3匹の子豚との日々 =DIAS CON MIS TRES CERDITOS=

スペインSpainのサラマンカSalamancaのラ・アルベルカLa Albercaから不定期につづります。

ムルムーロ・デ・トロ4(トロのつぶやき4)

2010-09-11 05:26:19 | Opinion de Toro
丑年生まれのトロです。

<コンピューターの威力?>

私は国内物流課も担当していたと「トロのつぶやき2」で書きましたが、呼び名は格好良いのですが、社員達が「吹溜りの課」と蔑んで呼んでいました。
私が担当になり、挨拶に行った幹部連中から「何!!吹溜りを担当したのか」と異口同音「頑張れよ」と励ましの言葉を貰いました。
赴任して、輸入課と輸出課の社員達と毎日ミーティングをして、問題点を洗い出して、効率の良い仕事をして、頑張ろうと言う事で、書類の送付や、通関書類の管理など、今まで気付かなかった点を改善していきました。

後で知ったのですが、会社は社員達に改善を奨励して、その改善策が会社に認められれば、表彰され、勤務評定も良くなるとかで、赴任した当時、掲示板に張ってある「Kaizen」という言葉が、何なのかは知らなかったので、あの時に、改善した事が沢山あったので、改善レポートをいくつか会社に提出していたら、金一封でもあったのではと後悔しました。

話がすぐにそれますね、元に戻します。
輸入課と輸出課には毎日張り付いて監視する必要も無いので、問題を抱えていた国内物流の方の建て直しをしないと効率よく車が出荷できません。
当時はまだ携帯なるものが普及していなかったので、担当した課との連絡は内線で取り合いました。
赴任した当時は、午前中は輸出入課で過ごし、午後から夜の9時頃まで、物流課で、業務内容の改善とパーキング場の効率化を図る為、汗をかきました。

「吹溜りの課」の社員は、22人が働き、班長が2人いて私をサポートしてくれました。
どうして「吹溜り」と呼ばれているか、2人の班長に聞いてみたところ、その答えは、別の課で問題を起こして追い出され、札付きになった社員と持病を持った病気持ち社員だけがいる所だから、この課に配属されたら最後、この課から別の課に移動はないし、退職の日を待つのみと話してくれました。

私に社員の勤務評定や名簿など人事部から書類が来た訳ではなく、社員達の事は何も解らなかったので、人事部で札付きになった社員の話と、会社医務室に勤務の医者から、社員達の健康状態、持病は何かと、聞きに行きました。

人事部では、札付きの社員の話を聞いてみると、喧嘩をしたとか、上司に口答えをしたとか、人事部部長が真剣な顔で言うので、もっと悪い事をしてブラックリストに載ったのかと想像していたけれど、他愛無い話で、聞いていて笑いを堪えるのに苦労をしました。
医者は暇だったのと、私みたいな人間が初めて行ったので、気を良くして、あの社員は結構持病が重くなってきているから注意しろとか、あの社員は、持病があることを利用して、よく仮病を使って会社を休むから気を付けろとアドバイスを頂きました。
こんな事が縁で、医者とは仲良くなり、今までは仮病でも何でも、医者はサインすると、会社を休めたのですが、私の部下は、今度からそう簡単に仮病が使えないよう、サジ加減をお願いしますと頼みました。

後日談ですが、人事部部長と医者が、トロと言う奴は、我々の所に、自分が担当する社員の事を詳しく聞きに来た、今まで、社員の問題を聞きに来た責任者は、誰もいなかった、と聞いてびっくりしました。

札付き社員と持病持ち社員の仕事はどれだけできるか試してみたかったので、コンピューターのデーターリストを使って、パーキングエリアから3台のシャーシー番号を抜き取り、この3台の車を探して欲しいと彼らに頼みました。
班長はコンピューターから、3台の車は何番目の通路で、駐車エリア番号を紙に書いて数人の社員たちに渡したので、すぐに3台運転して乗って来ると思っていました。
しかし、30分経ち、1時間経ち、忍耐もこれまで、班長に3台の車を探すのに、いつもこんなに時間がかかるのか、と聞きました。
班長は焦り出し、今度は全員に3台の車を探させる指示を与え、班長もパーキングエリアにすっ飛んでいきったのですが、2時間かかってもまだ出てこない、3時間してやっと3台が揃ったので、シャーシー番号を照合しました。

どうしてこんなに時間がかかるのか、コンピューターがあっても、全てデーター記入が出来ないのか、それとも間違ってデーターを記入しているのか、プリンターから出てくる印刷データーを見て、各項目ごと聞いていきました。

パーキング入出駐車管理システムは、どこでもやっているシステムに似た、縦線一本ずつ線引きして、その縦線コースを中心線に左右一台ずつ駐車スペースを置いて、その縦線コースの駐車スペースを平行に何本もパーキングエリアに白線で書いて並べ、その縦線コースはアルファベットで分類し、そのコースの長さに沿って下から上まで左右に車一台分のスペースごとに数字番号を書きます。
会社のパーキングは、縦線コースをアルファベットで分類したまでは良かったのですが、そのコースに沿って上から下へ、車一台分のスペースごと、左右に数字を入れて分類する段で、右は奇数、左は偶数と別けて書くところを、左右同じ番号に書いてしまった事で、社員たちは、事務所に戻って、駐車位置データーを入力する訳ですが、左右同じ駐車位置番号で、車2台のシャーシ番号は一台ずつ違いますことから、入力すれば混乱を招く元凶データーでしかなかったのです。その上、途中で場所を移動したのにデーターを変更していないことがあったり、と改善すべき点がたくさんありました。

どこのパーキングエリアも全てアルファベットと数字を使って分類整理されていますが、この会社のパーキングエリアは車を駐車してもトレースが出来ない凄い混乱パーキングでした。

社員たちに「誰が、一つのコースに、左右同じ番号を書いたのか」、と聞いた所、「前の責任者が書いたのでそのままやってきた」と言ったので「いつもこんなに時間がかかって、無駄な時間だとは思わなかったのか」と聞きました。
みんなこの作業方法が当たり前だと思ってやっていたので、私が聞いた事は彼らにとっては愚問だったようです。
私は、社員に「同じ道に同じ番号の家が2つあったら、君らはどうする?」「郵便配達はいつも間違って手紙を配達するのでは?」と質問しましたら、その中の一人が「そんな事はありえない、だって全ての道は左側は偶数で右側は奇数で書かれているから、郵便配達は間違えはしない」と言ってきたので「君は、町の道路は偶数奇数で別けられていることを知っていながら、どうしてパーキングの縦線コースの左右を、偶数奇数に別けて表示する事を提案しなかったのか?」「君だけではなく、ここにいる全員が町の道路は右左偶数奇数で整備されている事を知っているはずだ」「にもかかわらず、仕事であるパーキング場の駐車システムには、誰も疑問に思わず、車が見つからないからと、総動員で血相変えて一台の車を全員で探す、こんな事を毎日していて疲れないのか?」と聞きましたが、今まで彼らは仕事と町の道路番号表示システムを、一致して考える事が出来なかったようです。
私から道路標示の奇数偶数の話を聞いて、彼らは納得したのか、再度コンピューターに新しいデーターの入力を試みましたが、元がグチャグチャになっているので、手の付けようがありませんでした。

パーキングエリアを視察して、隅々歩いて見た感想は、小手先で解決できる問題ではなく、パーキングエリアを作り直して、根本から出直さないと、全てをデーター化できないと思いましたので、上司にパーキングの問題点を報告書にまとめて書きました。
上司から、連絡があり「パーキングエリア整備費の見積書をすぐ業者に作ってもらえ、稟議書も一緒に添付して、すぐ動け!!」と言われて、提出して一ヶ月以内でで稟議書に社長始め全ての関係役員のサインをもらったのは、私が一番速かったそうで、会社では稟議書に一番速くサインさせたレコードの保持者でもあります。
会社は1ヶ月間夏休みで休みますから、生産ラインが止まりますので、どうしてもその休み期間中に、整備されたパーキングエリアを完成させたかったし、夏休み中は車の生産がないため、パーキングを邪魔する車は一台も入ってこないので、フルに仕事が出来ますから、どうしても休み前に稟議書通し、サインをもらい、工事着工に持っていきたかったのです。
みんなから、簡単にサインをもらえないと言っていた稟議書が、夏休みに入る1週間前にサインをもらったので、見積書をもらった会社に連絡を入れて、夏休みが始まったその日から、工事を始めてもらいました。
アスファルトを敷いてその上にコース表示の白線とアルファベットの字と数字を奇数偶数と書いて、夏休みが終わる頃に、新しく整備されたパーキングエリアがなんとか出来上がりました。

夏休みが終り、生産ラインが動き出し、パーキングには毎日車が入り、午後には国内出荷、輸出用出荷、とレッカー車が毎日来て、その車に乗せるため、社員たちは積み込みエリアに、車を四列に並べて、積み込みが簡単に出来るように段取り付けて働いていました。
パーキングも前みたいに、一台の車を探すのに、総動員で血相を変えて、無駄な時間を費やす事も無くなり、今度は20人もの人員は必要なくなったので、人事部部長と話をして、10人は前にいたセクションにお願いして戻してもらいました。
パーキングも人員的には身軽になったけれど、午後のレッカー車に積み込むための車出庫準備は、人海戦術でないと時間的に苦しいのに、人員を減らしてしまったので、会社に出入りする運送会社の詰め所から、手伝いの人を出してもらい、何とか間に合わせる事が出来ました。

パーキングの部署では、私は「首切りトロ」と呼ばれ、「あいつが来なければ、前のセクションに戻らなかったのに」と、パーキングを整備して、ついでに人員整理もしてしまったので、今度は部下から恨みを買ってしまいました。

パーキングから入力されたデーターは前より正確になったのですが、パーキングに毎日コンピューターセンターから届く在庫データーが実際の数と合わないし、シャーシー番号は有りますが、車が実在しない幽霊車、車が有ってもデーターリストにシャーシー番号が載っていない、行き先不明車など、二人の班長に聞いても分かりませんでした。
行き先不明車のシャーシー番号で、生産年月が分かるので、過去のデーターをひっくり返して調べてみたら、その車はインボイスが既に発行されていて、ポルトガルに売られていたのですが、積み残しで出荷されないまま放置されていた車だと判明しました。
インボイスが発行されれば、在庫車データーからは消えてしまいますが、混乱していたパーキングで積み残された車は、数年間放置されていました。
車を買った搬入先のポルトガルの販売店から「車が届いていないから、探せ、車は何処にある」と言うような、クレームがあれば、すぐに発覚し、探して送ったのでしょうが、クレームを言う訳でもなく、数年間も放置するポルトガルの販売店もおおらかだと思いました。

行き先不明車の売り先を突き止めましたが、幽霊車は何処に行ったのか皆目見当が付かなかったので、幽霊車のシャーシー番号を書いた回覧版を、営業部の各部署に回して、特にマーケティングの連中は、パーキングから車を勝手に持ち出したり、やりたい放題していたそうなので、その部署が怪しいと思い、突っついたら、真っ黒に汚れたままの状態で、探していた幽霊車が、突然パーキングに戻って来たので、誰が持ってきたのか社員たちに聞きましたが、誰も見てないそうで、幽霊は夜歩き回るので、夜に誰かが持ってきたのではないかという話で一件落着となりました。
パーキングの問題はある程度片付きましたが、今度はコンピュータールームから毎日パーキングに届く、厚さ3cm以上あるデーターと、営業に届く分厚いデーター、と生産ラインでの生産プログラムデーター、毎朝、三つのデーターを重ねると、20cm近くのデーターにさんざん悩まされました。
各データーファイルの最後のページを見て、車の生産台数、外国行き、国内行き、車種、パーキングの在庫、出荷台数など、それぞれのデーターを見て、電卓計算機で計算するのですが、外国行き台数、国内向け台数、在庫数が一致しないのです。
計算しても数字が合わないので、頭に来て、コンピュータールームの責任者にデーターを見せて、数字が合わないデーターを出しても意味がないと文句を言うと「これをプログラムをした奴が悪いのだ、その上入力する奴が入力ミスするから数字が合わない」と言いたい事ばかり言って、言い訳たらたら、結局コンピュータールームの責任者と話しても、結論出ず、挙句の果てに「三冊のデーターから数字を拾って計算するしかない」と言われてしまいました。

コンピュータルームの責任者に言われてしまったので、しょうがないから、三冊データーから、生産、入庫、在庫、出荷、車種、輸出車及び国別、などの数字を拾って、一目で分かるように、一枚の紙にデーターが収まるようにワープロの一太郎で入出在庫表を作成しました。
ミーティングに参加する時には、それを持参して、みんなの話を聞いていましたが、ミーティングでも数字が一致しないので、どうも話がかみ合わないため、なかなかミーティングが終わりませんでした。
痺れを切らして、私の持てきたデーターでは、こうなると、みんなに私が作ったデーターを見せると、みんながこのデーターは信憑性があると思ったのか、メンバーの一人がコピーしてみんなに配布して、数字が合えば会議を続ける理由が無い、とすぐに会議は終わってしまいました。

赴任した頃は、「えぇ、本当かよ?!」「こんな仕事でよくやってるよなぁ」「とんでもない会社に来た」と驚かされる事ばかりで、毎日刺激的でした。

それから、会議で見せた私のデーターが社長の所にまで行ってしまい、社長命令で、毎朝10時までに表を作成して、持っていく羽目になってしまいました。
恐ろしい事になったと後悔しましたが、社長には逆らえないから、しょうがない、やるしかないと思って、データーを作って毎日持っていきました。

余計な仕事ばかり増え、自分の仕事がいつも後回しで、大変でした。

とてつもない金額を投資したコンピュータルームは、いろいろなデーターを出してくれますが、帯びに短し襷に長しで、何の為のコンピューターなのか、仕事を楽にしてくれる道具だと思ったら、余計な仕事を増やしてくれる道具でもあります。
どこかの国の年金データー入力ミスで、そのミスを修正する為に、莫大な金を使って解決しようとしているが、中途半端で終わっているのとよく似ています。

トロ拝

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2 コメント

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職人気質 (サムライ)
2010-09-13 06:26:00
トロさん、貴重な体験談を有り難うございました。小生も30代の頃に半導体洗浄装置のベンチャーメーカーに勤めていた時、シンガポールの某半導体製造会社に納入した数千万円台の洗浄装置が作動せず、急ぎ社長と一緒に現地に入ったものの、社長は二日ほど滞在しただけで帰国、取り残された小生は大手半導体会社を相手に、地獄の3週間を過ごしたことがあります。その間、日本から下請けのプログラマーを呼んでプログラムのバグ壊滅を試みたり、連夜日本に戻った社長と打ち合わせを国際電話で行ったり、相手のシンガポール人と連日交渉をしたりと、どうにか問題が解決して帰国する頃には、体重が5kgほど減っていたような記憶があります。小生が勤めていたのは従業員が20名前後の小さな会社でしたから、相手の大手半導体会社からペナルティを喰らうと、会社が倒産しかねないだけに必死でした。しかし、今となっては懐かしい想い出です。

小生は翻訳という仕事を生業にしている職人ですが、これからの世の中は技術を身に付けること、職人の道が食っていける道の一つではないかと思います。今朝、たまたま目にした某大工さんの対談は、いかにも日本の職人此処に在りという、読みながら嬉しくなった記事でした。
http://promotion.yahoo.co.jp/charger/200910/contents01/vol35.php


サムライ拝
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Unknown (トロ)
2010-09-14 06:46:51
サムライさん
嬉しいですね、外国人とお仕事をされている人と、お話ができるなんて!!!。

諸習慣が違う中で、意思の疎通を図るのは、忍耐が要りますよね。

私はコンピューターの事はよく解りませんが、ディリーのインフォーメイション・データーには、数字が羅列して、何が何だか解らず、聞いて数字を拾って、電卓で計算して、在庫数を出したので、
バラバラのデーターから一つに纏めるのですから、大変でした。

頭がいい人達が、このデーター、あのデーターと、これもあれもとプログラミングして、こんがらがって収拾が付かなくなったら、おらは知らねといの一番に逃げたのです。

数字が出るだけマシと言う事で、皆さん我慢して電卓で計算をしていたようです。
私は我慢できなかったので、こんなデーターではコンピューターなんか必要ないと、文句を言いに行き、「これは再度プログラミングをするしかないのかな」と思いましたが、口を出して、泥沼に嵌るのは怖かったので、首を突っ込むのを止めました。
整理されたデーターが出れば、毎日ワープロの一太郎で、在庫表を作る必要がないと、腹が立って、ストレスが溜まりました。

某大工さんの対談有難うございました。
カンナの刃の研ぎ方、ノミの研ぎ方、今の大工さんはどうなんでしょうね。
大工さんがカンナをかけると、シュルシュルと心地いよい音が聞こえ、カンナ屑は薄い綺麗な紙のように、カンナから次から次と出てくるのを子供の頃、目を丸くして見ていました。
今は大部分が電動になってしまい、このような時代ですから、匠の技を若い人たちは継承して残して欲しいですね。

トロ拝
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