あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

ちょっと焦げたポテチ

2016-03-01 | 本(文庫本)
伊坂幸太郎さんの『フィッシュストーリー』を読みました。
年始に読んだ『のこり全部バケーション』で「やっぱイイわ~、伊坂さん」となっていまして、まだ読んでいなかったこの作品を手にしたのでした。読む順番としてはどうかと思いましたが、とりあえず黒澤が出てくるものはすでに読んでいたから大丈夫かな~、と……。
本作は、4つの物語が収められた中篇集です。

『動物園のエンジン』……夜、動物園で眠る永沢。朝になればマンション建設反対運動に参加している。「私」と知人の河原崎、恩田は、永沢の行動から、シンリンオオカミが逃げ出した出来事御や市長が殺害された事件の謎も絡めて推理する。
『サクリファイス』……人捜しのために小暮村へ向かう黒澤。この村では、サイコロで選んだ村人を「生贄」として一定期間洞窟に閉じ込める「こもり様」という風習があった。そこに黒澤は怪しいものを感じ、探りを入れ始める。そして黒澤の洞察力の通りに……。
『フィッシュストーリー』……「いい曲なんだよ。届けよ、誰かに」最後のレコーディングに臨んだ、売れないロックバンドが残した言葉は、時空を超えて世界を救う「ほら話(フィッシュストーリー)」。
『ポテチ』……空き巣の今村と同棲相手の大西は、地元プロ野球チームの選手・尾崎の自宅に入り込む。そこで留守番電話に入った尾崎に助けを求める女性のメッセージを聞き、今村は何故だかその女性を助けようとする。

何といっても『ポテチ』です。人がいいだけでかなり残念な人生を歩んでいるように思える今村だけど、読んでいるうちに、ちょっと焦げたポテトチップスみたいな、チクッと心を刺す苦味がせつない感じとか、ほろりとさせられるような感じとか、たまらず良いです。
今村のお母さんも良い。彼女は絶対に真実に気付いていて、気付いていないふりをしたまま、息子を愛し抜く人生をおくるのでしょう。…と、勝手に想像しました。
「野球を観に行けて良かったね、お母さん!」
それと、相変わらず黒澤が良い! うん、良いぞ、黒澤! 伊坂さんは憎いくらい良い作品中のキャラクターをお持ちだ。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 嬉しい出会い | トップ | 祭り2つ »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

本(文庫本)」カテゴリの最新記事