あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

日本の8月は…

2010-08-06 | 本(文庫本)
三浦明博さんの『滅びのモノクローム』を読みました。はじめましての作家さんの作品で、第48回江戸川乱歩賞受賞作です。読後「え? 江戸川乱歩賞?」とは思ったものの、テンポが良く、サクサク読み進められました。

読み終わってから知ったのですが、この作品、多くの読書家からはそれほど評価されていないらしいんですね。
たとえば、段落ごとに場面展開がされていて、読んでいると何が書いているのか、作者は何を表現したいのかがわからないとか、戦争犯罪という重いテーマを掲げているのに、掘り下げ方が中途半端だとか、最後は安っぽいアクションドラマになっていたとか、結構なケチョンケチョン具合なんです。
ま、確かに、そんな感じも受けるには受けました。ミステリーとしては物足りないままに終了しちゃったような…。
でも、読み始めはかなり引き込まれました。長崎に原子爆弾が投下される瞬間を、トーマス・グラバーの息子、倉場富三郎の様子から描いています。その後、富三郎は悲しい人生の終わり方をするのですが、この小説の中では、富三郎の話は話の本筋ではないエピソード的なものでしかなかったので、やはり読後「で、何故富三郎の話が冒頭で出てこなきゃいけなかったの?」と思ったくらいでした。

物語の本筋はこんな感じ…。
CM制作をしている日下が骨董市見つけたフライフィッシング用のリール。そのオマケとして貰った柳行李の中に見つけた16ミリフィルムの映像を、日下はCMに使おうとする。一方、リールを売った古いフィルム。コピーライターである日下は、そのフィルムを使ったCM制作を思いつく。フィルムに残された映像から、封印された戦争犯罪が炙り出され、日下は新たな「事件」に巻き込まれる。

日本の8月は「戦争」について考える時期でもあるのですから、こういう戦争犯罪もあったのだということを、小説を読んで知るのも必要なのかもしれませんね。戦争体験をしていない世代として。
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