私が貰い子だってのはずいぶん、小さい頃からわかってたよ。
女ってのはお喋りさ。
「お母さんはよくしてくれるかい?」
「かわいそうにねぇ」
そう言うのさ。
男は黙ってる。
だからって男が偉いってんじゃないよ。
自然界はそんなバランスで成り立ってるのさ。
反抗期になって親子喧嘩をしてると「実の子じゃないからね」って言うのさ。
おまえんとこも大喧嘩してるだろ?実の子なのにさと怒鳴り付けたかったよ。
40の時お袋は亡くなった。
カボチャを煮てるたった10分そこらの間にさっきまで一緒にお茶を飲んでたのにだよ。
近所の年寄りが「後生楽な死にかただよ。幸せだね、良かった良かった」と言ってたのが許せなかった。
ほんとの娘じゃないからさっさと片付きたかったんだろうと言われてる気がしてね。
お袋が重くてしんどくて逃げたいと考えた時もあったさ。
けど実の親子だって家出したりなんだりってあるじゃないか。
私はお袋が好きだったよ。
「血」にばっかり世間様はこだわるけどね。
まあなんだよ。確かに私はお袋の従姉妹の娘だから同じ貰うなら血の繋がりがあるほうがいいって単純なお袋は考えただろうさ。
近所の年寄りの言葉も今は素直に理解できる。
寝込みもしないであっさり逝けるのは幸せかもしれないってね。
けど私はお袋にもっと長生きしてほしかったんだよ。
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