ライブの興奮が冷め切っていない、だけではない。
Bが自分の枕元に置いていた筆ペンが、僕の神経を過敏に刺激していた。
奴より先に寝てはいけない。寝たら、描かれる。
Bは、夜中何度かベッドから離れた。
トイレやら、水を飲むやら、そういうことだったのだろう。
だが、僕はそのたびに目を覚ました。
か弱い動物の代表格、ウサギ。
常に神経を張りつめているかのように、神経質に辺りを見回している。
隣で熟睡しているかのように見える二人は、僕にとっては獲物を虎視眈々と狙うトラかライオンである。
か弱いウサギは、こうして我が身を護るのだ。
翌朝、8時に起床。
Bは心底悔しそうな顔をしている。
見ないふりをして、出かける準備を済ませる。
むろん、ホテルで朝食なんて食べない。
朝はうどんと決めていたのだ。
地下鉄に乗り、大阪港駅で下車。
時間は9時をちょっと回ったくらい。
今日の目的地は、大阪随一の水族館である海遊館を含む、天保山一帯。
海遊館を見て、うどんを食べ、観覧車に乗る。これが我々のプラン。
だが、水族館もレストランも、10時にならないと開かない。
仕方なく、辺りをぶらつく。
マーメイド像を見つけた。
コペンハーゲンから送られてきたものらしい。
さっそく奴らの目が輝く。
像の前で、同じポーズを取らされる僕。
それをカメラに収める、女二人。
精神的なSMとは、こういうことを言うのだろうか。
いいの、あたいは悲しき踊り子なのさ。
こうして“すんすん”泣いているあいだにも、時計の針は進む。
山の手線ゲームで時間を潰すが、「3人以上の歌手グループ」というお題に対して、ジャニーズとモー娘。絡みしか返してこないのは、どういうわけか。
本人たちの名誉のために言っておく。
この二人、アイドル追っかけというわけではない。
むしろ、同世代としては真面目な性格ですらある。
ただし、真面目な人間がいったん道を踏み外すと、とんでもないことになる。
で、この二人は、今さらとんでもないことに[以下略]
さて、水族館の前に朝食だ。
さもないと、マイワシの群れを見て、よだれを垂らしかねない。
最初に入ったのは、ぶっかけうどんの店。
味は悪くなかったが、なにせ関東風。
女性陣二人は、いたく不満だったようだ。
11時を回り、他のレストランも軒並み営業を始めた。
それを見切ったかのように、3階に上がる。
もう1軒あったうどん屋が、そこにあった。
1時間も空けずに、またうどん。
そんなバカな、と僕は思う。
ところが、このうどんが実に美味しかった。
関西風の薄い色合いのだしに、手打ちのうどん。
相当ふくれているはずの胃袋に、難なく入っていく。
昨日のお好み焼きもそうだったのだが、不思議と胃にもたれる感じがしない。
胃腸に警戒心を持たせないのが、大阪の食文化なのかもしれない。
ともあれ僕らは大満足だった。
店に行く前に立ち寄ったトトロショップで、新しいストラップを見つけたBは、それ以上に満足だったに違いない。
Aは、「なんでやねん!」Tシャツを買うか買うまいか、さんざん悩んでいた。
小学校教師である彼女は、生徒といかにして触れ合うか、常に腐心している。土産物を選ぶ時も、同じ心情のようだ。
そういう心優しき女性二人が合わさると、どうしてああも邪悪なことが[以下略]
さて、海遊館である。
館内は、とにかく超満員。
ヨンジュとベッカムが入っているのかと思うくらい、アクリル製の水槽の前には人だかりができている。
視界の端にちらっと水棲動物を目に収めて、さっさと次に向かう。
しまいには、彼女たちとはぐれてしまった。まぁ、この人混みだ。やむを得まい。
なかば駆け足で、各水槽を眺めていく。
海遊館の売りの一つである巨大水槽には、ジンベイザメを始めとするたくさんの魚&哺乳動物が泳いでいた。
ただ、水槽の底にへばりついて動かない怠け者もいるわけで、こういう輩を見ると何だか安心する。
話はそれるが、イルカという動物は確実に自分のキャラを判っていると思う。つまり、彼らは総じてサービス熱心なのだ。水槽の端から端までを華麗に泳いで、観客たちを楽しませる。
それに対して、ペンギンは実にやる気がない。全員でじっと立ちつくしたまま、あらぬ方向を全員で見つめていたりする。かと思うと、子どもが振り回す色つきの傘に過敏に反応して、いいように振り回されていたりもする。
でもって、僕はそんなペンギンが大好きだ。
出口で二人と合流し、観覧車へと向かう。ちょっと風が強い。
天保山の観覧車は、世界最大“級”とのこと。“級”がいい感じ。
こういう「どうとでも取れる逃げ口上」的なフレーズは、実に日本的で素晴らしい。
観覧車内で、何枚か写真を撮る。今回載せたのも、そのうちの1枚。
プライバシー保護のため、顔は隠させてもらった。
本人たちが美女と言い張っているので、美女の顔を想像して当てはめてみてほしい。
新幹線の時間まで、あまり余裕はないが、それでも我々にはまだ成すべきことがある。
<つづく>
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