あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

おーとーのーさーまー

2015-09-13 | 本(文庫本)
浅田次郎さんの『一路』を読みました。
長年浅田作品のファンで読み続けていますが、本作を読み終えて「お帰りなさい。お待ちしておりました!」と声に出てしまいました。どの作品も好きだけど、義理人情に厚くて泣けて笑えて痛快で、浅田作品はこうでなきゃ、という、そんな読んでいるのが楽しくて楽しくてたまらないものでした。

父親の突然の死によって、ずっと江戸詰めだった19歳の一路は田名部へ初めて帰り、代々参勤交代道中の御伴頭を務めてきた家の跡取りが、父から何も教わることのなく御伴頭を務めることになった。困り果てていた一路だが、家伝の古文書「行軍録」が発見され、それを唯一の頼りに西美濃から江戸までの中山道の道中を導く。

この家康時代の「行軍録」が曲者で、江戸の最初と最後の方の道中の様子が全然違うのです。参勤交代の行列は、道中ではなく「行軍」であると古文書には記されている。それをその通りに行おうとする一路に、最初は戸惑い反発する雰囲気のあった田名部衆でしたが、心を決めて従います。
節句人形のようなキンキラキンの衣装をつけて先頭を行く佐久間勘十郎、槍持ち奴の半次と丁太立を始め、道中筮やイケメンの腕利き髪結いまで加わっての道中は、実に楽しそうなのです。
しかし道中には次から次へと難題が降りかかります。到着が一日でも遅れることは許されない参勤交代なのに、です。そして最大の事件と言えば、お殿様・蒔坂左京大夫の命を狙ったお家乗っ取りの企て。いろんなことがありすぎて、これが御供頭としての「初陣」である一路が気の毒になってしまいます。

魅力的なキャラクターが沢山出てくる本作で、私のいちばんのお気に入りは、お殿様・蒔坂左京大夫でした。彼は陰で「うつけ」と呼ばれているけれど、実は徳を備えた名君です。
名君であるのを隠しているお殿様は、歌舞伎が好きで成田屋がご贔屓で、松の廊下で飛び六方を踏んじゃうような方(これ、絶対に見たい! 松の廊下で飛び六方!)。でも本当は、自分の立場をわきまえて「一所懸命」にお殿様としての責任を果たしているのです。カッコいいです。こういう人が魅力的なの。

本当に面白かったこの上下2巻。あっという間に読めてしまいました。浅田さんも書いていて楽しかっただろうな~、と推察いたします。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 鰯雲 | トップ | 何故か「はじめまして」 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

本(文庫本)」カテゴリの最新記事