33年前だった。
夜中にトイレに起きる事はまずないタイプの私である。
あの日は偶然なのだろうか?
目が覚めたら台所の窓の外が赤い。
恐る恐る窓を開けて覗いた。
雑木林の中にショベルカーが動いていた。
撤去しているのはお稲荷さんの古い祠。
私にできることはなにもない。また布団に潜り込んで眠った。
子供たちが白い髭のお爺さんが階段にしゃがんでると言ったりしてたけど別に怖い思いはしていない。
その後、雑木林は整地されマンションが建った。
あの雑木林はね、戦前はいっとき死体置き場だったんだよ。
あの神社の裏手は子供が遊んじゃいけない場所だったしね。
あんなに家が建てこんじゃったけど。
お稲荷さんの祠の撤去はきちんとお祓いをする約束を地元の人と交わしていたそうだ。
アパート暮らしだったから私は無関係だったけど。
お祓いをしたとは思えない。
マンションの完成まえに引っ越したのでその後の事は知らない。
でもいまだに、窓の外を染めるあの赤い色は私の記憶に焼き付いて離れない。
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