あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

運が良かっただけ

2017-10-29 | 本(文庫本)
薬丸岳さんの『Aではない君と』を読みました。
また台風です。先週は大規模断捨離を行って台風をやり過ごしましたが、今回はとくにやるべきこともないんですよね。片づけるもの、探そうかな~。

離婚後も順風満帆に仕事をこなしていた吉永が受けた知らせは、元妻が引き取った14歳の息子・翼が死体遺棄容疑で逮捕されたというものだった。しかも翼は弁護士に何も話さないままだという。この瞬間から仕事もプライベートも激変してしまう吉永は、少年法に保護者が弁護士に代わって話を聞くことができる「付添人制度」があることを知る。何とか少年審判までの間に、翼から真相を聞き出そうとする吉永だが……。

薬丸作品は少年犯罪をテーマにして作品を書き続けている作家さんですが、この作品ほど読んでいるのが辛くなるものはなかったです。何もかもが辛いんですよ。だけど読むのを止められない。読者を引き込む力が凄い作品だと思いました。
ラストまで行っても、そこで終わりじゃないんです。先に明確な灯りが見えるわけでもない。でも、ムチャクチャ考えさせられます。

未成年者の殺人事件に関しては、「極刑に処すべきだ」とか「親も子どもの罪を負うべきだ」とか、いろんな意見があります。でもそれは、これまで運よく被害者側にも加害者側にもなっていないから言えることかもしれないな、と本作を読んで感じました。
――もし子どもを持っていて、その子が殺人を犯してしまったら、自分ならどうするだろう?――
しかもこの物語の主人公・吉永は、離婚して息子とは離れて暮らしている。可愛い息子のイメージしかないところに「殺人」とか、もう混乱するしかないでしょう。

重くて辛いテーマですが、決して他人事ではないと思いました。それは「いままで運よく加害者にも被害者にもなっていないだけ」だったから。
読後はしばらく引きずったけど、読んで良かったです。
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