あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

再会の約束

2013-05-26 | 本(文庫本)
浅田次郎さんの『マンチュリアン・リポート』を読みました。浅田さんの作品を読むのってもの凄く久しぶりのような気がする…(「気がする」のではなくて、事実なんですけど)。
本作は『蒼穹の昴』『珍妃の井戸』『中原の虹』に続くもの。『中原の虹』で鮮やかに登場した張作霖の死の「真相」を描きます。

ここで「張作霖爆殺事件」についてのおさらい。
昭和3年6月4日。中国・奉天(現在の瀋陽)近郊で関東軍によって暗殺された事件。
国民党軍との戦いに敗れた張作霖が、北京を脱出して本拠地の奉天へ特別列車(かつて西太后が使用したお召列車)で向かう途中(終着駅まで約1km地点)、満鉄との立体交差地点で上方を通る満鉄線の橋脚に仕掛けられた火薬が爆発。特別列車は大破炎上した上に崩落した鉄橋に押しつぶされてしまう。
この事件は当時「満州某重大事件」として真相が明らかにされていない(今日でも解明されていない)が、この事件から「満州事変」「日中戦争」へとつながっていく。

この事件を、本作ではどう料理されたかですが、これが「まさに浅田作品!」と拍手したくなるようなものでした。『中原の虹』よりも、張作霖がらみならこっちの方が好きかも。
タイトルにある通りの「リポート」と、英国産のお召列車のモノローグで構成されている本作。若き陸軍軍人・志津中尉が、関東軍の暴挙に激怒した昭和天皇の密命を受けて「満州某重大事件」の真相を報告するために中国へ送られるところから始まります。現地で彼が会うのは、これまでのシリーズに登場してきた人物たち。彼らから聞き出した「真相」を、昭和天皇への「リポート」としてまとめます。しかし最後の報告書は…。

いろいろ書いちゃうとネタばれしちゃうから止めておきますが、いちばんグッときた部分を記しておきます。お召列車のモノローグ――。

 そうだよ、とうさん。グッド・バイはいい言葉ではない。どんな永訣のときでも、人間は再会を約束しなければいけない。
 駅舎を抜けると、古都の城壁の上には星が溢れた。
 私は低く長く、再見(ツァイチェン)の祈りを込めてホイッスルを鳴らした。


このお召列車のホイッスルは、最期まで泣かせてくれます。
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