あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

万能薬ではない

2016-06-25 | 本(文庫本)
宮部みゆきさんの『桜ほうさら』を読みました。
毎度お馴染みの、私の好きな宮部さんの時代物、長編。それに加えて「桜」ですから、好きなものだらけですのよ。

江戸・深川。古橋笙之介は上総国搗根藩・古橋家の次男坊だったが、父が収賄の疑いをかけられて自刃し、兄は蟄居の身となった。笙之介はひとり江戸へ出て、父の汚名をそそぎたいという思いを持ちながら、写本の仕事で生計をたて、深川の富勘長屋で暮らしていた。やがて父の自刃には搗根藩の御家騒動がからんでいると知る笙之介だが、真相を追求したくても、請け負った仕事をこなさなければならない現実があり、加えて次々とミステリアスな事件が起き……。

例えば2時間ドラマなんかで、自分の子どもを守るために罪を犯してしまう親がいて、でも親子関係はうまくいってなくて、っていう設定で、ラストで(例えばそれは崖のシーンだったりするけど)主役の刑事が子どもに向かって「世の中に自分の子を思わない親はいません」って台詞、お決まりのようにありますよね。「親子の絆」「家族の絆」のバーゲン状態。これに同調しないのは人ではないと言わんばかりに。
でも、これって本当なんでしょうか。私は2時間観て、最後にこんな台詞で締められると「私の2時間を返せ~!」ってなるくらい、一気にシラケます。
現実のものとして、ニュースで子どもを「躾」の名目で惨い虐待をしている親とか、日中の車の中に子どもを置き去りでパチンコしている親とか、そういうのはどうなの?
本書を読んでいちばん気になったのはこのことで、笙之介をまったく想わない母親や父を疎み尽した笙之介の兄・勝之介はのことを、私は否定できませんでした。「いや、こういうパターンは本当はいくらでもあるでしょ」って。こっちの方が、ドラマよりもずっとリアル。
そして宮部さんもこう言っています。「家族は万能薬ではありません」

事件にひと通りの決着がついたあと、笙之介のその先の人生は、その時代だからできた方法で落ち着く(落ち着かされる)流れです。確かに笙之介にあんなことがあったら、誰もが笙之介を「守ってあげなきゃ」って思うのかも。落ち着き方は絶対に不幸じゃない。彼にとっては辛いかもしれないけどね。
読後、笙之介の人生がずっと健やかであるように祈るばかりでした。
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2 コメント

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ああ… (ハナキャップ)
2016-07-10 17:57:47
この記事を読んで、激しく同感して、しばらく勝手に昂ぶってました。
ね~~~万能薬ではない、よね~~~
人間、そんなに綺麗じゃないもんね~~~
自分だってぐちゃぐちゃしてるし…
今回のこの本は、いつかは読みたい!と心に刻みました。

さてさて、そちらはいつもにまして暑そうですなあ!
とみさんから珍しく弱気な雰囲気を感じて、ちょいと心配になりました。
こっちは今んとこ「異常に」涼しいです。
最高気温が22℃とか…夏らしくなさ過ぎです。
これから熱波が南から上がってくるのかしら?と思わなくもないけど…どうだろな
それにしてもそのアボガドの、ぜったい美味しいヤツじゃん!間違いなく大好物だわー!
どうか夏バテ被害を最小にとどめて、乗り切ってくださいましね!
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ハナキャップさん (とみ)
2016-07-12 00:16:47
昂っちゃいましたか
まあ、この作品の主題は「そこじゃねぇよ」って、
各方面から突っ込まれそうなんですけど、
でも私は「こっちの方が気になったんだよ!」と返す。
2時間ドラマの例えなんですけどね、
刑事は、半泣き状態の船越英一郎で脳内再生してくださいませ。ホホ

何かご心配おかけしちゃってるみたいで、申し訳ない
ここのところの1週間のスケジュールが、
「平日→仕事、土曜→1日中病院か何かしらの治療院、日曜→抜け殻」
になっている上にこのクソ暑さですから。ちょっとね~。
北海道、涼しそうだなぁ~。いいな~。
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