あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

かたゆで卵

2015-11-30 | 本(文庫本)
荻原浩さんの『ハードボイルド・エッグ』を読みました。
本作は萩原さんの初期の作品ですが未読でしたし、何よりここ最近「質の良い笑い」っていうのかしら、ちゃんと幸せに笑っていないような気がして、こういうときに「よし、萩原さんの小説を読もう」となりました。そういう風に読める作家さんがいて良かった……。

少年の頃からフィリップ・マーロウに憧れて、私立探偵になった最上俊平。難解な事件をさらりと解決するカッコいい探偵になるはずだったのに、実際に持ちかけられるのは迷子のペットの捜索がほとんどで、たまに浮気調査。理想と現実のギャップにため息が出るが、そこも「ハードボイルド」風にかわして(ごまかして)いる。ある日、ふと「若い女性秘書を雇おう」と思いついた探偵。応募してきたのはナイスバディの片桐綾だが、実は写真は「嫁」のものという、80過ぎのおばあちゃんだった。このちぐはぐなコンビは、逃げた犬探しを始めたとき、本当の殺人事件に出くわす。

文庫本のカバー裏に「読むときの注意点」として「1・笑いじわに気をつけること」「2・ぽろぽろ泣けるから、人のいるところでは読まないこと」とあったけど、そうでもなかったよ。笑えなくて泣けもしないかというとそうでもなくて、荻原さんの作品らしく、ちゃんと「ククッ」と笑えて、じんわり目頭が熱くなるラストシーンがありました。それが荻原さんの作品らしいの。ちゃんと読んだのかね、編集者。
というクレームはここまでにして、タイトルの「ハードボイルド・エッグ」の意味は、せつない印象をたっぷり残しながらのラストで分かります。登場人物各々の人生の選択とか結末が、イイ感じのハードボイルド加減で描かれます。
萩原さんのほかのユーモア小説とはちょっと違いました。私が最初に期待していたものとは違った。でも裏切られたとはまったく感じませんでした。それよりも期待とは違う期待以上の面白さに、グイグイ読めてしまったのでした。そして「質の良い笑い」、しっかりいただきました。
こういうミステリーっぽい展開も、かなりイケます。
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