武漢コロナウイルス感染症(WARS)の流行の勢いが少し弱まり、話題は伯仲する数名が競い合う自民党総裁選挙に移った。この選挙は自民党内の選挙であり、敗れても議員の身分には変わりなく、それなりの要職になれる。但し、選挙人は自民党員なので公約は厳しく評価される。そこで、本音の政策論争が期待できるだろう。岸田文雄氏(64歳)、河野太郎氏(58歳)、高市早苗氏(60歳)の3名の違いをみてみたい。
注目度の高い経済対策では、令和版所得倍増(岸田)、労働分配率の是正による所得増(河野)、基礎的財政収支黒字化目標の凍結(高市)などが特徴である。外交政策では、経済安全保障の推進(岸田)、サイバー対策などの防衛力強化(河野)、敵基地攻撃能力装備(高市)が目立つ。内政では、憲法改定前向き・女系天皇反対・原発慎重推進(岸田、高市)に対し、前2者は曖昧・原発反対(河野)である。
WARSに関連しては、医療体制強化、経済支援、ワクチン推進などは、その妥当性に議論の余地がなく、また立案には医学的な専門性も要求されるからか、あまり論点になっていない。それでも、弱者を見据えた経済支援の強化(岸田)、都市封鎖の法制整備(河野、高市)、製薬開発体制の強化(高市)などの違いがある。健康行政全般では、厚生労働省の解体論(河野)が目を引くが、これはさすがに無謀ではなかろうか。
総じて、岸田氏は中道、河野氏は左寄り、高市氏は右寄りだが、大同小異である。岸田氏は政治家家系の出身で、慎重な姿勢が定評らしい。河野氏も政治家家系で毛並が良いが、父洋平氏の慰安婦謝罪発言を継承するなど、耳を疑う発言もある。高市氏は、政治家とは無縁の出自で、対中・対韓への強硬論を含め発言が率直すぎる。中庸・年齢などの安定感からは岸田氏が本命だろうか。誰が選ばれても政策論争を通してよりよい保守政治を願いたい。
日本の首相の在任期間が短いとの批判もあるが、これは民主制度が機能している証左でもある。天皇という権威・規範が、権力変動の割に社会を安定させているように見える。