一つのビルに関連会社が集まっている。
社員食堂は一つだ。
パートのおばさんたちは賑やかに噂をばら蒔く。
お気に入り君もいるしキラワレ子ちゃんもいる。
おばさんたちのお気に入り君はキラワレ子ちゃんと恋人同士だった。
みんな、それぞれに大人だからドラマにあるような嫌がらせなんてしない。
お気に入り君はクリスマスにプロポーズをしようと決めていた。
実は去年も一昨年もそう決めていたのだ。
指輪を握りしめて今年こそはと眠れない夜まである。
おばさんたちは今年も失敗すればいいと願っていた。
なぜ?
彼女は悪女系ではない。
ただちょっと暗い。人馴染みしない。
仕事が好き。
一人が好き。でも彼女なりに恋人を愛してる。
おばさんたちの許容範囲を越えていた。
3回目のプロポーズはどうしても結婚は無理だと彼女に断言されて玉砕。
ボロボロにやつれていくお気に入り君をため息混じりに見ながらおばさんたちは「これでいいのよ」と胸を撫で下ろしていた。
やけになったのかお気に入り君は合コンを繰り返して結婚した。
保育士の彼女は明るくてデートをしていても楽しいらしい。
「一流企業のエリートだもんね。絶対に逃がさないって執念だよ。
けどさ、そのくらいの女の方があの子には合ってるよ」
意地の悪い言葉と先を読む優しさ。
社員食堂にも小さな歴史が積み上がって行く。
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