あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

回収の理由

2024-12-26 | 本(文庫本)
宮部みゆきさんの『子宝船 きたきた捕物帖(二)』を読みました。
待ってましたの第二弾。北一の成長ぶりを見ることができるし、北一をとりまく人々の情や心意気をたっぷりと感じることができる時代物です。

「その絵を持つ者は子宝に恵まれる」と評判の宝船の絵だが、子宝に恵まれてもすぐに赤子を亡くした家の宝船の絵から、七福神のうちの弁財天が消えていたという。生業の文庫づくりと岡っ引き修行で毎日がてんてこ舞いの北一ではあるが、この噂の真相を確かめようとする。時を置かずして北一も贔屓にしていた弁当屋の一家が毒殺される事件が起きる。事件現場で怪しげな女を目撃した北一は……。

見事な物語構成とグイグイ引き付ける表現、人生の機微を丁寧に描くところは益々冴えています。文庫本いっぱいに泣きたくなるくらいの暖かな人情が溢れています。
そして「アッチャー」と思わずおでこを叩いてしまったのは、『初ものがたり』から『桜ほうさら』、そして本作へとするっとつながっているところ。政五郎親分やおでこさんにもこの作品で会えます。
それぞれの作品を読んでいるときはまさかつながるとは思いもせず、こんなことをやってのける宮部さんに脱帽するしかないのです。まったく、あなたって人は!

しかしこの伊坂作品みたいな見事な「伏線回収」には理由があるようでした。
本作を読み終わった後、巻末に収められている対談でみやべさんは「伏線をすべて回収します」とおっしゃっています。どうやら宮部さんは作家としての終活を考えているようなんです。
これ、読後の感動が吹っ飛んでしまうくらいショックでした。終活って、まだそんなこと言わないでよ。

人生の仕舞い方、本当なら私もちゃんと考えなきゃいけない年齢になっているのかもしれません。考えなきゃいけないのかな。でも見渡してみても、仕舞わなきゃいけないことや伏線回収しなきゃいけないこともないし。どうすればいいのさ、私。
何にしても、宮部さんにはまだまだたくさんの作品を読ませてもらいたく、心からお願いします。

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