PRIDEとK1(Dynamite!)。
格闘技に興味のなくても、その名前を聞いた覚えのあるかたは多いかと思います。
総合格闘技とは「なんでもあり」、打・投・極が許されたケンカみたいなものです。
・打:打撃技(いわゆる“殴る蹴る”)
・投:投げ技(キン肉バスターみたいなやつ)
・極:極め技(関節を曲げちゃいけないほうに曲げてみること)
相当に血なまぐさいことになるわけですな。
どちらを見ようか悩んで、結局PRIDEをビデオに撮りました。
K-1は先輩宅で主な試合を“ちら見”した程度。
で、年が明けてから、ビデオに撮ったPRIDEを見たわけです。
今回のPRIDE、メインイベントは小川直也 vs 吉田秀彦。
共にかつては柔道家としてオリンピックに出場し、メダルを獲った逸材です。
その二人が、総合格闘技のリングで相まみえる。
テレビ的には盛り上がる演出ですね。
僕も楽しみにしていました。
結果は、吉田秀彦のTKO勝ち(レフェリーストップ)。
腕ひしぎ逆十字固めという関節技が完璧に極まったものの、小川はギブアップせず。
危険(=靱帯断裂や骨折といった重傷が生じる)と判断したレフェリーが、試合を止めました。
吉田は強かった。
同じ大学の柔道部で先輩だった男の顔を踏みつけていました。
ルール上は許されている行為であっても、これはなかなかできたものではありません。
勝負に徹した上での“非道”。
「吉田は凄い」と思いました。
この試合自体は、とても素晴らしかった。
ですが・・・試合後に小川がおこなったマイクパフォーマンスに、僕は激しく失望しました。
失望・・・いや、違います。訂正します。
「小川は、もはや総合格闘家ではない」と感じたってことです。
試合中に骨折をしたこと。
吉田へのエール。
自分が主戦場とする“ハッスル”(プロレス…とは違うのかもしれないけれど、ここではプロレスと呼んでおきます)への愛着と観客へのアピール。
それらをきちんと言葉にして伝えたこと。
プロだなぁと思った。
小川はプロレスラーだなぁと。
でも、それは理屈の話。
実際に僕の中に巻き起こった感情は、違和感と不快感。
それだけです。
自分の負けすらイベントに昇華させる。
それはハッスルという世界においては正しいありかたなのかもしれません。
そもそも、試合のオファーが来た時点から、小川はハッスルのレスラーとしてリングに上がろうと思っていたのかもしれない。
小川はきちんと仕事を果たした。
己の本分を貫いた。
きっとそうなのだと思う。
でも、僕は見ていてつらかった。
試合が終わった後。
テレビ画面に映し出されていた二人の表情。
吉田は疲労困憊。顔面を腫らし、息も絶え絶えにロープに寄りかかっていた。
一方の小川は、後輩の肩を借りて立っていたものの、言葉も表情も明瞭。
あのシーンだけを見れば、小川が勝者と思ってもおかしくはない。
でも、吉田はプロの格闘家として勝ったのだ。
初めて胴着を脱ぎ、先輩の顔を踏みつけ、勝利に執着した。
その姿を、僕はかっこいいと思った。
比較。
そう、あくまで比較の問題なのだろう。
吉田は吉田のスタイルを、小川は小川のスタイルを貫いた。
吉田は総合格闘家として勝利を収め、小川はプロレスラーとして自分の敗北を“見せ物”として成立させた。
そして、僕は前者を好ましく思い、後者を疎ましく思った。
これがPRIDEのリングでなければ、また違う感想を持っていたのかもしれない。
ともあれ今の僕は、小川直也というプロレスラーが嫌いだ。
でも、吉田秀彦vs小川直也の試合そのものは名勝負だと思っている。
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