クラシック

土曜日の朝、ラジオを聴いていてキース・エマーソンの訃報を知った。あまりの衝撃に「うそでしょ！」と声が出た。
来月、来日公演があるんだけど。チケットがちょっとお高めで躊躇したけど、昔のシンセサイザーを使うってことだったので、行く予定にしていた。
しばらくして彼の死が銃による自殺だったと伝えられた。病気のために右手の指2本が動かせなくなって、鬱状態だったらしい。『家に銃がある環境だったのか』と、残念に思うばかりであり、ちょっと前に読んだ森鴎外の小説の一部分を思いだした。

…この時になって急になんとも言えないほど心細く寂しくなった。例えばこれまで自由に動かすことができた手足が、ふいと動かなくなったような感じである。麻痺の感じである。麻痺は一部分の死である。死の息がはじめてフランツのうなじに触れたのである。（森鴎外「木精」）

死の息がキースにも触れてしまったのか……。

深夜まで（というか徹夜になってしまったけれど）TVをつけて仕事を続けていたら、新日本プロレスの中継が始まった。オープニングは20年以上ずっと変わらすキースが演奏している曲が流れる。
曲に続いて、やはり先日47歳で亡くなったプロレスラー、ハヤブサの追悼がされた。『このタイミングでか……』と思った。インディーズ団体のレスラーだったけど、ハヤブサは良い選手でした。最初の「スーパーJカップ」、観に行ったもの。ライガーとの試合、凄く良かったもの。

中学に入ったばかりの頃、初めてELPの『展覧会の絵』を聴いた。初めて聴いたロック音楽。それからプログレッシブロックに夢中になった。ELPだけじゃなくて、その前のバンド、NICEのレコードも揃えた。上京して、それまで雑誌広告で見るだけでとにかく行きたかった新宿レコードへ行って、初めて輸入版のレコードも買った。もちろんコンサートも行った。

今年はロック界の大御所が次から次に、何だか、みんないなくなってしまう。
私が10代の頃から好きだった人たちは、みんな鬼籍に入ってしまった。私がもっているロックのジャンルのライブラリーは「クラシック」になった。もう新譜を聴くことがない。

ありがとうキース。そっちでジョン・ロードとゴリゴリのハモンド対決を。いつか聴きに行きます。