ハラスメント・いじめ問題を考えましょう

大阪地裁染髪禁止校則裁判の判決を読む(その2・頭髪指導は違法か)

大阪地裁染髪禁止校則裁判の判決を読む(その1)に続いて

判決の争点(2)学校の頭髪指導は違法か、についての判決を読んでみましょう。

 

その1でも挙げましたが、この高校の染髪禁止の校則違反に対する

指導方針は次のようなものだったということです。

 

「頭髪検査の結果、校則に違反しているときは、

 原則として4日以内に手直し(地毛の色に染め戻すこと)を

 しなければならない。それがされない場合や不十分な場合は、

 さらに4日以内に手直しをしなければならない。

 指導を拒否していると見られる場合には、

 厳重注意、特別指導、出席停止等の措置を講じる。」

 

原告は、この指導方針は不合理であると主張したのに対し、

裁判所は、

「4日に1回の指導は生徒に過度の負担を課すものではない。」

「出席停止は頭髪指導を拒否し続けた生徒に対する

    最終的な手段として予定されているにすぎない。」

という理由で不合理ではないとしました。

 

この指導方針の問題は、指導に応じなかった場合の

厳重注意、特別指導、出席停止等の措置をどう考えるかにあります。

高校での懲戒処分として

学校教育法・学校教育法施行規則に規定されているのは

退学停学訓告です。

それ以外の懲戒は、事実行為としての懲戒と言われています。

それは、自主退学・自宅謹慎・学校内謹慎・別室指導・校長説諭

などです(文科省平成20年3月10日付け通知)。

 

この高校の染髪禁止校則違反に対しては出席停止等と規定されています。

判決は、出席停止は最終的な手段として予定されているとするだけで

出席停止までを規定することが違法かどうかについては書かれていません。

この点は、その1で書きましたが、染髪禁止の校則違反に対して

このような懲戒措置をとることを規定するのであれば

染髪による生徒への教育上、学校生活上の悪影響を

具体的に根拠付ける必要があるでしょう。

 

さて、争点(2)はこの高校での実際の頭髪指導が違法かどうかでした。

判決の頭髪指導についての事実認定は次のようなものです。

 

女子生徒(原告)は、1年生の時、何回か頭髪指導を受けたのですが

そのときは指導にしたがって黒く染めたということです。

なお1年生の女子生徒の成績はいずれの科目も

5段階の5か4だったということです。

 

女子生徒は、2年生の1学期と夏休みにも頭髪指導を受け

2学期に入っても頭髪指導を受けたのですが、それに従わなかったため

9月上旬に、学年主任から、このままでは別室指導にする、

文化祭などの課外活動も他の友人と一緒に参加できないと通告されました。

その翌日から女子生徒は登校しませんでした。

 

また9月下旬に、教頭から、頭髪指導に従わない場合には

修学旅行に参加しても他の生徒とは別行動にすると通告されました。

文化祭や修学旅行は学校の外部との接点が生じます。

学校としては外部者に、学校に染髪した生徒がいることを

見られたくないという考えもあったかもしれません。

 

このような頭髪指導に対し、裁判所は、違法とはいえないとしました。

これらの頭髪指導は合理性があり、教員らの有する

教育的指導における裁量の範囲を逸脱していないというのが理由です。

 

この頭髪指導についてはどう考えればよいのでしょうか。

ここで問題になるのは、染髪禁止の校則に従わない生徒に対し

文化祭などの課外活動の共同参加や

修学旅行の共同行動を認めない措置をとると通告することが

違反の程度とペナルティの程度のバランスに

欠けていなかったかどうかです。

 

この点を考えるときの議論の出発点は

教員の裁量というのはどういうものかということでしょう。

その上で、本件での文化祭や修学旅行についての通告が

裁量の範囲内と言えるのかを考えることになります。

 

しかし判決には、教員の教育的指導における裁量とは

どういうものかについては何も書かれていません。

 

裁判所の結論に至る検討過程を正確に理解するためにも

教員の教育的指導における裁量とはどういうものか

文化祭や修学旅行についての通告が裁量の範囲内といえるのはなぜかを

判決にもう少し詳しく書いてほしかったと思います。


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