岩手にね、よく見りゃ悪くもない顔だちだけどちょっと頭が弱い女がいてね。
その女が村の荒くれものとくっついちゃったのさ。
男は騒ぎを起こしちゃ刑務所行きでね。
出でくると子供を拵えてまた刑務所さ。
女はね、働くってことを知らなかった。
戦後のどさくさだし福祉なんてありゃしないよ。
増えてく子供を連れて赤ん坊を抱いて食べ物を恵んでもらいながら生きてた。
東京じゃ出来なかったかもしれないね。
ある時、冬なんだけどね。
荒くれ者の亭主が出所してきたら女房は子供を抱えて鶏小屋で震えてたのさ。
亭主はね、その姿をみて改心したんだよ。この女は俺がどうにかしなきゃダメなんだ。
鶏程度の頭しかないんだってね。
日本の復興期だからね日雇い仕事はあったさ。
銀座のホステスはさ、みんな自分が頑張っまうんだよ。
家族を支えなきゃ、私がどうにかしなきゃってね。
まあ、雪の鶏小屋で震えてるなんて私にはできない。
でもね、思うんだよ。なんにもできない方が得かななんてね。
守るより守られる方がいいなって。
叔母の思い出話を私も時々、思い出している。
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