あなたはディズニーランドで植木や植物でできたミッキーマウスを見たことはありますか?
それをトピアリー(topiary)といいます。
私はこれを作るハッピートピアリスト 宮崎雅代です。
トピアリーを見るとみんな笑顔になります。
「笑顔いっぱいの場」をつくることが私の仕事です。
▲ダンボのトピアリー
大阪府大阪市で育ち、今は下北沢(東京都)で家族と暮らしています。
短大を出て就職し、2年後には11歳上の上司と結婚して寿退社。
私はもっともっと働きたかった…。
そんな想いをひきずったままの専業主婦がなぜこの仕事を選び、起業したのか。
話は20年以上前までさかのぼります。
そのころちょうど息子2人が幼稚園に入り、ぼんやり社会復帰を考えはじめていました。でも、子ども達との時間はとても大切なもの。
まずは再就職ではなく「ポプリ講師」の養成講座で学ぶことから始めました。
この講座の宿題のため洋書店に通っていた時に見つけた『THE NEW TOPIARY』という本。
短大の時にホームステイしたアメリカで見かけた植木のミッキーマウスが微笑んでいるのに惹かれ、我が家の本棚に迎えました。
運命を変える本になるとは知る由もなく…。
▲『THE NEW TOPIARY』 Patricia Riley Hammer著
ポプリの勉強を始めたからといって、息子2人の幼稚園、お稽古の送り迎えに走り回る日々は変わらず、だんだん義両親の介護もちらつき始めます。
しかも、手元にあるお金はオットが毎月手渡してくれる生活費のみ。
子どもたちが小学生になったら社会復帰したい!
そう猛烈に思うようになりました。
ところが結婚9年目。
あと半年で次男が小学校に上がるという時に「強制的に社会復帰せざるを得ない状況」が突然やってきました。
オットが職を失ったのです。
驚くというより、呆然としてしまいました。
どんよりした日々。
「何か始めないと」とアルバイトを探しますが、条件があわない。
当時、小学生と幼稚園児を抱える身に通常勤務の社会復帰は絶望的でした。
こうなったら人生やり直しよ!
自分でできる仕事をしよう。
と、肚をくくります。
当時、テレビや雑誌でご活躍のお花の先生方は「独身」か「バツイチ」が相場で、主婦はいない。
「前例がないからやってみよう」
すでに師匠たちのいる世界では太刀打ちできない。
ナンバーワンは難しいけど、オンリーワンにならなれる。
そこでたどりついたのが「アグリクラフト®」。
廃棄されてしまう規格外の農産物を使って
日本の伝統行事を表現するアートです。
これは私のオリジナル。今でもライフワークになっています。
▲お米ギャラリー銀座に展示したアグリグラフトのお正月
ある日クラフトデザインのヒントを探していて本棚にあったあの本『THE NEW TOPIARY』に目が留まります。
ページをめくると、家庭でも作れる小さなトピアリーの作り方がありました。
これなら私にもできるかも!
早速小さなトピアリーの作り方を研究開始。
試行錯誤しながらも作り方はマスターしました。
さて、次はこれ(トピアリーの作り方)を売ろう!
カルチャーセンターの講師はどうだろう?
誰もやっていないことだし、きっと採用してもらえるはず。
意気揚々と営業に向かいます。
ところが、世間はそんなに甘くなかった。
振り返れば、社会人として働いたのはわずか2年。
いい年こいて、何もわかっていない自分。
無力さを思い知らされ、涙することもありました。
しかし、あきらめる訳にはいきません。
ビジネスマナー、企画書の書き方…
社会人としての基礎を独学で学び直し、やっとカルチャーセンターの講師としてトピアリーを教えることになりました。
夜間講座のある日は、息子たちが帰ってくるのを待ち構え
「これがおかずね、火は危ないからレンジでチンしてね。ごはんは時間になったら炊けるから」
と言い聞かせて飛び出します。
やれやれと帰宅して炊飯器をあけると、ごはんはまっ平。
「あれ?ごはんは?」と聞くと「あ、忘れた(爆笑)」。
懐かしい思い出です。
▲テディベアのスタッフドトピアリー
こうして少しずつ「トピアリー」を広め、仲間を増やしていく一方で、
「私の作っているトピアリーって本物なのかしら?」と思うようになったのもこの頃。
本物を知りたい、作りたい。
稼いだお金を手にアメリカ視察に出かけます。
ディズニーワールド(フロリダ)でトピアリーの作り方についてレクチャーを受けたのは大きな収穫。
ダイナミックなトピアリー展示も刺激的です。
また、トピアリーフレーム製作会社を数社訪問し、大量のフレームを仕入れることにも成功しました。
▲巨大なキリントピアリーの展示
▲Noah's Ark Topiaryオーナーと
この経験を基に大手旅行会社とタイアップして「アメリカ東海岸トピアリー視察旅行」を企画。
これがきっかけで2001年には浜松市で国内初のトピアリーイベント「第一回日本トピアリー大賞」が開催され、8年後には同じく浜松で開催された世界的なイベント「モザイカルチャー世界博2009」へとつながりました。
まだまだ日本での知名度は低いトピアリーですが、風穴は開けたと自負しています。
▲「モザイカルチャー世界博2009」
プレイベントでは監修をつとめた
全国に仲間を増やしながら、数々のトピアリーを作る機会に恵まれました。
「愛・地球博」のモリゾー・キッコロのトピアリー
高速道路のSAに設置した鉄腕アトムのトピアリー
「都市緑化よこはまフェア」のガーデンベア立体花壇
テレビ朝日「博士ちゃん」のイベントに巨大トピアリー迷路
…挙げたらきりがないほど、
たくさんの場所で、たくさんの人を笑顔にできたことが本当に幸せです。
▲モリゾー・キッコロのトピアリー
▲鉄腕アトムのトピアリー
▲ガーデンベア立体花壇
▲テレビ朝日「博士ちゃん」のイベントに巨大トピアリー迷路
とはいえ、仕事はすべて順調だった…というわけではありません。
「これってできる?」と聞かれると反射的に「できます!!」と手を挙げてから考えるので、“やらかした”こともしばしば。
在宅介護で思うように身動きが取れず悔しい思いをした時期もあるし、理想を追い求めるあまり、人材育成のチャンスを逃してしまったこともあります。
でも、そんな数々の失敗と経験から大切なことを教えてもらいました。
それは「ご縁は続く」ということ。
途切れたように見えても、全くつながりのないように見えても、必要なご縁は必ずどこかで繋がり、続いていくことを実感しています。
これからは、あなたとご縁をつないで「笑顔をつくる場」を増やしていけたら…。
そう願ってこれからも笑顔を誘うトピアリーを作り続けていきます。