠から生川方面へと下る。杉が多くやや暗い印象だった飯能側と比べ、秩父側は明るい雑木林が広がる。傾斜は秩父側のほうが急なのだが、よく整備され、歩きにくい所はない。意外と歩く人が多いのだろうか?途中峠で会ったオジサンに先に行ってもらい、ゆっくりと下っていく。そうでないと膝が笑い始めていて、武甲山まで保ちそうにないからだ。
(峠に佇むお地蔵様 周囲の荒れ方が酷い)
(妻坂峠 この辺りの雰囲気は変わらず)
(雑木林が美しい 良い道だ)
随分と沢の音が大きいなと感じる頃、中腹を貫く林道に下り立つ。峠道は林道を横切って更に続いているが、8年前に歩いたときのように今回も林道を西に下っていく。時間的には変わらないのだろうが、林道のほうが景色は良いのではないだろうか。緩やかにアップダウンを繰り返す砂利道を進むと武甲山の採掘場が見える。スパっと平らに切り取られた様は要塞のようだ。コンクリートの橋で沢を渡り、カーブしつつ下ると生川基点からの林道にぶつかる。この先に養魚場があるためか、この辺りまでクルマが入ってきているようだ。この分岐を左に入り、舗装路を上がっていく。生川を挟んだ対岸には一の鳥居からの細道が上がってきているのが見える。コンクリートの橋を渡り、一の鳥居からの道に合流した所が武甲山八丁目石のある地点だ。ここから十四丁目石までは舗装路を歩く。この辺りは落石が多く、1mくらいの大石が落ちていたので注意したほうが良いだろう。
(林道に下りてくる)
(林道から先もよく整備されているようだ)
(林道から採掘場を望む)
(林道からの眺め)
(対岸の細道)
(武甲山八丁目)
十二丁目石を過ぎると持山寺跡の分岐に着く。持山寺ルートもなかなか良いルートだった。持山寺ルートにつながる林道が分岐する所が十四丁目石のある地点。ここからは本格的な山道となる。登り始めこそは木段だが、あとは只管山頂まで九十九折が続く。地形図の見た目のきつさとは異なり、傾斜は緩やかで道もよく整備されている。しんどい所はとにかく単調で長いということだろう。十八丁目石のある辺り(700m付近)に不動滝がある。見た目一段の滝だが、実際には奥にもう一段滝があるようだ。パイプが付けられ、水場にもなっている。ここも癖のない水で美味しい。
(落石注意)
(持山寺跡分岐)
(山道の始まり)
(不動滝)
(八丁目から十八丁目まで)
二十丁目で武甲山御嶽神社の石柱を見た後はしばらく丁目石を目的とするだけの山歩きが続く。傾斜は緩いが単調なのは否めない。周辺が杉檜ばかりでなければもう少し見所もあるものなのだが。三十二丁目石を過ぎると大杉の広場(1000)にやって来る。広場の中心に一際大きな杉があり、周囲は綺麗に整地されている。やや傾斜はあるがテントも張れそうだ。丸太のベンチに腰を下ろし、少し長めの休憩を取る。以前なら楽に感じたくらいの傾斜なのだが、どうも疲労が激しい。人が多く歩く時間であれば、もっと追い抜かれていたことだろう。幸い会うのは下る人ばかりで、追い抜かれたのは一人しかいない。
(桟橋 いくつか掛かっている)
(九十九折なので傾斜は緩やか それに道も広い)
(大杉の広場)
(十九丁目から三十二丁目まで)
大杉の広場を過ぎればあとは300mを残すのみ。標柱にはあと50分と書かれていたが、山慣れた人向けの数字ではないかとも思う。シラジクボ(1070)から山頂までが大体30分と考えると50分は結構きつい数字だ。依然として続く緩やかな九十九折を登っていくと三十六丁目石を過ぎた辺りで登山道が霧に覆われてきた。霧というよりは雲の中というべきかもしれない。途中以前あった階段コースは崩落のため通行禁止となっていた。武甲山では頭骨大の落石に遭遇したこともあったので、あまり道を外すべきではないだろう。四十丁目石を過ぎると道を石が覆うようになってくる。疲れた体には鬱陶しい。四十五丁目石を過ぎた辺りであれほど鬱陶しかった転石もなくなり、山頂が近いことを窺わせる。四十八丁目石付近には小屋掛けの水場がある。ただ山頂にはトイレがあるので、水質は保証できな
い。
(石が転がる道 ちょっと歩きにくい)
(霧が濃くなる)
(こんな巨木も)
(小屋掛けの水場)
(三十三丁目から四十九丁目まで)
五十丁目石に着いた辺りで人の声が大きくなってきた。まもなく山頂手前の広場に出るはずだが…。と思っていると山頂手前の広場に出た。傍らには五十一丁目石が置かれていた。広場には靄っているにもかかわらず、多くの人が憩っていた。ここは8年前に初めて来たときから人気の山だったんだよなぁ。とりあえず山頂へ向かおう。檜の林を抜けると武甲山御嶽神社の奥宮がある。大きな伽藍だが、自然環境の厳しさ故か、やや古ぼけた感じは禁じ得ない。神社の裏手はフェンスが張られた岩場になっていて、人が入れない所が山頂になっている。山頂の左右には展望台が設けられているが、メインである左手の展望台にだけ寄って行こう。歩きにくい岩場を越えると武甲山の第一展望台(1304)だ。ここも相変わらず人が多い。真っ白で下界は望めないので、さっさと広場に戻ることにしよう。広場の西側には大きな小屋掛けがある。どうせ誰か使っているだろうから、その脇にある切り株に腰を下ろして、カップラーメンを作る。熱々のラーメンを啜っていると何と妻坂峠で出会ったオジサンが声を掛けてきた。もう下ったものかと思っていた。どうやら道がわからなかったようだ。あまりこの辺りの山を登ったことが無いのだろうか?
(五十丁目と五十一丁目)
(山頂手前の広場)
(武甲山御嶽神社)
(武甲山第一展望台)
(小屋掛け 避難小屋としても使えそう)
さて飯も食ったし、そろそろ行くか。疲労が激しいし、無理せず、浦山口へ下るとしよう。武甲山の肩へ出るとここのベンチも人で一杯だ。大雪で浦山口ルートはしばらく通行止めになっていたのだが、流石にもう解除されたようだ。最初はカラマツ林を緩やかに下る。色付きが始まったばかりで、まだ緑の細い葉が目立つ。あと10~14日といったところか。カラマツ林を抜けると低木帯に出る。浦山口ルートは崖地が多いので、あまり余所見はできない。崖地が終わると急な斜面の下りが続く。ここで二組のカップルを追い抜いたが、どちらかというと追い抜くよう促された感も否めない。まあ見晴も何もない所だけれども、もうちょいゆっくり下っても良かったと思う。
(カラマツ林を下る)
(崖地のトラバース)
長者屋敷の頭に着いた所で、いつものように水場へと向かう。今年はどこの水場も水量が多いように感じたのだが、ここはチョロチョロと流れている程度であった。大分踏み跡も崩れてしまったし、水も砂が混じっているように感じる。あまりお勧めはしたくない。長者屋敷の頭から先は春になると桜並木となる。もう桜の紅葉は終わってしまって、カラマツの紅葉が綺麗になるだろう。それなりに見晴らしの良い尾根なのだが、曇天の今日は全く冴えない。図根点の871付近は北側に緩やかな雑木林が広がる。テントでも張ったら気持ち良いんだろうねぇ。道が左に折れると長い九十九折となる。ここは下りでもなかなかしんどい。
(水場)
(長者屋敷尾根)
何とか九十九折を下り切る。沢の合流点となっていて、河原が結構広い。今日は水量が多いので、流れも美しいことだろう。河原へ下りるとカップルや若者が憩っていた。確かにここは良い所だ。橋立川へ流れ込む支流が白い筋となっている。橋立川の本流は両岸が高い壁となっている。夏場ちょっとした沢登りをしたら楽しいのかもしれない。川沿いに砂利道を下っていくと一旦沢を横切る。ここは今年の大雪で橋が壊れたのだが、現在は確りと直されていた。しょっちゅう橋が流されている所なので、大雨の後はこのルートを選ばないのが賢明だろう。
(橋立川)
(橋の崩落個所 大雨後は要注意)
(橋立川の滝 地形図を見た感じここまで行けるルートもありそうなのだが…)
クルマが置ける武甲山登山口には登山届用のポストが設けられていた。御嶽山の事故以後登山届の重要性が見直されているが、そもそも山歩きは計画を立てて成り立つものだ。計画書を作らずに歩けるのは本当に散歩程度のルートに限られるのであって、奥武蔵の山であっても極力計画書を作って歩いてもらいたい。橋立の大岩壁が見えてくれば、浦山口の駅も近い。駅の手前には不動明水と呼ばれる湧き水がある。お金は少し掛かるが、久しぶりに3リットル汲んでいくことにした。ここの水は本当に美味しいと思う。曇天の中の山歩きで展望には恵まれなかったが、その分、武甲山の水の山という一面を楽しむことができた。展望を望まない山歩きも良いものだ、と感じさせた山旅であった。
(林道を行く)
(橋立堂付近の岩壁)
(駅近くの水場 不動明水はガードを潜った先にある)
DATA:
飯能駅(国際興業バス)名郷バス停8:10~9:01妻坂峠登山口~9:25妻坂峠(839)~10:07武甲山八丁目石~10:26不動滝~10:59大杉の広場
~11:45武甲山(1304)12:15~12:38長者屋敷の頭~13:20橋立川(武甲山登り口)~14:15浦山口駅
トイレ 名郷バス停 武甲山山頂
水場 山中(横倉林道分岐)手前 不動滝 長者屋敷の頭 不動明水(浦山口駅近く 200円)
地形図 正丸峠 原市場 秩父
体調不良等があって、長いこと山歩きは休んでいたのだが、大分涼しくなってきたので、久しぶりにロングルートを歩くことにした。紅葉にはちょっと早い時期だけれども、名栗辺りの山はそろそろ見頃かもしれない。そこで妻坂峠を越えて武甲山に登り、小持山・大持山やウノタワを経る周回コースを計画してみた。この辺りの一般ルートは歩き尽しているので、エスケープには困らない。体調に合わせて適当に下りるつもりだったが、結局武甲山を越えただけで終わってしまった。
飯能駅で乗り慣れた湯の沢行きの一番バスを待つ。あまりにも見慣れた景色だったので意識したことは無かったのだが、このバスに乗るのは10ヶ月ぶりだ。景色に変化はないものの、停留所の雰囲気はかなり賑やかになった。こちらにまだ山歩きを始めた頃の記憶が残っているせいか、バスを待つ長い行列が未だに馴染めない。紅葉には早いし、天気も悪い中これだけの人が並ぶことに毎度のことながら驚かされる。満員のバスもさわらびの湯辺りで半分以上の乗客を降ろし、名郷で降りたのは15人くらいだっただろうか。そのうち10人ほどが蕨山へと進み、妻坂峠・鳥首峠や武川岳へ向かう人は多くない。やはり棒の折山や蕨山が人気なのだろう。
静かな名郷集落を抜け、左手に入間川と大鳩園キャンプ場を眺めつつ、車道を進む。今年初めの大雪や台風のせいなのか、入間川の水量はかなり多い。昨年の6月は蕨山辺りの沢が涸れ沢に成りかけていただけに、余計水量が多く感じられるのかもしれない。大場戸橋で右の道に入る。左の鳥首峠方面へ入る人は今日は多くないようだ。数人の登山者と前後しつつ車道を進む。それにしても荷の重さのせいか、歩みが捗らない。いくら足に負担の掛かる舗装路とはいえ、ここまでしんどいのはなぁ…。やっぱり4か月のブランクは大きかったか。ただ今日は曇天で暑くないのだけは幸いだった。ヘアピンカーブが続く手前で数本のパイプが突き刺さった水場がある。軽四で来たオジサンがちょうど水を汲んでいるところであった。水質検査をしているのかは不明だが、飲んでみると癖のない水だ。
(入間川)
(横倉林道分岐近くの水場)
横倉林道の分岐は地形図だと山道になっているが、実際はもう少し先まで舗装路になっている。砂防ダムが見えてくるとようやく妻坂峠の登山口に着く。地形図だとちょうど沢が二又になっている辺りだろうか。左の沢沿いに道は付けられていて、傾斜は比較的緩い。そして左岸に付けられた道の周辺はやや広くなっている所が多い。峠道としては歩きやすい部類に入るが、やや大きな石がゴロゴロとしているので、荷が重いとちょっと辛い。大きめの沢が分かれる所で道は再び左に入る。雑木林の詰めが終わると杉の植えられた九十九折となる。ここも傾斜は緩やかなので、初心者を連れて歩くには良い道だ。良い道なのだが、今日はえらく消耗している。この状態で武甲山まで行けるのだろうか?
(沢の詰め この先は九十九折が続く)
頭上が明るくなると妻坂峠の頂上に出る。依然として台風で倒れた大木が放置されており、美しかった峠の面影はない。峠の頂上は風が収束する所なので、かなり冷たく感じる。途中の舗装路で追い抜かれたオジサンが休んでいて、声を掛けられる。普段アルプスなどを歩いている人らしく、ボクと比べてかなり健脚な人だ。妻坂峠を越えて武甲山へ行くとのことで基本的に同じ行程を歩くことになりそうだ。休憩もそこそこに峠から生川方面へと下る。杉が多くやや暗い印象だった飯能側と比べ、秩父側は明るい雑木林が広がる。傾斜は秩父側のほうが急なのだが、よく整備され、歩きにくい所はない。意外と歩く人が多いのだろうか?途中峠で会ったオジサンに先に行ってもらい、ゆっくりと下っていく。そうでないと膝が笑い始めていて、武甲山まで保ちそうにないからだ。
(峠に佇むお地蔵様 周囲の荒れ方が酷い)
(妻坂峠 この辺りの雰囲気は変わらず)
(雑木林が美しい 良い道だ)
随分と沢の音が大きいなと感じる頃、中腹を貫く林道に下り立つ。峠道は林道を横切って更に続いているが、8年前に歩いたときのように今回も林道を西に下っていく。時間的には変わらないのだろうが、林道のほうが景色は良いのではないだろうか。緩やかにアップダウンを繰り返す砂利道を進むと武甲山の採掘場が見える。スパっと平らに切り取られた様は要塞のようだ。コンクリートの橋で沢を渡り、カーブしつつ下ると生川基点からの林道にぶつかる。この先に養魚場があるためか、この辺りまでクルマが入ってきているようだ。この分岐を左に入り、舗装路を上がっていく。生川を挟んだ対岸には一の鳥居からの細道が上がってきているのが見える。コンクリートの橋を渡り、一の鳥居からの道に合流した所が武甲山八丁目石のある地点だ。ここから十四丁目石までは舗装路を歩く。この辺りは落石が多く、1mくらいの大石が落ちていたので注意したほうが良いだろう。
(林道に下りてくる)
(林道から先もよく整備されているようだ)
(林道から採掘場を望む)
(林道からの眺め)
(対岸の細道)
(武甲山八丁目)
十二丁目石を過ぎると持山寺跡の分岐に着く。持山寺ルートもなかなか良いルートだった。持山寺ルートにつながる林道が分岐する所が十四丁目石のある地点。ここからは本格的な山道となる。登り始めこそは木段だが、あとは只管山頂まで九十九折が続く。地形図の見た目のきつさとは異なり、傾斜は緩やかで道もよく整備されている。しんどい所はとにかく単調で長いということだろう。十八丁目石のある辺り(700m付近)に不動滝がある。見た目一段の滝だが、実際には奥にもう一段滝があるようだ。パイプが付けられ、水場にもなっている。ここも癖のない水で美味しい。
(落石注意)
(持山寺跡分岐)
(山道の始まり)
(不動滝)
(八丁目から十八丁目まで)
二十丁目で武甲山御嶽神社の石柱を見た後はしばらく丁目石を目的とするだけの山歩きが続く。傾斜は緩いが単調なのは否めない。周辺が杉檜ばかりでなければもう少し見所もあるものなのだが。三十二丁目石を過ぎると大杉の広場(1000)にやって来る。広場の中心に一際大きな杉があり、周囲は綺麗に整地されている。やや傾斜はあるがテントも張れそうだ。丸太のベンチに腰を下ろし、少し長めの休憩を取る。以前なら楽に感じたくらいの傾斜なのだが、どうも疲労が激しい。人が多く歩く時間であれば、もっと追い抜かれていたことだろう。幸い会うのは下る人ばかりで、追い抜かれたのは一人しかいない。
(桟橋 いくつか掛かっている)
(九十九折なので傾斜は緩やか それに道も広い)
(大杉の広場)
(十九丁目から三十二丁目まで)
大杉の広場を過ぎればあとは300mを残すのみ。標柱にはあと50分と書かれていたが、山慣れた人向けの数字ではないかとも思う。シラジクボ(1070)から山頂までが大体30分と考えると50分は結構きつい数字だ。依然として続く緩やかな九十九折を登っていくと三十六丁目石を過ぎた辺りで登山道が霧に覆われてきた。霧というよりは雲の中というべきかもしれない。途中以前あった階段コースは崩落のため通行禁止となっていた。武甲山では頭骨大の落石に遭遇したこともあったので、あまり道を外すべきではないだろう。四十丁目石を過ぎると道を石が覆うようになってくる。疲れた体には鬱陶しい。四十五丁目石を過ぎた辺りであれほど鬱陶しかった転石もなくなり、山頂が近いことを窺わせる。四十八丁目石付近には小屋掛けの水場がある。ただ山頂にはトイレがあるので、水質は保証できな
い。
(石が転がる道 ちょっと歩きにくい)
(霧が濃くなる)
(こんな巨木も)
(小屋掛けの水場)
(三十三丁目から四十九丁目まで)
五十丁目石に着いた辺りで人の声が大きくなってきた。まもなく山頂手前の広場に出るはずだが…。と思っていると山頂手前の広場に出た。傍らには五十一丁目石が置かれていた。広場には靄っているにもかかわらず、多くの人が憩っていた。ここは8年前に初めて来たときから人気の山だったんだよなぁ。とりあえず山頂へ向かおう。檜の林を抜けると武甲山御嶽神社の奥宮がある。大きな伽藍だが、自然環境の厳しさ故か、やや古ぼけた感じは禁じ得ない。神社の裏手はフェンスが張られた岩場になっていて、人が入れない所が山頂になっている。山頂の左右には展望台が設けられているが、メインである左手の展望台にだけ寄って行こう。歩きにくい岩場を越えると武甲山の第一展望台(1304)だ。ここも相変わらず人が多い。真っ白で下界は望めないので、さっさと広場に戻ることにしよう。広場の西側には大きな小屋掛けがある。どうせ誰か使っているだろうから、その脇にある切り株に腰を下ろして、カップラーメンを作る。熱々のラーメンを啜っていると何と妻坂峠で出会ったオジサンが声を掛けてきた。もう下ったものかと思っていた。どうやら道がわからなかったようだ。あまりこの辺りの山を登ったことが無いのだろうか?
(五十丁目と五十一丁目)
(山頂手前の広場)
(武甲山御嶽神社)
(武甲山第一展望台)
(小屋掛け 避難小屋としても使えそう)
さて飯も食ったし、そろそろ行くか。疲労が激しいし、無理せず、浦山口へ下るとしよう。武甲山の肩へ出るとここのベンチも人で一杯だ。大雪で浦山口ルートはしばらく通行止めになっていたのだが、流石にもう解除されたようだ。最初はカラマツ林を緩やかに下る。色付きが始まったばかりで、まだ緑の細い葉が目立つ。あと10~14日といったところか。カラマツ林を抜けると低木帯に出る。浦山口ルートは崖地が多いので、あまり余所見はできない。崖地が終わると急な斜面の下りが続く。ここで二組のカップルを追い抜いたが、どちらかというと追い抜くよう促された感も否めない。まあ見晴も何もない所だけれども、もうちょいゆっくり下っても良かったと思う。
(カラマツ林を下る)
(崖地のトラバース)
長者屋敷の頭に着いた所で、いつものように水場へと向かう。今年はどこの水場も水量が多いように感じたのだが、ここはチョロチョロと流れている程度であった。大分踏み跡も崩れてしまったし、水も砂が混じっているように感じる。あまりお勧めはしたくない。長者屋敷の頭から先は春になると桜並木となる。もう桜の紅葉は終わってしまって、カラマツの紅葉が綺麗になるだろう。それなりに見晴らしの良い尾根なのだが、曇天の今日は全く冴えない。図根点の871付近は北側に緩やかな雑木林が広がる。テントでも張ったら気持ち良いんだろうねぇ。道が左に折れると長い九十九折となる。ここは下りでもなかなかしんどい。
(水場)
(長者屋敷尾根)
何とか九十九折を下り切る。沢の合流点となっていて、河原が結構広い。今日は水量が多いので、流れも美しいことだろう。河原へ下りるとカップルや若者が憩っていた。確かにここは良い所だ。橋立川へ流れ込む支流が白い筋となっている。橋立川の本流は両岸が高い壁となっている。夏場ちょっとした沢登りをしたら楽しいのかもしれない。川沿いに砂利道を下っていくと一旦沢を横切る。ここは今年の大雪で橋が壊れたのだが、現在は確りと直されていた。しょっちゅう橋が流されている所なので、大雨の後はこのルートを選ばないのが賢明だろう。
(橋立川)
(橋の崩落個所 大雨後は要注意)
(橋立川の滝 地形図を見た感じここまで行けるルートもありそうなのだが…)
クルマが置ける武甲山登山口には登山届用のポストが設けられていた。御嶽山の事故以後登山届の重要性が見直されているが、そもそも山歩きは計画を立てて成り立つものだ。計画書を作らずに歩けるのは本当に散歩程度のルートに限られるのであって、奥武蔵の山であっても極力計画書を作って歩いてもらいたい。橋立の大岩壁が見えてくれば、浦山口の駅も近い。駅の手前には不動明水と呼ばれる湧き水がある。お金は少し掛かるが、久しぶりに3リットル汲んでいくことにした。ここの水は本当に美味しいと思う。曇天の中の山歩きで展望には恵まれなかったが、その分、武甲山の水の山という一面を楽しむことができた。展望を望まない山歩きも良いものだ、と感じさせた山旅であった。
(林道を行く)
(橋立堂付近の岩壁)
(駅近くの水場 不動明水はガードを潜った先にある)
DATA:
飯能駅(国際興業バス)名郷バス停8:10~9:01妻坂峠登山口~9:25妻坂峠(839)~10:07武甲山八丁目石~10:26不動滝~10:59大杉の広場
~11:45武甲山(1304)12:15~12:38長者屋敷の頭~13:20橋立川(武甲山登り口)~14:15浦山口駅
トイレ 名郷バス停 武甲山山頂
水場 山中(横倉林道分岐)手前 不動滝 長者屋敷の頭 不動明水(浦山口駅近く 200円)
地形図 正丸峠 原市場 秩父