恩田陸さんの『灰の劇場』を読みました。
ものすごく久しぶりの恩田作品。ってか、この読書記録自体がメチャクチャ久しぶりだということも、反省を含めて記しておきます。
同居していた大学時代の同級生の二人の中年女性が、奥多摩の橋の上から飛び降りて亡くなったという新聞記事を目にした20代のころの作家。彼女たちのことは何も知らないけれど、この事件は作家の心に深く残った。それから数年を経て、作家はこの記事を題材にした作品を書き上げる。
物語の中の作品は、やがて舞台化されるのですが、その様子と自殺した二人のパートが交互に描かれます。作家の話と自殺してしまうMとTの話。現在と過去を行ったり来たりするので若干混乱しますが、なかなか読み応えのある作品だと思いました。
ファンタジーっぽい作風が好きな恩田さんの熱烈ファンからは、何とも微妙な評価がされているらしいのです。さらに言えば、万人受けする作品でもなさそうです。でも私は恩田さんの作品の中ではこれがいちばんのお気に入りかも。恩田さんもキャリアを積んで、こういう作品を書くようになられた、ってことなんだと思うんです。だとしたら、これ以降の作品はwelcomeでございます。
命を絶ってしまう二人については、身につまされるものがなくはありませんでした。独身で将来に安心できるものが見えない中年期以降。これは私だ。
でも彼女たちはお互いの誕生日を祝いあえる同居人同士。それだけでも恵まれていたんじゃないかな。帰宅して「お帰り」の声がないことにすっかり慣れてしまったいる身としては、それは贅沢の範疇です。
しかし結局は彼女たちは死を選んでしまった。そのきっかけとなったであろうことは「日常生活を送っている中で、些細なことから人生に絶望したのではないか」という作家の考察。それに対しては「何があった?」と言わざるを得ないのだけど、贅沢な日常の中にいた人にはそんなものだったのでしょう。多分「おひとりさま」をずっと楽しめている私には分からない。
ただひとつ、感覚的に分かるような気がしたのは、最後に部屋を出るときの会話。「部屋の鍵を開けておくのか閉めておくのか」が妙にリアルで、ちょっとゾクッとしました。
ものすごく久しぶりの恩田作品。ってか、この読書記録自体がメチャクチャ久しぶりだということも、反省を含めて記しておきます。
同居していた大学時代の同級生の二人の中年女性が、奥多摩の橋の上から飛び降りて亡くなったという新聞記事を目にした20代のころの作家。彼女たちのことは何も知らないけれど、この事件は作家の心に深く残った。それから数年を経て、作家はこの記事を題材にした作品を書き上げる。
物語の中の作品は、やがて舞台化されるのですが、その様子と自殺した二人のパートが交互に描かれます。作家の話と自殺してしまうMとTの話。現在と過去を行ったり来たりするので若干混乱しますが、なかなか読み応えのある作品だと思いました。
ファンタジーっぽい作風が好きな恩田さんの熱烈ファンからは、何とも微妙な評価がされているらしいのです。さらに言えば、万人受けする作品でもなさそうです。でも私は恩田さんの作品の中ではこれがいちばんのお気に入りかも。恩田さんもキャリアを積んで、こういう作品を書くようになられた、ってことなんだと思うんです。だとしたら、これ以降の作品はwelcomeでございます。
命を絶ってしまう二人については、身につまされるものがなくはありませんでした。独身で将来に安心できるものが見えない中年期以降。これは私だ。
でも彼女たちはお互いの誕生日を祝いあえる同居人同士。それだけでも恵まれていたんじゃないかな。帰宅して「お帰り」の声がないことにすっかり慣れてしまったいる身としては、それは贅沢の範疇です。
しかし結局は彼女たちは死を選んでしまった。そのきっかけとなったであろうことは「日常生活を送っている中で、些細なことから人生に絶望したのではないか」という作家の考察。それに対しては「何があった?」と言わざるを得ないのだけど、贅沢な日常の中にいた人にはそんなものだったのでしょう。多分「おひとりさま」をずっと楽しめている私には分からない。
ただひとつ、感覚的に分かるような気がしたのは、最後に部屋を出るときの会話。「部屋の鍵を開けておくのか閉めておくのか」が妙にリアルで、ちょっとゾクッとしました。