写真1 来院時の様子
ラジコンの仕様
防水防塵仕様で水たまり走行可能。汚れたら水かけ洗いもできる。全長約27cm、ビックタイヤ装着&サスペンション搭載で安定走行。
スピード約10キロ。登坂力32度。発色がよく軽量で壊れにくいPVCボデイ。
(WEB販売ページのうたい文句)
申告内容
前輪の方向変換はできるが、後輪が回らない。
配線が切れているようだ。
初診
触診、外観で複数の疾患があります。
写真2-1 モータ配線の切れ 写真2-2 ルーフ破損 写真2-3 リア破損
写真2-4 アンテナ垂れ下がり
写真2-5 シャーシ、ボディ連結箇所破損 写真2-6 左前部拡大 写真2-7 左後部拡大
左側に破損箇所が集まっているので、大きな衝撃が左側に有ったものと考えられます。
写真2-8 モータへの配線切れ箇所
モータへの配線切れは、水のモータボックスへの進入を防ぐための接着剤の根元で起きています。
凹凸面での走行で配線も振られ、一方接着剤で固定されているのでこの箇所にストレスがかかり断線になりやすいのでしょう。
接着剤は、エポキシ系のものらしく固く治療はしづらいです。
治療
①モータ配線の治療
写真3-1 モータボックス内部 写真3-2 モータ外観 写真3-3 モータ内部
写真3-4 モータ配線接続
モータ配線をつなぐためにモータボックスを開けて、清掃も実施しました。
勘合部には、ラバーが使われており、これにより防塵、防水効果を出しています。
モータ単体で回転を確認すると全く回転せず、指で回しても回転できませんでした。そこでモータを分解してみました。
コミュテータとブラシには特段の汚れなどはありませんでしたが、清掃し接点グリスを塗布しました。
そして、ロータの回転が重いので軸受部に注油して回転することが確認できました。
断線して、しばらく放置されていたために固着したのかもわかりません。
②シャーシ、ボディ連結箇所の治療
写真4-1 凸部の折れ 写真4-2 正常箇所から型とり 写真4-3 破損箇所に型から修正
写真4-4 バリ取り穴あけ
治療は、コストは掛かりますが樹脂造形材の”プラリペア”を使用して、正常な箇所で型取りしてプラリペアで造形治療します。
硬化した後、バリ取りや穴あけをしました。(写真4-4)
同様に前部の治療しました。
③ボディの治療
写真5-1 PETに着色 写真5-2 ガラスクロスを重ねる 写真5-3 プラリペアで硬化
写真5-4 ルーフ治療後 写真5-5 ルーフ治療拡大
ルーフの破損穴は、内側から着色したPETにガラスクロスを重ね、プラリペアで硬化させています。
写真6-1 後部破損箇所 写真6-2 パテ整形 写真6-3 着色仕上げ
後部の破損箇所は、ルーフと同じように内側よりPETを貼り付け、ボディのPVC材の厚み分の窪みをポリエステルパテで埋め整形しました。
その後、アクリル絵の具で着色しUVコートで仕上げました。色とツヤは、同一にする腕前はないので少々異なりますが・・・。
④アンテナの垂れ下がりの治療
写真7-1 アンテナの垂れ下がり 写真7-2 メーカーの紹介写真
購入時には、アンテナにはパイプ状のもので囲まれていますが、パイプ状のものを紛失したのかありません。
透明チューブにアンテナを通しましたが柔らかいため、ピアノ線を一緒に通して立たせました。
治療が終了しました。本来は、ボディとシャーシを留めるスナップピンが4個必要なのですが、破損していた2箇所には付いていませんでしたので、キーリングで代用しました。
写真8-1 キーリングで固定 写真8-2 治療後全景
治療後記
WEBページを見ると”防水防塵仕様で水たまり走行可能。汚れたら水かけ洗いもできる。”と記載されています。
梱包箱を見ると ”生活防水JIS保護等級4級” と記載されています。では、この意味はと調べると ”水の飛まつに対して保護されている。” で種類は ”防まつ型” とJIS C 0920では定義されています。
何か、防水防塵仕様と言われると水に浸かっても使用でき、汚れたら水かけ洗いもできると言われると丸洗いできると思わせる表現ですが、厳密には”水は飛沫”までです。
遊ぶときには、気をつけましょう。