(皇鈴山頂)
今回は奥武蔵の縁辺である外秩父に出かけます。比較的軽いハイキングコースである二本木峠から登谷山と塞神峠から小林山までのルートに釜伏山と金尾山をつなげて歩くことにしました。前半は明るい尾根歩き、後半は樹林帯の里山歩きと異なる魅力を味わうことができます。
久しぶりの休日休み。少々空は曇っていますが、出発します。東武東上線に乗るときはいつも楽しみにしている北坂戸~高坂間からの富士山の眺めも今日はお預け。小川町駅発朝イチのバスで内出バス停に到着。いつも通り出発前の写真を撮ろうとデジカメを起動したところ、レンズが出る途中で動きが止まってしまいます。どうやら故障してしまったようです。うーん、仕方が無い。携帯電話のカメラで記録を取ることにします。
バス停から白石方面へ少し行くと二本木峠への入口があります。板切れを敷いただけの橋で川を渡ると上ノ山集落に入っていきます。明るい集落内は3月終わりから4月にかけて梅・花桃・桜などが色付きます。冬枯れの今頃は花はないものの、陽だまりで良い感じ。
(上ノ山集落)
舗装路と登山道を繰り返しながら高度を上げていくと杉・檜の林に道が続きます。ここからは純然たる山道。薄暗い道ながら風が通らないのでそれほど寒くありません。25分ほど歩くと雑木林に。この明るい陽だまりの道が二本木峠から登谷山までの大きな魅力。左手に秩父高原牧場の牧草地が見えてくれば、二本木峠まではすぐそこ。牧草地上部は良いビュースポット。牧草地から離れて車道に出ると二本木峠です。
(秩父高原牧場の牧草地)
二本木峠からこの先の愛宕山辺りまではヤマツツジの群落地で、見頃は5月10日頃。陽だまりのこの時期は、二本木峠から西に車道を少し下りた農場からの眺めがお薦めです。大霧山と武甲山、秩父市街地に蓑山の眺めが楽しめます。そのまま車道を下りていけば中三沢バス停から西武秩父駅・皆野駅間(三沢線)の西武観光バスを利用することもできます。少々車道歩きが長いですが(約2時間)、エスケープとして貴重だと思います。
(農場からの眺め 左は大霧山 中央は武甲山)
愛宕山へは今日初めての土留めの木段を登ります。木段脇も全てヤマツツジです。小さな天文ドームを見送ると愛宕山の頂上(654.8)です。樹林に囲まれた山頂ですが、南側は天文ドーム越しに展望が広がります。皇鈴山方面を見ると木の間越しに皇鈴山の様子が窺えます。何やら西側斜面が大きく切り開かれているようです。後でちょっと寄ってみましょう。
(愛宕山から天文ドーム方面を望む)
木段を下り、車道を横切ると再び木段が登場。どうも関東ふれあいの道になると木段が多いようで。でも木段を登りきれば明るい陽だまりの道が続きます。小ピークを越えて鞍部へ下りると先ほどの切り開きに出られる小道が出来ています。いつも皇鈴山に来るたびに気になっていた切り開きへ初めて入ってみます。小さな潅木の生えた広場の脇には車一台が通れそうな広い道が上へ向かって延びています。潅木は噂によると花桃だとか。
(陽だまりの尾根道)
(皇鈴山西斜面の切り開き 左の潅木が花桃という噂)
広い道を登っていくと南に大きな展望が広がります。尖った大霧山と武甲山が見えます。道が途切れると周囲は木の生えていない原野となっていて、大きく横たわる蓑山の向こうに両神山のギザギザのシルエットが見えます。南西側は武甲山の右下に秩父の市街地が望めます。
(手前が蓑山 奥のシルエットが両神山)
さてここはおそらく山頂直下の辺りなはず。東に斜面を適当に登っていくと山頂手前の尾根に出ます。10mくらいで皇鈴山頂上(679)です。高い木に囲まれた山頂も冬枯れの時期は明るい雰囲気です。東屋のベンチに腰を下ろすとここからも蓑山と両神山が望めます。少し位置をずらせば城峯山と鍵掛城、御荷鉾山なども見えます。下に見えるロープウェイの付いた山は宝登山。冬枯れの時期限定の素晴しい展望です。広い山頂に私一人で静かな朝食を楽しみます。
(皇鈴山からの眺め 手前が蓑山)
(手前中央に宝登山 城峯山と御荷鉾山も見える)
遅い朝食を終えて登谷山を目指します。小ピークを越えると東側が大きな崖地になっています。ここも東秩父や寄居の市街地が望めるビュースポット。これから向かう登谷山や釜伏山を眺めながら下ると車道に出ます。車道が乗り越す峠はグミの木峠。東へ車道を下っていけば花桃の里で有名な上ノ貝戸集落に出ます。見頃は3月終わりで、東秩父村営バスの井草バス停までは峠から1時間半ほど。寄居駅か和紙の里へ出られます。
(登谷山 左奥に釜伏山)
グミの木峠を横切ると緩やかな尾根道が続きます。西側は広い牧草地で木立越しに展望が得られます。山頂直下の急登りをこなすと登谷山頂上(668)に到着。初老の男性が一人、山座同定を楽しんでいました。今日は少し暖かいせいか遠くの山はシルエットの状態。それでも北側は榛名山、谷川岳、赤城山、燧ケ岳、日光白根山、男体山などが見えています。東には雲の上に薄っすら筑波山。南は電波塔の建つ皇鈴山の向こうに大霧山・笠山・堂平山の比企三山が大きい。唯一西側が電波塔で遮られているのが残念なところ。男性は近くに住んでいるらしく、毎週のように来ているとのこと。望遠鏡を覗かせていただきました。
(奥の尾根は鐘撞堂山 奥のシルエットは赤城山)
(皇鈴山を振り返る)
登谷山で予想以上に時間を食ってしまったので、先へ急ぎます。簡易舗装された道を西に下ると登谷高原牧場に出ます。現在はダチョウの飼育に使われているようで、売店やトイレなどは閉鎖されたままです。牧場から釜伏峠まではしばし車道歩き。秩父盆地を眺めながら下っていきます。車道の乗り越す釜伏峠は樹林に囲まれた薄暗い所。釜山神社の参道に入り、境内奥で今日初めてのトイレタイム。今回のルート、トイレは内出バス停近くとこの釜山神社にしかありません。
(車道から秩父盆地を望む)
神社の拝殿でお参りを済ませたら、拝殿脇の登山道を登っていきます。すると尾根は二手に分かれ、道標は塞神峠と日本水(やまとみず)を指しています。釜伏山へは日本水方面に尾根を下っていきます。木の間越しに見える山容はそれほど大きくありません。東屋のある鞍部からは岩の露出した急登りになります。この山は蛇紋岩といわれる緑色をした岩で出来ていて、濡れていると滑りやすい性質を持っています。今日も霜が降りたせいか、時々ズルっと滑ってしまいます。ただ標高差はないので、すぐに山頂(582)に到着してしまいます。樹林に囲まれた山頂は奥の院である祠と二体の狛犬が置かれているだけです。かつて木に括られていた山頂プレートは祠に置かれていました。山頂から少し北へ行った所に展望台がありますが、木が大きくなって、展望は殆ど得られません。
(蛇紋岩の斜面)
山頂からは往路を慎重に戻ります。先ほどの岩場は登るよりも下るほうが数倍難しいです。土留めの木段を登り返し、分岐を塞神峠方面へ向かいます。季節感のない植林帯を抜けると車道に出ます。塞神峠よりは遥か手前、591のピークの北辺りです。「奥武蔵山歩き一周トレール」(かもがわ出版)ではこの591のピークを釜伏山雌釜としています。この本には登路があるようですが、さてどこから取り付いたものか。東に延びる尾根から取り付けそうですが、薄の生える湿地帯であまり突っ込みたくない藪です。かといって北に延びる尾根はかなり傾斜が急そうです。付近をウロウロしていると「ゴミの投棄禁止」と書かれた看板脇辺りの藪が薄そうです。藪に突っ込むと意外にも人一人分の切り分けがあります。傾斜はかなり急ですが、薄く踏み跡も付いているので遮二無二登っていきます。一旦小ピークを越すと狭い591のピークの頂上です。山頂プレートがあり、荻根山と書かれています。
(薄の生える湿地帯)
(取り付き地点)
(荻根山のプレート)
尾根は更に南へと延びているようですが、ここは安全に往路を戻ることにします。木につかまりながら車道へと下りてきました。時間的には10分も掛からなかったようです。車道を進み北側の尾根に近づくと荻根山の登山口が出来ていました。ただパワースポット云々電波系の雰囲気が漂い、あまり係わり合いになりたくない感じです。日本水入口付近は宝登山や城峯山の展望が得られるこの尾根最後のビュースポット。車道が大きく右へカーヴすると広い塞神峠に着きます。この峠に来るのは今回で三度目。今日は初めて正面の山道を登っていきます。
(パワースポット…)
(車道から宝登山・城峯山の眺め)
(塞神峠)
山道に入ると周囲は気持ちの良い雑木林。465のピークを東に巻きながら仙元峠へ下っていきます。途中木が低くなっている所があり、これから進む尾根が見えるビュースポットがあります。ただ展望が得られるのはここくらいで、これから先は展望のない尾根が続きます。周囲が植林に囲まれた鞍部が仙元峠です。石造の標柱と祠がある落ち着いた所です。傍らにはこれまた石造の道標があり、蕪木と葉原峠を指しています。この先踏み跡を漫然と進むと峠道を下ってしまう可能性があるので、できるだけ地形図+コンパスかこの道標で方向を確認しながら進まれると良いでしょう。
(これから歩く尾根を望む)
(仙元峠)
(行く先々で登場する石造の道標)
仙元峠からも植林帯が続きます。薄暗い道ですが、不思議とあまり恐さを感じません。常に木の間越しに下界の景色が見えているのに加え、道に人の手が掛けられているのを感じるからでしょう。塞神峠から先はそうした生活臭を色濃く感じます。この尾根を挟んだ集落一帯はかつて風布村と呼ばれた一つの村で、秩父事件の際には全戸が参加したといいます。それだけ交流があった訳ですから、往時はこの尾根を多くの住民が越えていったのでしょう。今でも綺麗に整備された道を見ると住民が道を大事にしていることが窺えます。
再び鞍部に下りるとまたも道標があります。この辺りはやや変則的な道となっているようです。505のピークは東に巻き道が付いていますが、念のため寄ってみると大神部山と標識が付けてありました。落葉樹に囲まれた明るいピークですが展望はありません。再び植林帯となった道を下っていくと車道の乗り越す葉原峠です。情緒は微塵も感じさせませんが、道標だけは沢山設けてあります。ただこれから向かう小林山へは案内はありません。向かい側の尾根に踏み跡があるだけです。
(大神部山)
その踏み跡に足を踏み入れると植林帯の緩やかな尾根となっています。しばらく進むと踏み跡は二手に分かれます。右手はおそらくエアリアに描かれた林道へとつながる道でしょう。左手の尾根道を上がると傾斜が急になり、踏み跡が薄くなります。適当に上を目指して登ると三角点のある平坦地に出ます。小林山頂上(538.6)です。三角点より少し北に蒲鉾板で出来ているとの噂の山頂プレートが健在でした。
(小林山)
地形図を見てもらうと分かり易いのですが、三角点から北の521のピークまで広い尾根が広がっています。そこで小林山は別名大平山(おおだいらやま)と呼ばれています。今日はその521のピークまで行くつもりです。北西に延びる踏み跡を進むとなるほど平らな尾根が広がっています。エアリアに描かれた林道が踏み跡の直ぐ側まで上がってきていました。植林帯を抜けると雑木林で道はどんどん下っていきます。521のピークには標石があるだけのシンプルなピークです。期待した展望は得られませんでした。ここからは尾根に沿って左右に道が分かれています。左はおそらく樋口駅へ下るものと思われますが、今日は予定通り右の金尾に下っていきます。
金尾への道は秩父鉄道が開催するハイキングイベントに使われるルートですが、詳しいルートがよくわかりません。とりあえず赤テープに誘われて下ると雑木林の中にトラロープが現れます。ネットで言われるロープ場とはこのことでしょう。ロープが無くても十分下れる感じはします。ところがロープ場が終わると途端に踏み跡が無くなります。北に下ってみますがどう考えても麓にあるゴルフ場の長瀞カントリークラブに出るだけです。尾根に戻って北東に下りると今度は潅木の藪に引掻かれます。藪を強引に突破するとゴルフ場の柵に突き当たってしまいました。出来ればゴルフ場には入りたくないので柵に沿ってトラバースしていきます。するとやたらとゴルフボールが落ちている斜面に出ます。うわっ、練習場の上に出てしまったらしい。ゴルフボールが飛んでこないことを祈りつつトラバースを続けると上部が切り開きとなっているようです。切り開きに乗り上げるとエアリアに描かれた林道に出ました。うーん、結局山頂直下まで来ていた林道を使えということなのでしょうか。
(ロープ場)
林道だけあって車一台くらいの幅がありますが、歩く分には普通の登山道と変わりません。どんどん下っていけるのは確かですが、今一つ信頼が持てません。自分で方向を決めて下りるのと違って何処に下りるのかわからないので不安があります。途中山でよく見る鉄塔管理用の黄色い標柱があったので、管理道としても利用されているのでしょう。山側に竹林が現れると舗装道路に出ます。何故だか安心しました。舗装路から林道への分岐には猪罠注意の看板が立っています。猪の代わりに罠に掛からなくて良かったぁ~。
(山道のような林道)
舗装路を下りていくと樹林が切れて、民家のある集落に出ました。秩父鉄道の貨車が通っているのも見えます。どうやら無事に金尾へ下ることができたようです。柚子がたわわに生った集落を下っていくと向かいの山の斜面に大きな建物が見えます。金山温泉のあるかんぽの宿寄居です。ああっ、早く風呂に入りたい!しばらく下りていくとお堂の前に出ます。秩父鉄道のハイキングイベントで紹介される金尾十王堂です。やはりあの林道を使うのか…。なら三角点ピークの近くから下ったほうが安全でしょうね。
(柚子の木 奥の建物はかんぽの宿寄居)
(金尾十王堂)
寄居橋の手前まであと少しで温泉だ、と思ったところで道標を見て思い出します。そういえば金尾山に登るんだったっけな…。温泉は我慢してそのまま車道を北に登っていきます。途中近道を進み、車が激しく行き交う車道を横切ります。擁壁沿いに進むと金尾つつじ山入口と書かれた看板があり、階段を登るとヤマツツジの植えられた広場に出ます。説明板によると鉢形城の支城要害城があった所で、昔からつつじの自生地だったそうです。ツツジの斜面に付けられた木段を登ると愛宕神社のある金尾山頂上(229)に出ます。ここからも荒川と秩父鉄道、かんぽの宿寄居などが良く見えます。
(愛宕神社前から寄居中心街方面)
愛宕神社裏手にはやぐらがあり、360度の展望が得られます。特に荒川対岸の北武蔵の山々はここに上がらないと見られません。やぐらの下のベンチで風の強くなる中、遅い昼食を取りました。
(西側の眺め)
往路を戻り、寄居橋を渡ると小さな踏切があります。そこを渡り、線路沿いに進むと斜度の急な車道が延びています。そこを登っていくと念願のかんぽの宿寄居(金山温泉)です。お風呂は6階にあり、展望は抜群です。施設は内湯と露天だけですが、お湯はアルカリ性でかなりぬるぬるします。ここなら一日浸かっているのも気持ち良いだろうねぇ。温泉を出た後は波久礼駅から電車に乗って帰宅しました。帰宅してから気付いたのですが、デジカメは寒さに弱いんでしたね。しっかり使えるようになっていました。今度はポケットにでも入れておこうかなぁ。
今回歩いてみた感じたのは結構道のりが長かったということ。二本木峠から歩くのであれば金尾山はカットしたほうがよいでしょう。小林山からの下りは踏み跡を見失ったこともあり、個人的には山頂直下の林道を利用するのがお薦めです。無理に521のピークから下ることもないと思います。あと皇鈴山西側斜面は私有地っぽいのでみだりに入ってよいか迷います。管理者がいるときは許可を取ってから入るほうが良いでしょう。
DATA:
小川町駅(イーグルバス20分)7:34内出バス停~8:46二本木峠~9:20皇鈴山~9:46登谷山
~10:19釜伏峠~10:38釜伏山~11:08荻根山~11:29塞神峠~11:36仙元峠~11:56大神部山
~12:02葉原峠~12:13小林山~13:21金尾十王堂~13:44金尾山~かんぽの宿寄居~16:26波久礼駅
イーグルバス 小川町駅~内出 450円
かんぽの宿寄居 日帰り入浴料金 800円
地形図 安戸 寄居
山と高原地図 「奥武蔵 秩父」2010年度版
今回は奥武蔵の縁辺である外秩父に出かけます。比較的軽いハイキングコースである二本木峠から登谷山と塞神峠から小林山までのルートに釜伏山と金尾山をつなげて歩くことにしました。前半は明るい尾根歩き、後半は樹林帯の里山歩きと異なる魅力を味わうことができます。
久しぶりの休日休み。少々空は曇っていますが、出発します。東武東上線に乗るときはいつも楽しみにしている北坂戸~高坂間からの富士山の眺めも今日はお預け。小川町駅発朝イチのバスで内出バス停に到着。いつも通り出発前の写真を撮ろうとデジカメを起動したところ、レンズが出る途中で動きが止まってしまいます。どうやら故障してしまったようです。うーん、仕方が無い。携帯電話のカメラで記録を取ることにします。
バス停から白石方面へ少し行くと二本木峠への入口があります。板切れを敷いただけの橋で川を渡ると上ノ山集落に入っていきます。明るい集落内は3月終わりから4月にかけて梅・花桃・桜などが色付きます。冬枯れの今頃は花はないものの、陽だまりで良い感じ。
(上ノ山集落)
舗装路と登山道を繰り返しながら高度を上げていくと杉・檜の林に道が続きます。ここからは純然たる山道。薄暗い道ながら風が通らないのでそれほど寒くありません。25分ほど歩くと雑木林に。この明るい陽だまりの道が二本木峠から登谷山までの大きな魅力。左手に秩父高原牧場の牧草地が見えてくれば、二本木峠まではすぐそこ。牧草地上部は良いビュースポット。牧草地から離れて車道に出ると二本木峠です。
(秩父高原牧場の牧草地)
二本木峠からこの先の愛宕山辺りまではヤマツツジの群落地で、見頃は5月10日頃。陽だまりのこの時期は、二本木峠から西に車道を少し下りた農場からの眺めがお薦めです。大霧山と武甲山、秩父市街地に蓑山の眺めが楽しめます。そのまま車道を下りていけば中三沢バス停から西武秩父駅・皆野駅間(三沢線)の西武観光バスを利用することもできます。少々車道歩きが長いですが(約2時間)、エスケープとして貴重だと思います。
(農場からの眺め 左は大霧山 中央は武甲山)
愛宕山へは今日初めての土留めの木段を登ります。木段脇も全てヤマツツジです。小さな天文ドームを見送ると愛宕山の頂上(654.8)です。樹林に囲まれた山頂ですが、南側は天文ドーム越しに展望が広がります。皇鈴山方面を見ると木の間越しに皇鈴山の様子が窺えます。何やら西側斜面が大きく切り開かれているようです。後でちょっと寄ってみましょう。
(愛宕山から天文ドーム方面を望む)
木段を下り、車道を横切ると再び木段が登場。どうも関東ふれあいの道になると木段が多いようで。でも木段を登りきれば明るい陽だまりの道が続きます。小ピークを越えて鞍部へ下りると先ほどの切り開きに出られる小道が出来ています。いつも皇鈴山に来るたびに気になっていた切り開きへ初めて入ってみます。小さな潅木の生えた広場の脇には車一台が通れそうな広い道が上へ向かって延びています。潅木は噂によると花桃だとか。
(陽だまりの尾根道)
(皇鈴山西斜面の切り開き 左の潅木が花桃という噂)
広い道を登っていくと南に大きな展望が広がります。尖った大霧山と武甲山が見えます。道が途切れると周囲は木の生えていない原野となっていて、大きく横たわる蓑山の向こうに両神山のギザギザのシルエットが見えます。南西側は武甲山の右下に秩父の市街地が望めます。
(手前が蓑山 奥のシルエットが両神山)
さてここはおそらく山頂直下の辺りなはず。東に斜面を適当に登っていくと山頂手前の尾根に出ます。10mくらいで皇鈴山頂上(679)です。高い木に囲まれた山頂も冬枯れの時期は明るい雰囲気です。東屋のベンチに腰を下ろすとここからも蓑山と両神山が望めます。少し位置をずらせば城峯山と鍵掛城、御荷鉾山なども見えます。下に見えるロープウェイの付いた山は宝登山。冬枯れの時期限定の素晴しい展望です。広い山頂に私一人で静かな朝食を楽しみます。
(皇鈴山からの眺め 手前が蓑山)
(手前中央に宝登山 城峯山と御荷鉾山も見える)
遅い朝食を終えて登谷山を目指します。小ピークを越えると東側が大きな崖地になっています。ここも東秩父や寄居の市街地が望めるビュースポット。これから向かう登谷山や釜伏山を眺めながら下ると車道に出ます。車道が乗り越す峠はグミの木峠。東へ車道を下っていけば花桃の里で有名な上ノ貝戸集落に出ます。見頃は3月終わりで、東秩父村営バスの井草バス停までは峠から1時間半ほど。寄居駅か和紙の里へ出られます。
(登谷山 左奥に釜伏山)
グミの木峠を横切ると緩やかな尾根道が続きます。西側は広い牧草地で木立越しに展望が得られます。山頂直下の急登りをこなすと登谷山頂上(668)に到着。初老の男性が一人、山座同定を楽しんでいました。今日は少し暖かいせいか遠くの山はシルエットの状態。それでも北側は榛名山、谷川岳、赤城山、燧ケ岳、日光白根山、男体山などが見えています。東には雲の上に薄っすら筑波山。南は電波塔の建つ皇鈴山の向こうに大霧山・笠山・堂平山の比企三山が大きい。唯一西側が電波塔で遮られているのが残念なところ。男性は近くに住んでいるらしく、毎週のように来ているとのこと。望遠鏡を覗かせていただきました。
(奥の尾根は鐘撞堂山 奥のシルエットは赤城山)
(皇鈴山を振り返る)
登谷山で予想以上に時間を食ってしまったので、先へ急ぎます。簡易舗装された道を西に下ると登谷高原牧場に出ます。現在はダチョウの飼育に使われているようで、売店やトイレなどは閉鎖されたままです。牧場から釜伏峠まではしばし車道歩き。秩父盆地を眺めながら下っていきます。車道の乗り越す釜伏峠は樹林に囲まれた薄暗い所。釜山神社の参道に入り、境内奥で今日初めてのトイレタイム。今回のルート、トイレは内出バス停近くとこの釜山神社にしかありません。
(車道から秩父盆地を望む)
神社の拝殿でお参りを済ませたら、拝殿脇の登山道を登っていきます。すると尾根は二手に分かれ、道標は塞神峠と日本水(やまとみず)を指しています。釜伏山へは日本水方面に尾根を下っていきます。木の間越しに見える山容はそれほど大きくありません。東屋のある鞍部からは岩の露出した急登りになります。この山は蛇紋岩といわれる緑色をした岩で出来ていて、濡れていると滑りやすい性質を持っています。今日も霜が降りたせいか、時々ズルっと滑ってしまいます。ただ標高差はないので、すぐに山頂(582)に到着してしまいます。樹林に囲まれた山頂は奥の院である祠と二体の狛犬が置かれているだけです。かつて木に括られていた山頂プレートは祠に置かれていました。山頂から少し北へ行った所に展望台がありますが、木が大きくなって、展望は殆ど得られません。
(蛇紋岩の斜面)
山頂からは往路を慎重に戻ります。先ほどの岩場は登るよりも下るほうが数倍難しいです。土留めの木段を登り返し、分岐を塞神峠方面へ向かいます。季節感のない植林帯を抜けると車道に出ます。塞神峠よりは遥か手前、591のピークの北辺りです。「奥武蔵山歩き一周トレール」(かもがわ出版)ではこの591のピークを釜伏山雌釜としています。この本には登路があるようですが、さてどこから取り付いたものか。東に延びる尾根から取り付けそうですが、薄の生える湿地帯であまり突っ込みたくない藪です。かといって北に延びる尾根はかなり傾斜が急そうです。付近をウロウロしていると「ゴミの投棄禁止」と書かれた看板脇辺りの藪が薄そうです。藪に突っ込むと意外にも人一人分の切り分けがあります。傾斜はかなり急ですが、薄く踏み跡も付いているので遮二無二登っていきます。一旦小ピークを越すと狭い591のピークの頂上です。山頂プレートがあり、荻根山と書かれています。
(薄の生える湿地帯)
(取り付き地点)
(荻根山のプレート)
尾根は更に南へと延びているようですが、ここは安全に往路を戻ることにします。木につかまりながら車道へと下りてきました。時間的には10分も掛からなかったようです。車道を進み北側の尾根に近づくと荻根山の登山口が出来ていました。ただパワースポット云々電波系の雰囲気が漂い、あまり係わり合いになりたくない感じです。日本水入口付近は宝登山や城峯山の展望が得られるこの尾根最後のビュースポット。車道が大きく右へカーヴすると広い塞神峠に着きます。この峠に来るのは今回で三度目。今日は初めて正面の山道を登っていきます。
(パワースポット…)
(車道から宝登山・城峯山の眺め)
(塞神峠)
山道に入ると周囲は気持ちの良い雑木林。465のピークを東に巻きながら仙元峠へ下っていきます。途中木が低くなっている所があり、これから進む尾根が見えるビュースポットがあります。ただ展望が得られるのはここくらいで、これから先は展望のない尾根が続きます。周囲が植林に囲まれた鞍部が仙元峠です。石造の標柱と祠がある落ち着いた所です。傍らにはこれまた石造の道標があり、蕪木と葉原峠を指しています。この先踏み跡を漫然と進むと峠道を下ってしまう可能性があるので、できるだけ地形図+コンパスかこの道標で方向を確認しながら進まれると良いでしょう。
(これから歩く尾根を望む)
(仙元峠)
(行く先々で登場する石造の道標)
仙元峠からも植林帯が続きます。薄暗い道ですが、不思議とあまり恐さを感じません。常に木の間越しに下界の景色が見えているのに加え、道に人の手が掛けられているのを感じるからでしょう。塞神峠から先はそうした生活臭を色濃く感じます。この尾根を挟んだ集落一帯はかつて風布村と呼ばれた一つの村で、秩父事件の際には全戸が参加したといいます。それだけ交流があった訳ですから、往時はこの尾根を多くの住民が越えていったのでしょう。今でも綺麗に整備された道を見ると住民が道を大事にしていることが窺えます。
再び鞍部に下りるとまたも道標があります。この辺りはやや変則的な道となっているようです。505のピークは東に巻き道が付いていますが、念のため寄ってみると大神部山と標識が付けてありました。落葉樹に囲まれた明るいピークですが展望はありません。再び植林帯となった道を下っていくと車道の乗り越す葉原峠です。情緒は微塵も感じさせませんが、道標だけは沢山設けてあります。ただこれから向かう小林山へは案内はありません。向かい側の尾根に踏み跡があるだけです。
(大神部山)
その踏み跡に足を踏み入れると植林帯の緩やかな尾根となっています。しばらく進むと踏み跡は二手に分かれます。右手はおそらくエアリアに描かれた林道へとつながる道でしょう。左手の尾根道を上がると傾斜が急になり、踏み跡が薄くなります。適当に上を目指して登ると三角点のある平坦地に出ます。小林山頂上(538.6)です。三角点より少し北に蒲鉾板で出来ているとの噂の山頂プレートが健在でした。
(小林山)
地形図を見てもらうと分かり易いのですが、三角点から北の521のピークまで広い尾根が広がっています。そこで小林山は別名大平山(おおだいらやま)と呼ばれています。今日はその521のピークまで行くつもりです。北西に延びる踏み跡を進むとなるほど平らな尾根が広がっています。エアリアに描かれた林道が踏み跡の直ぐ側まで上がってきていました。植林帯を抜けると雑木林で道はどんどん下っていきます。521のピークには標石があるだけのシンプルなピークです。期待した展望は得られませんでした。ここからは尾根に沿って左右に道が分かれています。左はおそらく樋口駅へ下るものと思われますが、今日は予定通り右の金尾に下っていきます。
金尾への道は秩父鉄道が開催するハイキングイベントに使われるルートですが、詳しいルートがよくわかりません。とりあえず赤テープに誘われて下ると雑木林の中にトラロープが現れます。ネットで言われるロープ場とはこのことでしょう。ロープが無くても十分下れる感じはします。ところがロープ場が終わると途端に踏み跡が無くなります。北に下ってみますがどう考えても麓にあるゴルフ場の長瀞カントリークラブに出るだけです。尾根に戻って北東に下りると今度は潅木の藪に引掻かれます。藪を強引に突破するとゴルフ場の柵に突き当たってしまいました。出来ればゴルフ場には入りたくないので柵に沿ってトラバースしていきます。するとやたらとゴルフボールが落ちている斜面に出ます。うわっ、練習場の上に出てしまったらしい。ゴルフボールが飛んでこないことを祈りつつトラバースを続けると上部が切り開きとなっているようです。切り開きに乗り上げるとエアリアに描かれた林道に出ました。うーん、結局山頂直下まで来ていた林道を使えということなのでしょうか。
(ロープ場)
林道だけあって車一台くらいの幅がありますが、歩く分には普通の登山道と変わりません。どんどん下っていけるのは確かですが、今一つ信頼が持てません。自分で方向を決めて下りるのと違って何処に下りるのかわからないので不安があります。途中山でよく見る鉄塔管理用の黄色い標柱があったので、管理道としても利用されているのでしょう。山側に竹林が現れると舗装道路に出ます。何故だか安心しました。舗装路から林道への分岐には猪罠注意の看板が立っています。猪の代わりに罠に掛からなくて良かったぁ~。
(山道のような林道)
舗装路を下りていくと樹林が切れて、民家のある集落に出ました。秩父鉄道の貨車が通っているのも見えます。どうやら無事に金尾へ下ることができたようです。柚子がたわわに生った集落を下っていくと向かいの山の斜面に大きな建物が見えます。金山温泉のあるかんぽの宿寄居です。ああっ、早く風呂に入りたい!しばらく下りていくとお堂の前に出ます。秩父鉄道のハイキングイベントで紹介される金尾十王堂です。やはりあの林道を使うのか…。なら三角点ピークの近くから下ったほうが安全でしょうね。
(柚子の木 奥の建物はかんぽの宿寄居)
(金尾十王堂)
寄居橋の手前まであと少しで温泉だ、と思ったところで道標を見て思い出します。そういえば金尾山に登るんだったっけな…。温泉は我慢してそのまま車道を北に登っていきます。途中近道を進み、車が激しく行き交う車道を横切ります。擁壁沿いに進むと金尾つつじ山入口と書かれた看板があり、階段を登るとヤマツツジの植えられた広場に出ます。説明板によると鉢形城の支城要害城があった所で、昔からつつじの自生地だったそうです。ツツジの斜面に付けられた木段を登ると愛宕神社のある金尾山頂上(229)に出ます。ここからも荒川と秩父鉄道、かんぽの宿寄居などが良く見えます。
(愛宕神社前から寄居中心街方面)
愛宕神社裏手にはやぐらがあり、360度の展望が得られます。特に荒川対岸の北武蔵の山々はここに上がらないと見られません。やぐらの下のベンチで風の強くなる中、遅い昼食を取りました。
(西側の眺め)
往路を戻り、寄居橋を渡ると小さな踏切があります。そこを渡り、線路沿いに進むと斜度の急な車道が延びています。そこを登っていくと念願のかんぽの宿寄居(金山温泉)です。お風呂は6階にあり、展望は抜群です。施設は内湯と露天だけですが、お湯はアルカリ性でかなりぬるぬるします。ここなら一日浸かっているのも気持ち良いだろうねぇ。温泉を出た後は波久礼駅から電車に乗って帰宅しました。帰宅してから気付いたのですが、デジカメは寒さに弱いんでしたね。しっかり使えるようになっていました。今度はポケットにでも入れておこうかなぁ。
今回歩いてみた感じたのは結構道のりが長かったということ。二本木峠から歩くのであれば金尾山はカットしたほうがよいでしょう。小林山からの下りは踏み跡を見失ったこともあり、個人的には山頂直下の林道を利用するのがお薦めです。無理に521のピークから下ることもないと思います。あと皇鈴山西側斜面は私有地っぽいのでみだりに入ってよいか迷います。管理者がいるときは許可を取ってから入るほうが良いでしょう。
DATA:
小川町駅(イーグルバス20分)7:34内出バス停~8:46二本木峠~9:20皇鈴山~9:46登谷山
~10:19釜伏峠~10:38釜伏山~11:08荻根山~11:29塞神峠~11:36仙元峠~11:56大神部山
~12:02葉原峠~12:13小林山~13:21金尾十王堂~13:44金尾山~かんぽの宿寄居~16:26波久礼駅
イーグルバス 小川町駅~内出 450円
かんぽの宿寄居 日帰り入浴料金 800円
地形図 安戸 寄居
山と高原地図 「奥武蔵 秩父」2010年度版
こうして読んでみると、距離的にはすいぶん長いですね。私は4年前でしたが皇鈴山西面や小林山などは寄らずに一般ルートでした。
塞神峠付近でしたか、ちょっと場所は忘れましたが、あのあたりにゴヨウツツジ自生地という表示があった記憶があります。
秩父でも、この荒川流域の部分は静かで、独特な味がありますね。